何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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またいつか、ゆっくりお茶でもしよう。
そんな約束なんてしなければ良かったんだろうか。
仲間の一人が欠け、それでもその約束のために訪れた地は、すでに廃墟となって久しかった。
約束を果たす相手はもう居ない。
お茶を淹れようにも、片腕が動かない身では満足に淹れられるわけもなく。
呆然としたまま町があった場所を彷徨い歩き、日が暮れてから廃墟のひとつに腰を下ろした。
風が吹くかすかな音以外聞こえるものはない。
どれだけそうしていただろう。
遠くから、土を踏む軽い音が近づいてきた。
「もう行こう。いつまでも此処にいたら危ない」
心配そうな声には答えず、視線を彼方に移す。
目に映るのは、黒く切り取られた瓦礫だけ。
「……大丈夫?」
躊躇いがちに寄り添ってきた体に手を伸ばすと、ふかふかした手触りとともに温かい体温が伝わってきた。
そのまま、首の後に顔を埋める。
震える息を吐く。
「……もうしばらく、このままで……」
薄茶色の毛皮は、土と太陽の匂いがした。
そんな約束なんてしなければ良かったんだろうか。
仲間の一人が欠け、それでもその約束のために訪れた地は、すでに廃墟となって久しかった。
約束を果たす相手はもう居ない。
お茶を淹れようにも、片腕が動かない身では満足に淹れられるわけもなく。
呆然としたまま町があった場所を彷徨い歩き、日が暮れてから廃墟のひとつに腰を下ろした。
風が吹くかすかな音以外聞こえるものはない。
どれだけそうしていただろう。
遠くから、土を踏む軽い音が近づいてきた。
「もう行こう。いつまでも此処にいたら危ない」
心配そうな声には答えず、視線を彼方に移す。
目に映るのは、黒く切り取られた瓦礫だけ。
「……大丈夫?」
躊躇いがちに寄り添ってきた体に手を伸ばすと、ふかふかした手触りとともに温かい体温が伝わってきた。
そのまま、首の後に顔を埋める。
震える息を吐く。
「……もうしばらく、このままで……」
薄茶色の毛皮は、土と太陽の匂いがした。
トン、とかすかな音を立てて着地する。
木の床は僅かな軋みも立てない。
真っ暗な空間を見回す。
いつもなら小さな明かりがひとつ、灯っているはずだったが、部屋の中は完全な暗闇だった。
手を伸ばせばすぐに棚に触れる。
明かりがあれば、部屋に林立する棚と、其処彼処に山と積まれた一見ガラクタと思われる物が置いてあるのが見えただろう。
けれど、一寸先すら見えない闇の中では、何があるのかすらわからない。
そんな中、迷うこと無く歩を進め、手を伸ばす。
手に触れた布を少し持ち上げてくぐり抜けると、すぐ横の木の板を軽く押した。
木の板は扉になっているため、抵抗はなかった。
するりと室内に入る。
窓から入る明かりで部屋の中は明るい。
窓際のベッドには、この家の主が眠っていた。
近くまで寄っても起きる気配はない。
(珍しい。僕が来ると大抵起きだすのに)
あまり見られない寝顔をじっと見つめ、ふと笑う。
「寝てる時くらい穏やかな顔ができないの?」
小声で呟き、眉間の皺を指先で撫でる。
「……ん……」
微かな身動ぎに手を放すが、まだ起きないようだった。
「んー、と、これだっけ?」
ごそごそと懐から数枚の葉っぱを取り出し、机の上にあった水差しからコップに注いだ水の中に入れる。
途端に部屋の中に爽やかな匂いが溢れた。
「ん、ちょっと多かったかな」
コップに薄く蓋をして、枕元に近い、窓の桟に置く。
「……良い夢を運ぶ、匂いなんだそうだよ」
笑いながら囁き、ベッドの脇に腰を下ろした。
「……?」
嗅ぎ慣れない匂いに目を開ける。
目に入ったのは自分の部屋。のはずだ。
けれど、シーツの脇に青緑の頭が見えて、一気に目が覚めた。
「!」
がば、と跳ね起きる。
いつもなら来た気配で起きるのに。
