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何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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ちなみに胡瓜のそぼろ炒めはこちらで発見しました。
生食が多いのに珍しい、と思って。

あと胡瓜が食べたかったんだこの時。

黒くて赤いです。
嫌いな人は回れ右。


 その闇に、一瞬ちらりと胸を過ぎったものがある。
 けれどそんなものはすぐに消えた。
 荒れ狂うほどの力の波と、絶望的なまでの感情に飲み込まれて。

 苦しい、と思った。
 飲み込まれたくなくてずっと耐えてた。
 なのにそんな努力をあざ笑うかのように、胸中は塗りつぶされた。

 黒く、暗い虚無の闇に。

 その心情を表すように、周囲を闇が包んでも、彼は止まらなかった。
 止まれなかった。

「――アルファル!」

 目の前の彼が悲痛な声で叫ぶ。
 ざわりと憎悪が揺らぐ。
 衝動に突き動かされるまま足を踏み出して、

 ふと、止まった。

 視線の先には、闇の中にありながらうっすらとそれ自体光を放つような、桜の花弁があった。
 瞬間、フラッシュバックのようにいくつもの情景が過ぎた。
 虚無の闇を吹き飛ばすほどの圧倒的なその量の奥で、見慣れていた、人の姿を見た気がした。


----



 愕然と立ち止まった彼が、何かを呟いた。

 それは誰かの名前のようだったが、彼のいる場所は少し遠くて、それは聞き取れなかった。

 言葉が、頭の中で繰り返される。
  自分を諌める言葉だ。

 復讐など虚しいだけだと。

 使い古された言葉で。
 経験したものにしか持ち得ない重みを持って。
 ゆっくりと、目を閉じる。

 思い出されるのはいつもの光景。
 赤に染まる視界。
 動かないモノ達。
 昨日まで笑っていた者を、情け容赦なく、それこそ笑いながら奪った者。

 どうして許せよう?

「……今更だ」
 吐息が漏れる。
 復讐を心に決めてどれだけの年月が経ったのか、もはや覚えていない。
 胸の内を激しく噛む憎悪に、感情が擦り切れていく。
「ルベア、早く行こう」
 視線の先で、オルカーンが心配そうにこちらを見ながら尻尾をぱたりと振った。
「……今行く」

 それで良いの?

 そう問う声をあえて振り切るように、ルベアはその場から離れた。

 これが夢なら良かった。
 そうすれば、目が覚めるんだって思う事ができたのに。

 そう思うのは何度目だろう。
 徐々に無くなっていく体温を感じながら、彼は硬く目を閉じて俯く。
 握り締めた手のひらはもうすでに硬くなりはじめ、まるで人形のようだった。

 朝には笑ってた。
 一緒に町に行こうと約束をした。
 それが果たされないと、知っていたけれど。
 それでも、一緒に行きたかった。

「ごめん」
 絞り出すような声で、彼が囁く。
 硬く閉じた目は乾いて、涙のひとつも出てこない。

 泣きたい、のに。

「ごめんね」
 彼は繰り返す。
 目の前で握り締めた手の先には、もはや彼の知る面影どころか、まともな人の形すら残されていない。

 惨劇が、回避できたなら。
 こんな力を持っていなかったら。
 制約など無かったら。
 荒地となった草原で、ルシェイドは手を握り締めたまま、嘆き続けた。

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プロフィール
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沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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