何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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傍にいるだけで救われるような。
そんな気がしていた。
たとえそれが錯覚に過ぎないのだとしても。
小さく、小さく息を吐く。
聞き取れないほどの、気づかれないほどのため息。
たとえ盛大にため息を吐いたところで、誰かに聞かれる心配はなかった。
この部屋には、自分しかいないのだから。
「……!」
眼球の奥がずきりと痛む。
それとわからないほどかすかに顔をしかめると、もたれていた椅子から立ち上がった。
窓からは日の光がまばゆいほどに差し込んでいる。
けれどその光は、彼が立つ場所へぎりぎりで届かない。
くっきりとした境界へしばらく視線を落してから、彼はきびすを返した。
鮮やかな赤い髪が後を追う。
部屋に満ちる光に触れることなく、彼はその場を後にした。
そんな気がしていた。
たとえそれが錯覚に過ぎないのだとしても。
小さく、小さく息を吐く。
聞き取れないほどの、気づかれないほどのため息。
たとえ盛大にため息を吐いたところで、誰かに聞かれる心配はなかった。
この部屋には、自分しかいないのだから。
「……!」
眼球の奥がずきりと痛む。
それとわからないほどかすかに顔をしかめると、もたれていた椅子から立ち上がった。
窓からは日の光がまばゆいほどに差し込んでいる。
けれどその光は、彼が立つ場所へぎりぎりで届かない。
くっきりとした境界へしばらく視線を落してから、彼はきびすを返した。
鮮やかな赤い髪が後を追う。
部屋に満ちる光に触れることなく、彼はその場を後にした。
歩を進める。
ゆっくりと、けれど確信を持って。
ざく、ざく、と響く音は聞こえていたけれど、聞いてはいなかった。
ただ、前へ。
「何処へ行くの」
聞きなれた声。
いつもは明るいその声は、今は平坦に響いた。
歩みは止まらない。
「止まれ。エディウス」
それは命令。
けれど。
止まらない。
止められない。
その、意思が無い。
進むんだ。
この先へ。
「……エディウス」
吐息に乗せた声が、すぐ後ろで聞こえた。
途端、体が動かなくなる。
「行ってはいけないよ。……分かっているだろう?」
当たり前の、事実を言うだけの言葉に、けれどその場を動けない。
視線は前を向いたまま。
その、先には。
「その先に、何も無いってことを」
分かっている。
知っている。
目の前は、虚空だ。
あと一歩進めば、この体は虚無に飲まれる。
遥か昔、世界には果てがあるのだと教わったように。
「……おいで。エディウス」
再度、彼が名を呼ぶ。
振り返る、その視界はぼんやりと滲んで、見慣れたはずの姿を隠していた。
「ごめんね」
このまま消えたいと思っていただろうに、引き止めたのは自分だ。
あの虚空の向こうに彼がいるかもしれないと、僅かでも思っていたのか。
いないことは、誰より良く彼が知っていただろうに。
それでも。
「僕は僕の都合で、君をこの世界に留まらせてしまう」
別の出会いの為に。
世界の為に。
そして、別れの為に。
昏々と眠る赤毛の彼を一瞥して、ルシェイドはきつく目を閉じた。
ゆっくりと、けれど確信を持って。
ざく、ざく、と響く音は聞こえていたけれど、聞いてはいなかった。
ただ、前へ。
「何処へ行くの」
聞きなれた声。
いつもは明るいその声は、今は平坦に響いた。
歩みは止まらない。
「止まれ。エディウス」
それは命令。
けれど。
止まらない。
止められない。
その、意思が無い。
進むんだ。
この先へ。
「……エディウス」
吐息に乗せた声が、すぐ後ろで聞こえた。
途端、体が動かなくなる。
「行ってはいけないよ。……分かっているだろう?」
当たり前の、事実を言うだけの言葉に、けれどその場を動けない。
視線は前を向いたまま。
その、先には。
「その先に、何も無いってことを」
分かっている。
知っている。
目の前は、虚空だ。
あと一歩進めば、この体は虚無に飲まれる。
遥か昔、世界には果てがあるのだと教わったように。
「……おいで。エディウス」
再度、彼が名を呼ぶ。
振り返る、その視界はぼんやりと滲んで、見慣れたはずの姿を隠していた。
「ごめんね」
このまま消えたいと思っていただろうに、引き止めたのは自分だ。
あの虚空の向こうに彼がいるかもしれないと、僅かでも思っていたのか。
いないことは、誰より良く彼が知っていただろうに。
それでも。
「僕は僕の都合で、君をこの世界に留まらせてしまう」
別の出会いの為に。
世界の為に。
そして、別れの為に。
昏々と眠る赤毛の彼を一瞥して、ルシェイドはきつく目を閉じた。
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