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何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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「そういえば、名前は?」
 お茶を入れながら彼が問う。
 言われた意味を、ぼんやりした頭で考える。
 さっき、彼は自分の名前を呼ばなかったか。
 何故問うのだろう。
「私はリーヴァセウスと言うんだ」
 彼は答えを待たずに名乗ると、お茶を手渡した。
 暖かいそれを両手で持ち、首を傾げる。
「……ルシェイド」
 ポツリと答えると、リーヴァセウスは困ったように眉を寄せた。
「それは役目の名前だろう? 君の、名だよ」
「あぁ……。……僕に、名前はないよ。それに、もう僕しかいないから、それが名前で問題ないんだ……」
 自嘲気味に笑うと、リーヴァセウスがお茶のカップを置いた。
 真剣な眼差しで、ルシェイドを見据える。
「そういう悲しいことを言わないでおくれ。……そうだ、名前がないなら、ゼギヴはどうだろう。性は……そうだね、君の前の名前から、アヴェロスは?」
 ぽん、と手を叩いて言う彼に、わずかに目を見開く。
「……僕を……知ってるの?」
「うん。正確には、君の先代……リィズと知り合いでね」
 さらりと言って、答えを促す。
「……良いよ、その名前で」
 緩く笑って答えると、リーヴァセウスが嬉しそうに笑った。

「君は……」
 怪訝そうに声をかけられ、ゆっくりとそちらを振り返る。
 思考は靄がかかったようで、すべての感覚が遠い。
 自分がどんな表情をしているのかもわからない。

 視界に入ったその人は、僕の顔を見て酷く驚いた顔をした。
「……あぁ、君が、ルシェイドだね」
 その人は納得したように囁くと、悲しそうに微笑んだ。
「……おいで。温かいお茶でも入れるよ」
 彼は僕の手を取ると、導くように歩き出した。
 僕は引かれるままに足を動かした。

 もう何も考えたくなかった。
 何もしたくなかった。
 このまま壊れて溶けて無くなってしまえば良い。
 僕という存在も、この世界も、消えてしまえば良いのに。
 無かったことには、できないとしても。

「――ルシェイド?」
 静かに声をかけられ、ぼんやりと視線を上げる。
 視界に映った景色は意味をなさず、ただ声に引かれて顔を上げたに過ぎなかった。
 けれど、視界が白く覆われた、と思った次の瞬間には、その人の腕の中にいた。
「大丈夫だから、存分に、泣くと良い……」
 抱きしめられながら、やさしい手が頭を撫でる。
 その感触と、温かさに、知らず涙が流れていた。

「何かあったんですか?」
 城の一角で騒ぎが起こっていた。
 ふと足を止めたレーウィスは、集まった人々に問いかける。
「あぁ、子供が一人紛れ込んでたんだよ」
 問いかけられた人が、騒ぎの中心を指差す。
 中心には、二人の大人と、その二人に両腕を取られた子供がいた。
 子供は、ざんばらになった茶色い髪を振り乱して、二人の腕から逃れようとしている。
 けれど、二人は衛兵だ。
 子供程度の抵抗ではどうにもならないだろう。

「何をしているんですか?」
 レーウィスは前に進みでると、中心へ声をかけた。
 衛兵は彼の姿を認めると、子供を抑えながら背筋を伸ばした。
「不審者です。声をかけたところ、逃げ出したので捕えました」
 衛兵の一人が言う。
 子供は不満そうに両脇の衛兵を見上げ、レーウィスを睨みつけた。
「あたしは何もしてないわ!」
「こら、静かにしろ!」
 抑えようとした衛兵の腕を逆に掴み、子供は噛み付くように叫んだ。
「離して!」
 叫び終わらないうちに、衛兵が空を舞った。
 一瞬何が起きたのかわからなかった。
 眼の前の、自分よりも小さい子供が倍もある大人二人を投げ飛ばしたのだと理解した瞬間、レーウィスは魔力で子供を昏倒させた。
「……?」
 抵抗らしい抵抗は殆ど感じず、子供はその場に倒れたままぴくりとも動かない。
「……レーウィス」
 立ち上がった衛兵が近くに寄り、彼に指示を仰ぐ。
「あぁ、申し訳ないのですが、この子を医務室に運んでもらえますか?」
 一瞬迷ってから指示し、踵を返す。
 この件については、ライナートに報告に行ったほうが良いだろう。
 そう考え、レーウィスは彼の執務室へ足を向けた。

