何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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ゆっくりと、目の前が白く染め上げられていく。
空から舞い散る雪をぼんやりと眺めながら、彼は木の幹にもたれかかってそれを見ていた。
そっと手を伸ばす。
指先に触れた雪はすぐに融け、ただ冷たいだけの水になってしまう。
上げた手をどさりと落とす。
不思議と寒くは無かった。
ただ、酷くだるかった。
投げ出された足はそのまま、彼はため息を吐くように息を吐いた。
白い息は、雪景色に溶けずに風に乗って、すぐに消えた。
-----
「君は! どうしてそういう無茶をするんだ!」
次に目を開けたとき、見えたのは泣きそうに怒る友人の姿だった。
見慣れた姿。
見慣れた部屋。
寒くは無い。
温度は調節されているのだろう。
「……君は、分かってるんだろう? 自分の身体が……」
吐き出すように囁く彼に微笑む。
「……分かってるよ」
「ならどうして!」
「その辺にしておけ、ルシェイド」
遮ったのは銀髪の青年だった。
毛先だけが緑色の。
手には湯気の立つカップがある。
表情を変えずに傍まで来ると、それを手渡してくる。
「……!」
ぐ、と唇を噛み締めて、ルシェイドは身を翻した。
それを見送って、ライナートは彼を振り返ると小さくため息をついて手を伸ばした。
ぽす、と頭に手を置いて、つぶやく。
「あまり心配をかけるな」
思わず顔を上げたときには、すでにライナートは踵を返し、扉へと向かっていた。
返す言葉もなく見送り、手に持ったカップへと視線を落とす。
自然、ため息が漏れた。
「分かってはいるよ……。だけど、ただ、死を待つだけなのは嫌なんだ……」
囁きは小さく、湯気に紛れて消えた。
扉のすぐ外では、複雑な表情でライナートが立っていた。
空から舞い散る雪をぼんやりと眺めながら、彼は木の幹にもたれかかってそれを見ていた。
そっと手を伸ばす。
指先に触れた雪はすぐに融け、ただ冷たいだけの水になってしまう。
上げた手をどさりと落とす。
不思議と寒くは無かった。
ただ、酷くだるかった。
投げ出された足はそのまま、彼はため息を吐くように息を吐いた。
白い息は、雪景色に溶けずに風に乗って、すぐに消えた。
-----
「君は! どうしてそういう無茶をするんだ!」
次に目を開けたとき、見えたのは泣きそうに怒る友人の姿だった。
見慣れた姿。
見慣れた部屋。
寒くは無い。
温度は調節されているのだろう。
「……君は、分かってるんだろう? 自分の身体が……」
吐き出すように囁く彼に微笑む。
「……分かってるよ」
「ならどうして!」
「その辺にしておけ、ルシェイド」
遮ったのは銀髪の青年だった。
毛先だけが緑色の。
手には湯気の立つカップがある。
表情を変えずに傍まで来ると、それを手渡してくる。
「……!」
ぐ、と唇を噛み締めて、ルシェイドは身を翻した。
それを見送って、ライナートは彼を振り返ると小さくため息をついて手を伸ばした。
ぽす、と頭に手を置いて、つぶやく。
「あまり心配をかけるな」
思わず顔を上げたときには、すでにライナートは踵を返し、扉へと向かっていた。
返す言葉もなく見送り、手に持ったカップへと視線を落とす。
自然、ため息が漏れた。
「分かってはいるよ……。だけど、ただ、死を待つだけなのは嫌なんだ……」
囁きは小さく、湯気に紛れて消えた。
扉のすぐ外では、複雑な表情でライナートが立っていた。
落書きです。
この角度が一番描きやすい。
…描かなくなると描けなくなってくるので気をつけねば…と思いつつ、描けてません。
暑いと駄目なんだ…駄目なんだよ…(何)
「……ッ!」
パキリ。
目の前に散る氷の一つが、触れた指の先で細かな破片となって弾けた。
鋭利な欠片が、指に傷をつける。
思いのほか深く傷つけたのか、鮮やかな赤い血が床へと滴り落ちた。
視線が、床へと落ちる。
何の感情も篭らない目。
呼吸の為に僅かに肩が上下していなければ、まるで人形のようだった。
広くも無く狭くも無い部屋の中、氷の欠片に囲まれて佇みながら、彼はただ、あぁ、綺麗だな、と思っていた。
----
カタリ、と僅かな物音がして、扉が開いた。
無言で入ってきた彼は、部屋の中を見て眉間に皺を寄せた。
険しい表情のまま近づく。
「砕けろ」
硬い声で呟くと、部屋に散っていた氷は跡形も無く砕けた。
彼は手を伸ばせば振れられるほど近くに行くと、地の底から響くような声音で言った。