ふと目に入った窓枠に、コップが置いてあるのに気づき、匂いのもとはこれか、と納得する。
「んー?」
もそりと頭が動き、寝ぼけ眼がこちらを見る。
「あ、起きたー?」
「……何しにきた。用事なら起こせばいいだろう」
いつも以上に不機嫌な声になっていることを自覚しながら、あくびをする顔を見つめる。
「んん、珍しく寝てたから起こしたら駄目かなぁって……」
そういう遠慮は起きてる時にしてもらいたい。
出かけた言葉を飲み込んで、用事を促す。
「何だっけ? 明日は誰も来ないから、買い出しに行こうと思って」
「……それを言いに、わざわざ夜中に来るのかお前は」
「いつもならこの時間起きてるじゃない」
それはそうなのだが、と憮然とする。
「とりあえず、明日のことならまた明日来い」
「えー。僕も一緒に寝かせてよ。眠いし」
「ベッドはひとつしか無いんでな」
「大丈夫」
にっこりと笑って立ち上がると、勢い良く両手をベッドの端に振り下ろした。
同時に両足を上げる。
と、とたんにベッドが横に広がった。
広くなったベッドに着地して、ね、と笑う。
「これなら寝れるでしょ?」
そう言ってもそもそと布団に潜っていった。
「…………」
理不尽さはそれなりに理解してきたつもりだったが、まさかこう来るとは思っていなかった。
深々とため息を付いて、同じように横になる。
「……起きたら戻しておけよ」
「覚えてたらね」
はぁ、と再度ため息を付いて、大人しく布団に入り込んだ。
木の床は僅かな軋みも立てない。
真っ暗な空間を見回す。
いつもなら小さな明かりがひとつ、灯っているはずだったが、部屋の中は完全な暗闇だった。
手を伸ばせばすぐに棚に触れる。
明かりがあれば、部屋に林立する棚と、其処彼処に山と積まれた一見ガラクタと思われる物が置いてあるのが見えただろう。
けれど、一寸先すら見えない闇の中では、何があるのかすらわからない。
そんな中、迷うこと無く歩を進め、手を伸ばす。
手に触れた布を少し持ち上げてくぐり抜けると、すぐ横の木の板を軽く押した。
木の板は扉になっているため、抵抗はなかった。
するりと室内に入る。
窓から入る明かりで部屋の中は明るい。
窓際のベッドには、この家の主が眠っていた。
近くまで寄っても起きる気配はない。
(珍しい。僕が来ると大抵起きだすのに)
あまり見られない寝顔をじっと見つめ、ふと笑う。
「寝てる時くらい穏やかな顔ができないの?」
小声で呟き、眉間の皺を指先で撫でる。
「……ん……」
微かな身動ぎに手を放すが、まだ起きないようだった。
「んー、と、これだっけ?」
ごそごそと懐から数枚の葉っぱを取り出し、机の上にあった水差しからコップに注いだ水の中に入れる。
途端に部屋の中に爽やかな匂いが溢れた。
「ん、ちょっと多かったかな」
コップに薄く蓋をして、枕元に近い、窓の桟に置く。
「……良い夢を運ぶ、匂いなんだそうだよ」
笑いながら囁き、ベッドの脇に腰を下ろした。
「……?」
嗅ぎ慣れない匂いに目を開ける。
目に入ったのは自分の部屋。のはずだ。
けれど、シーツの脇に青緑の頭が見えて、一気に目が覚めた。
「!」
がば、と跳ね起きる。
いつもなら来た気配で起きるのに。
ふと目に入った窓枠に、コップが置いてあるのに気づき、匂いのもとはこれか、と納得する。
「んー?」
もそりと頭が動き、寝ぼけ眼がこちらを見る。
「あ、起きたー?」
「……何しにきた。用事なら起こせばいいだろう」
いつも以上に不機嫌な声になっていることを自覚しながら、あくびをする顔を見つめる。
「んん、珍しく寝てたから起こしたら駄目かなぁって……」
そういう遠慮は起きてる時にしてもらいたい。
出かけた言葉を飲み込んで、用事を促す。
「何だっけ? 明日は誰も来ないから、買い出しに行こうと思って」
「……それを言いに、わざわざ夜中に来るのかお前は」
「いつもならこの時間起きてるじゃない」
それはそうなのだが、と憮然とする。
「とりあえず、明日のことならまた明日来い」
「えー。僕も一緒に寝かせてよ。眠いし」
