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「眠れないの」

 淡い月光を浴びた後ろ姿に声をかける。
 リーヴァセウスは視線を窓の外から戻すと、ルシェイドの姿を認めて微笑した。
「君こそどうしたの。こんな夜更けに」
「こっちの台詞だよ。そんな風に出歩いてると、またライナートに怒られるよ」
 リーヴァセウスは困ったように眉根を寄せる。
「うん……。そうなんだけどね」
 眠れなくて。
 そう小さく囁いて、彼は視線を落した。
 床には月光でできた淡い影が伸びている。

 細いその影がゆらりと揺れたかと思うと、彼は音を立ててその場に倒れた。
「リーヴァセウス!」
 慌てて駆け寄り、抱き起こす。
 月光の下にあってなお青白いその顔を見て、ルシェイドが表情を変える。
 瞬く間に青年の姿へと変化すると、リーヴァセウスを抱えあげて廊下を走った。
「ライナート!」
 途中で声を張る。
 すぐに足音がして、上着を半分羽織ったままの青年が現れた。
「!」
 抱えられているリーヴァセウスを見て表情を変える。
「こっちだ」
 だが取り乱すでもなく立ち直ると、すぐにきびすを返してルシェイドを先導した。
 廊下を更に進んだところにある扉を開け、ベッドを整える。
「入用のものはあるか?」
「ん……水貰っていい?」
「わかった。すぐに持ってこよう」
 ライナートが飛び出していく。
 その足音を聞きながら抱えた彼をベッドに横たえ、傍らにひざを付く。
 手を握り、目を閉じる。
 まるで、祈っているように。

 戻ってくる足音に目を開ける。
 そのころには、リーヴァセウスの顔色はだいぶ良くなっていた。
 代わりにルシェイドの顔色が悪くなっている。
「おい、もって来たぞ」
 す、と水の入ったコップを差し出され、礼を言って受け取る。
 どうするのかと見ていると、ルシェイドはそれをそのまま飲み干した。
「お前が飲むのかよ」
「他に誰が居るのさ」
 ひとつ息をついてルシェイドが言う。
「大丈夫そうか?」
 二人は横たわる彼に視線を向ける。
「……まぁ、今のところはね」
 その場に何ともいえない沈黙が落ちる。
 視線の先で、リーヴァセウスは穏やかな寝息を立てていた。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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