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何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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 薄暗い、というよりほぼ真っ暗な部屋の中で、彼はふと顔をあげた。
 路地裏に面した、外に通じる唯一の扉が、かすかに音を立てた。
 それはすぐに叩くような激しい音となり、彼は不愉快そうに眉を寄せた。

 一瞬音が途切れた。
 次の瞬間、ばたん、と盛大な音を立てて扉が開いた。
 否、開いた、というよりも開かされた、が正しいだろうか。
 扉は軋んだ音とともに、内側に倒れこんだ。
 鍵がかかっていたはずの扉は、扉を開ける力に屈して蝶番の部分から壊れていた。
 倒れた拍子に舞った埃が、あたりに散っている。
 路地裏からの逆光の中に立つ人物は軽く咳き込みながら中に入ってきた。
 ほっそりとした柔らかい輪郭は、女性のものだ。

「建て付け悪いわよこのドア」
 両手を腰に当て、文句を言う彼女にため息で応える。
「あれは建て付けじゃなくて鍵がかかってたんだ」
 立ち上がり、ドアを直す。
 扉自体は無事だが、蝶番や、鍵の部分が変形してしまっている。
 ため息をついて扉を元の位置にはめると、一言、「言葉」をつぶやく。
 途端、淡く光る光の帯が扉に複雑な模様を描いた。
 光が消えると、何事もなかったかのように扉が閉まっていた。
 同時に、店内に暗闇が戻る。
「暗いわ。明かりないの?」
「今日は休みだからな」
「営業中だって暗いって聞いたわよ」
「暗い方が品物の保管状態が良いんだ」
 彼女はふぅん、と言ってカウンターにあった角灯に明かりを灯した。

 柔らかな淡い光に照らされ、彼女が振り返る。
「改めて、久しぶりね。ディリク」
「……アリア。来る時には前もって言うか、ノックをするようにしてくれ。毎回扉を壊されたのではこちらが困る」
「開けてなさいよ。お店なんだから」
「年中無休にできるわけがないだろう」
「あぁ、そうか、ひとりでやってるんだものね」
 角灯を持ったままカウンターを回り、奥へと進む。

 途中でくるりと振り返り、首をかしげた。
「皆もう来てるんでしょ? 何してるの」
 さっさと来い、ということか。 彼はため息をついて後を追った。



最近猫が好きです。
…いや猫ブログとか癒されますよw

いつか灰色で耳の先と尻尾が白いのがいたら飼いたい。
…見かけたことないけど!(笑)


長い髪とか見ると三つ編みしたくなります。
自分のはできないから余計に(不器用)


…何か、2コマ目の服、似合わないなぁ(遠い目)

 獣が、すっと目を細める。
「……引く気はないのか」
 きしるような声が降ってきて、驚きに目を見張る。

「……お前、意識が?」
「あるよ」
 かすれた問いかけに、憮然とした色を滲ませた声が答える。
 抵抗なしと感じたのか、獣が体の上から退く。
 半ば呆然としながら上半身を起こし、獣をまじまじと見つめた。
 話の通じる魔獣は初めてだ。

「まったく、見境無く襲ってくる奴ばかりだ」
 憤然と獣が言う。
「はじめに話しかければ良いんじゃないか?」
「そうしたら面白いからと捕まえようとしてくるよ」
「そいつは?」
「食い殺した」
 さらりと、僅かに怒りを含ませて獣が応える。
「まぁ賢明だな」
 ポツリと呟くと、驚いた気配が伝わった。
「人は人の味方だと思ってた」
「馬鹿の味方をする気はない」
 そう言って立ち上がると、傍らに転がった剣に手を伸ばす。
 それを鞘に収めると、自分を凝視している獣の視線にぶつかった。
「……? 何だ?」
「いや……殺すのかと思った」
 呆然としたように獣が言うと、呆れたように片眉を上げる。
「それは俺の台詞だろう」

 あっという間に負けた。
 実力の差は歴然としている。
「それに、俺はお前を殺したいわけじゃないからな」
 囁かれた言葉はほんの小さな声だったが、獣には十分聞こえた。
 獣が問うように首をかしげる。
 僅かに間をおいて、獣と同じ赤い瞳を、獣に向ける。

「お前は、理由も無く人は殺さないだろう」
 言い放ってきびすを返す。
 その背に、声がかけられた。
「待てよ」
 振り返った彼に、獣が問う。
「どこかへ行く途中なのか?」
「いいや」
 興味なさそうに応える。

「それなら、俺を連れて行ってくれないか」
 唐突な申し出に、目を見開いて振り返る。
「何……」
「誰か……探していたところなんだ。この姿じゃ限界があるから」
 しん、と沈黙が満ちた。
 お互いに見つめあったまま、動かない。

 真意が、見えない。
「何故、俺なんだ?」
 警戒する心を押し殺し、静かに問う。
 獣が僅かに視線を揺らす。
「あんたは、俺を恐れない。それに……」
 ちらりと、彼の持つ剣に視線を落とす。
「まだ完成してない」
 彼はため息を吐いて背を向けた。
 足を一歩踏み出して、振り返る。
「やりたいことがあるなら行き先は決まっているのか?」
「! あぁ」
 傍らに走り寄る獣を待って、歩を進める。
「俺はオルカーン。お前は?」
「ルベアだ」
 視線すら向けずに無愛想に言う彼に、獣は一度だけ尻尾を振った。

 わぁ、と声が上がった。
 歓声ではない。
 恐怖の混じった、悲鳴だ。

「魔獣だ――……」

 聞こえた言葉にぴくりと顔を上げる。
 街道の前方から、何人かが駆けてきた。
 躊躇いもせず、流れに逆らって走り出す。

 程なく、大気に血臭が混じり始めた。
 逃げる人影はすでに遠い。
 がさり、と鳴った草むらに視線を走らせる。
 音との距離は少し遠い。
 街道を離れ、その音に向かって音も立てずに走った。

「!」
 僅かに開けた場所には、血溜りが広がっていた。
 その中にところどころ混じる獣の毛に、人が襲われたわけではないのかと思う。
 そのまま視線を上げようとして、凍りつく。

 何か、いる。

 押し殺した、けれど存在を主張する、気配。
 それは忍び寄る冷気のように気がつけばその場を満たしていた。
 萎縮しそうな体を、ゆっくりと呼吸することで正常に戻す。
 気配の元は右斜め前方。
 草むらに隠れて、姿は見えない。
 呼吸に合わせてそちらに視線を据え、左手で剣を抜き放つ。

 ためていた息を吐き出した瞬間、それはこちらに飛び出してきた。
 振り下ろされた爪をかろうじて剣で受け止め、後ろに流す。
 体重を殆ど感じさせないしなやかな動きでそれは地面に降り立つ。

 薄い茶色の毛並み。
 赤い目は鮮やかな血色をしている。
 額に目があることと、尾が二つに分かれていることで、魔獣だと分かる。
 背の高さは四足の状態で腰くらいあった。
 じり、と間合いをつめる。
 何度目かの呼吸の後、短く息を吐いて一歩を踏み出す。
 その勢いのまま大きく踏み込んで刃を振り下ろす。
 それが獣に触れる寸前、獣はするりと避けて背後に回った。
「……!」
 振り向こうとした瞬間に足元を払われた。
 倒れた衝撃で息が詰まる。
 その上に、獣が前足を乗せて動きを封じた。
 剣は倒れた時に手から離れてしまっている。
 武器はまだあるが、今の状況では獣が足に力を入れるほうが早い。
 せめてもの抵抗と、目の前にある顔を睨みつけた。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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