「ベッドはひとつしか無いんでな」
「大丈夫」
にっこりと笑って立ち上がると、勢い良く両手をベッドの端に振り下ろした。
同時に両足を上げる。
と、とたんにベッドが横に広がった。
広くなったベッドに着地して、ね、と笑う。
「これなら寝れるでしょ?」
そう言ってもそもそと布団に潜っていった。
「…………」
理不尽さはそれなりに理解してきたつもりだったが、まさかこう来るとは思っていなかった。
深々とため息を付いて、同じように横になる。
「……起きたら戻しておけよ」
「覚えてたらね」
はぁ、と再度ため息を付いて、大人しく布団に入り込んだ。
背に流れた金の髪の間を、心臓に向けて刃を差し入れる。
よく砥がれた短剣は、さしたる抵抗もなく肉に沈んだ。
刃を根元まで差し込まれた体が震える。
振り返った表情は、信じられないという感情をありありと映してこちらを見下ろしていた。
知らない相手じゃない。
何度も会って、話をして、笑ったりもした相手だ。
本音を言うなら殺したくなんか無い。
けれどすでにバランスを欠いたこの世界で、『彼』がそれを求めるなら、殺すことに躊躇いはない。
だからせめて苦しまないように、心臓を切り裂いた。
重い音を立てて足元に崩れ落ちた体を、大量に流れだした血が赤く染めていく。
靴の先を濡らされながら、動かなくなった死体を見下ろし、短剣を握り締める。
頭の中を言い訳が駆け巡る。
こんな事はしたくなかった。
死んでほしくなかった。
それでも、『彼』が望んだから。
どれだけ言い訳を探しても、殺したのは自分自身に他ならない。
だから、誰を責めることも、出来ない。
小さな物音が聞こえて、はっとして顔を上げる。
蒼白な顔をした人影がこちらを見ていた。
堰を切ったように響き渡った驚愕の叫びを聞きながら、彼はその場から逃げ出した。
よく砥がれた短剣は、さしたる抵抗もなく肉に沈んだ。
刃を根元まで差し込まれた体が震える。
振り返った表情は、信じられないという感情をありありと映してこちらを見下ろしていた。
知らない相手じゃない。
何度も会って、話をして、笑ったりもした相手だ。
本音を言うなら殺したくなんか無い。
けれどすでにバランスを欠いたこの世界で、『彼』がそれを求めるなら、殺すことに躊躇いはない。
だからせめて苦しまないように、心臓を切り裂いた。
重い音を立てて足元に崩れ落ちた体を、大量に流れだした血が赤く染めていく。
靴の先を濡らされながら、動かなくなった死体を見下ろし、短剣を握り締める。
頭の中を言い訳が駆け巡る。
こんな事はしたくなかった。
死んでほしくなかった。
それでも、『彼』が望んだから。
どれだけ言い訳を探しても、殺したのは自分自身に他ならない。
だから、誰を責めることも、出来ない。
小さな物音が聞こえて、はっとして顔を上げる。
蒼白な顔をした人影がこちらを見ていた。
堰を切ったように響き渡った驚愕の叫びを聞きながら、彼はその場から逃げ出した。
必ず帰るって言ったのに。
こつ、と傍らの壁に頭を預ける。
日が長くなってきたとはいえ、外階段は少し寒い。
でも、此処が一番見通しが良い。
あの人が、帰ってくるならこの道を通るはずだから。
どれだけ此処で待ってるんだろう。
あとどのくらい待てば、あの人は帰ってくるんだろう。
思わず泣きそうになって、目を瞬く。
近所のおばあさんからの挨拶を笑顔で返しながら、遠ざかる後ろ姿にため息をつく。
何人も何人も通り過ぎる人がいるのに、あの人じゃない。
仕事をしている間に通りすぎてしまったのだろうかと心配になる。
見逃さないようにと、道沿いの仕事場だけれど、それでも今みたいにずっと道を見ている訳にはいかない。
ふぅ、とまたため息をついた時、不意に影が落ちた。
「?」
首を傾げながら顔を上げると、薄い青の髪を無造作に流した青年が笑顔で立っていた。
「何してるの?」
「……待ってるの」
不思議そうに聞かれ、表情もなく答える。
説明の足りない答えに、青年はふぅん、と呟くと、私の頭を撫でた。
「来ると良いね」
