何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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その闇に、一瞬ちらりと胸を過ぎったものがある。
けれどそんなものはすぐに消えた。
荒れ狂うほどの力の波と、絶望的なまでの感情に飲み込まれて。
苦しい、と思った。
飲み込まれたくなくてずっと耐えてた。
なのにそんな努力をあざ笑うかのように、胸中は塗りつぶされた。
黒く、暗い虚無の闇に。
その心情を表すように、周囲を闇が包んでも、彼は止まらなかった。
止まれなかった。
「――アルファル!」
目の前の彼が悲痛な声で叫ぶ。
ざわりと憎悪が揺らぐ。
衝動に突き動かされるまま足を踏み出して、
ふと、止まった。
視線の先には、闇の中にありながらうっすらとそれ自体光を放つような、桜の花弁があった。
瞬間、フラッシュバックのようにいくつもの情景が過ぎた。
虚無の闇を吹き飛ばすほどの圧倒的なその量の奥で、見慣れていた、人の姿を見た気がした。
----
愕然と立ち止まった彼が、何かを呟いた。
それは誰かの名前のようだったが、彼のいる場所は少し遠くて、それは聞き取れなかった。
けれどそんなものはすぐに消えた。
荒れ狂うほどの力の波と、絶望的なまでの感情に飲み込まれて。
苦しい、と思った。
飲み込まれたくなくてずっと耐えてた。
なのにそんな努力をあざ笑うかのように、胸中は塗りつぶされた。
黒く、暗い虚無の闇に。
その心情を表すように、周囲を闇が包んでも、彼は止まらなかった。
止まれなかった。
「――アルファル!」
目の前の彼が悲痛な声で叫ぶ。
ざわりと憎悪が揺らぐ。
衝動に突き動かされるまま足を踏み出して、
ふと、止まった。
視線の先には、闇の中にありながらうっすらとそれ自体光を放つような、桜の花弁があった。
瞬間、フラッシュバックのようにいくつもの情景が過ぎた。
虚無の闇を吹き飛ばすほどの圧倒的なその量の奥で、見慣れていた、人の姿を見た気がした。
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愕然と立ち止まった彼が、何かを呟いた。
それは誰かの名前のようだったが、彼のいる場所は少し遠くて、それは聞き取れなかった。
言葉が、頭の中で繰り返される。
自分を諌める言葉だ。
復讐など虚しいだけだと。
使い古された言葉で。
経験したものにしか持ち得ない重みを持って。
ゆっくりと、目を閉じる。
思い出されるのはいつもの光景。
赤に染まる視界。
動かないモノ達。
昨日まで笑っていた者を、情け容赦なく、それこそ笑いながら奪った者。
どうして許せよう?
「……今更だ」
吐息が漏れる。
復讐を心に決めてどれだけの年月が経ったのか、もはや覚えていない。
胸の内を激しく噛む憎悪に、感情が擦り切れていく。
「ルベア、早く行こう」
視線の先で、オルカーンが心配そうにこちらを見ながら尻尾をぱたりと振った。
「……今行く」
それで良いの?
そう問う声をあえて振り切るように、ルベアはその場から離れた。
自分を諌める言葉だ。
復讐など虚しいだけだと。
使い古された言葉で。
経験したものにしか持ち得ない重みを持って。
ゆっくりと、目を閉じる。
思い出されるのはいつもの光景。
赤に染まる視界。
動かないモノ達。
昨日まで笑っていた者を、情け容赦なく、それこそ笑いながら奪った者。
どうして許せよう?
「……今更だ」
吐息が漏れる。
復讐を心に決めてどれだけの年月が経ったのか、もはや覚えていない。
胸の内を激しく噛む憎悪に、感情が擦り切れていく。
「ルベア、早く行こう」
視線の先で、オルカーンが心配そうにこちらを見ながら尻尾をぱたりと振った。
「……今行く」
それで良いの?
そう問う声をあえて振り切るように、ルベアはその場から離れた。
これが夢なら良かった。
そうすれば、目が覚めるんだって思う事ができたのに。
そう思うのは何度目だろう。
徐々に無くなっていく体温を感じながら、彼は硬く目を閉じて俯く。
握り締めた手のひらはもうすでに硬くなりはじめ、まるで人形のようだった。
朝には笑ってた。
一緒に町に行こうと約束をした。
それが果たされないと、知っていたけれど。
それでも、一緒に行きたかった。
「ごめん」
絞り出すような声で、彼が囁く。
硬く閉じた目は乾いて、涙のひとつも出てこない。
泣きたい、のに。
「ごめんね」
彼は繰り返す。
目の前で握り締めた手の先には、もはや彼の知る面影どころか、まともな人の形すら残されていない。
惨劇が、回避できたなら。
こんな力を持っていなかったら。
制約など無かったら。
荒地となった草原で、ルシェイドは手を握り締めたまま、嘆き続けた。
そうすれば、目が覚めるんだって思う事ができたのに。
そう思うのは何度目だろう。
徐々に無くなっていく体温を感じながら、彼は硬く目を閉じて俯く。
握り締めた手のひらはもうすでに硬くなりはじめ、まるで人形のようだった。
朝には笑ってた。
一緒に町に行こうと約束をした。
それが果たされないと、知っていたけれど。
それでも、一緒に行きたかった。
「ごめん」
絞り出すような声で、彼が囁く。
硬く閉じた目は乾いて、涙のひとつも出てこない。
泣きたい、のに。
「ごめんね」
彼は繰り返す。
目の前で握り締めた手の先には、もはや彼の知る面影どころか、まともな人の形すら残されていない。
惨劇が、回避できたなら。
こんな力を持っていなかったら。
制約など無かったら。
荒地となった草原で、ルシェイドは手を握り締めたまま、嘆き続けた。