忍者ブログ
何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 獣が、すっと目を細める。
「……引く気はないのか」
 きしるような声が降ってきて、驚きに目を見張る。

「……お前、意識が?」
「あるよ」
 かすれた問いかけに、憮然とした色を滲ませた声が答える。
 抵抗なしと感じたのか、獣が体の上から退く。
 半ば呆然としながら上半身を起こし、獣をまじまじと見つめた。
 話の通じる魔獣は初めてだ。

「まったく、見境無く襲ってくる奴ばかりだ」
 憤然と獣が言う。
「はじめに話しかければ良いんじゃないか?」
「そうしたら面白いからと捕まえようとしてくるよ」
「そいつは?」
「食い殺した」
 さらりと、僅かに怒りを含ませて獣が応える。
「まぁ賢明だな」
 ポツリと呟くと、驚いた気配が伝わった。
「人は人の味方だと思ってた」
「馬鹿の味方をする気はない」
 そう言って立ち上がると、傍らに転がった剣に手を伸ばす。
 それを鞘に収めると、自分を凝視している獣の視線にぶつかった。
「……? 何だ?」
「いや……殺すのかと思った」
 呆然としたように獣が言うと、呆れたように片眉を上げる。
「それは俺の台詞だろう」

 あっという間に負けた。
 実力の差は歴然としている。
「それに、俺はお前を殺したいわけじゃないからな」
 囁かれた言葉はほんの小さな声だったが、獣には十分聞こえた。
 獣が問うように首をかしげる。
 僅かに間をおいて、獣と同じ赤い瞳を、獣に向ける。

「お前は、理由も無く人は殺さないだろう」
 言い放ってきびすを返す。
 その背に、声がかけられた。
「待てよ」
 振り返った彼に、獣が問う。
「どこかへ行く途中なのか?」
「いいや」
 興味なさそうに応える。

「それなら、俺を連れて行ってくれないか」
 唐突な申し出に、目を見開いて振り返る。
「何……」
「誰か……探していたところなんだ。この姿じゃ限界があるから」
 しん、と沈黙が満ちた。
 お互いに見つめあったまま、動かない。

 真意が、見えない。
「何故、俺なんだ?」
 警戒する心を押し殺し、静かに問う。
 獣が僅かに視線を揺らす。
「あんたは、俺を恐れない。それに……」
 ちらりと、彼の持つ剣に視線を落とす。
「まだ完成してない」
 彼はため息を吐いて背を向けた。
 足を一歩踏み出して、振り返る。
「やりたいことがあるなら行き先は決まっているのか?」
「! あぁ」
 傍らに走り寄る獣を待って、歩を進める。
「俺はオルカーン。お前は?」
「ルベアだ」
 視線すら向けずに無愛想に言う彼に、獣は一度だけ尻尾を振った。

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[94] [93] [92] [91] [90] [89] [88] [87] [86] [85] [84
«  Back :   HOME   : Next  »
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
最新記事
創作絵  (01/05)
創作文_異界  (05/04)
創作文  (04/20)
創作絵  (05/24)
創作文_神界  (02/23)
広告
PR

Copyright(C)2009-2012 Mitsu Okishima.All right reserved.
忍者ブログ [PR]