その言葉と、手の温かさに、泣きそうになる。
みんな、もう来ないとか、待っても無駄だ、とかばかり言ったから。
例え同情だとしても、その言葉が今一番欲しかった言葉なんだ、と胸の奥が温かくなった。
こつ、と傍らの壁に頭を預ける。
日が長くなってきたとはいえ、外階段は少し寒い。
でも、此処が一番見通しが良い。
あの人が、帰ってくるならこの道を通るはずだから。
どれだけ此処で待ってるんだろう。
あとどのくらい待てば、あの人は帰ってくるんだろう。
思わず泣きそうになって、目を瞬く。
近所のおばあさんからの挨拶を笑顔で返しながら、遠ざかる後ろ姿にため息をつく。
何人も何人も通り過ぎる人がいるのに、あの人じゃない。
仕事をしている間に通りすぎてしまったのだろうかと心配になる。
見逃さないようにと、道沿いの仕事場だけれど、それでも今みたいにずっと道を見ている訳にはいかない。
ふぅ、とまたため息をついた時、不意に影が落ちた。
「?」
首を傾げながら顔を上げると、薄い青の髪を無造作に流した青年が笑顔で立っていた。
「何してるの?」
「……待ってるの」
不思議そうに聞かれ、表情もなく答える。
説明の足りない答えに、青年はふぅん、と呟くと、私の頭を撫でた。
「来ると良いね」
その言葉と、手の温かさに、泣きそうになる。
みんな、もう来ないとか、待っても無駄だ、とかばかり言ったから。
例え同情だとしても、その言葉が今一番欲しかった言葉なんだ、と胸の奥が温かくなった。
ゴッ、と鈍い音が響いて、重いものが倒れる音が続いた。
アリアは長く息を吐くと、構えを解いて後ろを振り返った。
「もう良いわよ」
「すみません。有難うございます」
申し訳なさそうに近づいてきたレーウィスが、アリアの足元に倒れているものに視線を送る。
「こんな大物は久しぶりですね」
「そうね」
頷いて、同じように見下ろす。
熊のような大きさの魔獣は、この大陸ではあまり見たことがない。
それも、耐魔が強いものなど。
「今日はあたしも居て良かったわ。レーウィスだけじゃきっと時間かかってたし」
「そうですね。私も物理攻撃系の魔法を覚えるべきですかね……」
「物理攻撃ならあたしがいるから良いんじゃないの?」
はぁ、とため息混じりに言うと、アリアはあっさりと言って笑った。
「でもそのかわり、魔法攻撃は頼りにしてるからね!」
それに苦笑で返し、魔法を発動させる。
この近くにまだ同じ魔獣がいるなら、排除しなければならない。
ふ、とレーウィスが顔を上げる。
「あぁ、まだいますね」
「本当? 夕飯までに帰れるかしら」
「大丈夫ですよ。そんなに遠くないですから」
「じゃあ、さっさと終らせちゃいましょ」
拳を振り上げてアリアが笑う。
レーウィスは頷いて、倒れた魔獣を始末し、次の場所へ足を向けた。
アリアは長く息を吐くと、構えを解いて後ろを振り返った。
「もう良いわよ」
「すみません。有難うございます」
申し訳なさそうに近づいてきたレーウィスが、アリアの足元に倒れているものに視線を送る。
「こんな大物は久しぶりですね」
「そうね」
頷いて、同じように見下ろす。
熊のような大きさの魔獣は、この大陸ではあまり見たことがない。
それも、耐魔が強いものなど。
「今日はあたしも居て良かったわ。レーウィスだけじゃきっと時間かかってたし」
「そうですね。私も物理攻撃系の魔法を覚えるべきですかね……」
「物理攻撃ならあたしがいるから良いんじゃないの?」
はぁ、とため息混じりに言うと、アリアはあっさりと言って笑った。
「でもそのかわり、魔法攻撃は頼りにしてるからね!」
それに苦笑で返し、魔法を発動させる。
この近くにまだ同じ魔獣がいるなら、排除しなければならない。
ふ、とレーウィスが顔を上げる。
「あぁ、まだいますね」
「本当? 夕飯までに帰れるかしら」
「大丈夫ですよ。そんなに遠くないですから」
「じゃあ、さっさと終らせちゃいましょ」
拳を振り上げてアリアが笑う。
レーウィスは頷いて、倒れた魔獣を始末し、次の場所へ足を向けた。