 さらりとした髪を撫でる。
 薄い水色の髪は、冷たく掌から零れ落ち、昏々と眠るその人の額に落ちた。
 昏睡状態に陥ってから丸二日。
 そろそろ覚悟をした方が良いと、自身も青白い顔をして、金の目の魔法使いが言う。
「君も休みなよ。ずっと寝てないでしょ?」
 こつんと響いたノックの音と同時に、声が響く。
 扉に寄りかかったその姿は酷く頼りない。
 いつもは鮮やかな金の目をわずかに暗く曇らせながら、ゆったりとした足取りで近づいてくる。
「……お前こそ、ひどい顔色だぞ」
 顔を顰めて言うと、ふ、と笑われた。
「僕は大丈夫。それより、君が倒れたら元も子もないよ」
「……分かってる」
 はぁ、とため息を付いて立ち上がる。
 少し視界が歪んだが、問題はない。
「起きたら知らせるよ」
「頼む」
 目線で念を押して、退室する。
 途端、部屋の中から魔法の気配が広がった。
 回復用の、魔法。
 少しでも死を遠ざけられるように。
「……」
 何もできないことにもどかしさを感じながら、彼はその場から遠ざかっていった。

 こつ、と指で机を叩く。
 誰かを呼んでいるわけでもない、ただの無意識の行動だ。
 視線はもう片方の手に持った書類に向いている。
 机を叩く指を止め、顔を上げると、苛立ちの籠った口調で吐き捨てる。
「……遅い」

 はぁ、とため息を吐いて、音もなく立ち上がる。
 部屋の扉に手をかけたところで、廊下を誰かが走る音が聞こえた。
「……」
 この城でこんな音を立てるのは一人しかいない。
 タイミングを計って思い切り押し開けた。
 瞬間、開けた扉に走ってきた誰かがぶつかる衝撃があった。
「いってぇ……!」
 ちりり、と小さな音とともに、薄い緑色の頭が覗いた。
 顔面を抑えて呻くその姿に、一喝する。
「遅ぇ!」
 顔を押さえていたウォルファーが、驚いたように顔を上げた。
「無茶言うなよ! 食堂から此処までかなりあるんだぜ!」
「つまり俺の用事より食事を優先させたわけだな」
「えっいや、そんなことは……!」
 ぎくりと肩を強張らせて彼が言う。
「まぁまぁ。俺が付きあわせちゃったんだよ」
 突然、にこやかな声が割って入った。
 じろりと視線を向けると、バンダナを頭に巻いた青年が立っていた。
「付きあわせた?」
「そう。何とか形になったから、ライナートにもおすそ分け」
 はい、と言って手に持った袋を差し出す。
 反射的に受け取ってから、首をかしげる。
 袋からは甘い匂い。
「……? これは?」
「試作品だよ。ちょっと試してみたいものがあってな」
「へぇ」
「美味かったよ」
「とりあえずみんなに感想聞こうと思って」
 からりと笑うウォルファーと、ヒルクスを一瞥してため息をつく。
「……わかった。仕事しながらで良いならお前も入れ」
 頷いて中に入るヒルクスの後ろから、ウォルファーが続こうとするのを遮る。
「? 何だよ」
「お前、俺が言っておいた書類はどうした」
「えっ……あー、あれは……その」
「お前はそれ見つけるまで戻ってくるな」
「えぇ!? そんな!」
「早くしないと全部食っちまうぞ」
 にやりと意地悪く言うと、彼はあわてた様子で元来た道を走り出した。
「意地悪だねぇ」
「どうせすぐ忘れて戻ってくるさ」
 短く吐き捨てて、彼の差し出すお菓子を一口食べた。
 それは、ふわりとした甘い味がした。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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