目的のドアを勢い良く開く。
瞬間、腰の高さの台に乗ったモノが破砕した。
声は上げられなかった。
助けに、来たのに。
間に合わなかった。
一緒に来ていた女性と、そこへ走り寄る。
それは、人だったモノだった。
所々が赤黒く不自然に膨れ上がり、胸腔は破裂し、鮮やかな赤色を周囲に示していた。
体はすでに動かない。
大きく開いた眼窩には、眼球は収められていなかった。
目を背けるように周囲を見回す。
他にも、助けなければいけない人がいたはずだ。
まるで理科室の机のような、ステンレスの台を囲むように座っている、4人の女性の姿が見えた。
動いている。
生きているのか。
はやる気持ちを抑えながら走り寄った。
手前で、足が止まる。
彼女たちは、両腕が付け根から切り落とされていた。
虚ろな眼差しで涙を流しながら、台の上に分けられた肉片を租借している。
言葉は一言も無い。
竦む足を叱咤するように、逃げよう、と言い募る。
彼女たちは視線も上げずに首を左右に振った。
逃げられない。
逃げても無駄だと。
悲鳴が聞こえた。
振り返ると、一緒に来ていた女性が台の上に乗せられていた。
急いで走る目の前で、膝から下が切り落とされた。
糸鋸のような細い刃物で、まるで豆腐を切るように簡単に。
酷く鮮やかな断面を曝しながら、女性はなおも悲鳴を上げた。
次の瞬間、同じ刃物が女性の口元にあてられた。
悲鳴を上げる口をさらに広げるように置かれた刃物は、流れるように頭の後ろへ抜けた。
そこで、悲鳴が途切れた。