「てめぇ……こんな所で何やってやがる」
その声と表情に気圧されたように僅かに身を引きながら、彼は答えた。
「……え、と……練習を」
「寝てろッて言っただろうがッ! しかも良く見りゃ怪我してるじゃねぇか!」
雷が落ちた、という表現が似合いそうな声で怒鳴り、怪我をしている手を心臓より上の位置に上げさせる。
「てめぇこの馬鹿がッ! 昨日具合悪いっつって飯も食わなかった挙句練習で怪我とかふざけんなよ!? さっさと来い!」
烈火の如く怒られ、彼はふと笑みをこぼす。
「うん……ごめんね」
思いもかけない笑顔に、彼は眉間に皺を寄せたまま視線を逸らして部屋の外へと引っ張り出した。
それが彼の照れだとわかって、彼は笑みを深くして大人しく手を引かれて行った。
パキリ。
目の前に散る氷の一つが、触れた指の先で細かな破片となって弾けた。
鋭利な欠片が、指に傷をつける。
思いのほか深く傷つけたのか、鮮やかな赤い血が床へと滴り落ちた。
視線が、床へと落ちる。
何の感情も篭らない目。
呼吸の為に僅かに肩が上下していなければ、まるで人形のようだった。
広くも無く狭くも無い部屋の中、氷の欠片に囲まれて佇みながら、彼はただ、あぁ、綺麗だな、と思っていた。
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カタリ、と僅かな物音がして、扉が開いた。
無言で入ってきた彼は、部屋の中を見て眉間に皺を寄せた。
険しい表情のまま近づく。
「砕けろ」
硬い声で呟くと、部屋に散っていた氷は跡形も無く砕けた。
彼は手を伸ばせば振れられるほど近くに行くと、地の底から響くような声音で言った。
「てめぇ……こんな所で何やってやがる」
その声と表情に気圧されたように僅かに身を引きながら、彼は答えた。
「……え、と……練習を」
「寝てろッて言っただろうがッ! しかも良く見りゃ怪我してるじゃねぇか!」
雷が落ちた、という表現が似合いそうな声で怒鳴り、怪我をしている手を心臓より上の位置に上げさせる。
「てめぇこの馬鹿がッ! 昨日具合悪いっつって飯も食わなかった挙句練習で怪我とかふざけんなよ!? さっさと来い!」
烈火の如く怒られ、彼はふと笑みをこぼす。
「うん……ごめんね」
思いもかけない笑顔に、彼は眉間に皺を寄せたまま視線を逸らして部屋の外へと引っ張り出した。
それが彼の照れだとわかって、彼は笑みを深くして大人しく手を引かれて行った。
「驚いてくれるかな」
「驚いてくれるよ」
「その為に、頑張ってきたんだもん」
抑えきれない笑みを交わしながら、子供たちは机の影に身を潜める。
「こら、静かにしないと駄目だよ」
「見つかっちゃうね」
口元に指を当ててまた笑う。
ふと、扉の向こうから足音が響いた。
「来た」
「来たね」
しん、と先ほどまでの笑い声を抑え、扉の向こうを伺う。
足音は扉の前までくると少しとまり、徐に扉を開いた。
入ってきたのは、白い髭を蓄え、少し腰の曲がった老人だった。
呆れたような苦笑を浮かべながら、彼は腰に手を当てて彼らを呼んだ。
「三人とも、出ておいで」
一拍おいて、子供たちがひょこりと顔を見せる。
「あんな大規模な魔法を使うなんて、何かあったらどうする気だね」
言葉は叱っているが、表情は柔らかく、声にも怒気は無い。
子供たちは僅かに身を乗り出して抗議した。
「だって、長に見せたかったんだもの!」
「そうだよ! だって今日は」
「長の……」
老人は困ったように微笑んで、両手を広げた。
それを見て、子供たちが駆け寄っていく。
「……そうか。優しい子だね。君たちは」
駆け寄った子供たちが老人にしがみつく。
「けれど。年寄りに心配かけるもんじゃないよ」
子供の一人が、そうっと顔を上げる。
「……うれしくなかった?」
不安そうな彼の顔を見て、老人はきょとんとした後に破顔した。
「そんな事はない。とても、嬉しくて誇らしかったよ」
その言葉に、不安そうだった子供たちは一斉に老人を見上げ、笑顔をこぼした。
「驚いてくれるよ」
「その為に、頑張ってきたんだもん」
抑えきれない笑みを交わしながら、子供たちは机の影に身を潜める。
「こら、静かにしないと駄目だよ」
「見つかっちゃうね」
口元に指を当ててまた笑う。
ふと、扉の向こうから足音が響いた。
「来た」
「来たね」
しん、と先ほどまでの笑い声を抑え、扉の向こうを伺う。
足音は扉の前までくると少しとまり、徐に扉を開いた。
入ってきたのは、白い髭を蓄え、少し腰の曲がった老人だった。
呆れたような苦笑を浮かべながら、彼は腰に手を当てて彼らを呼んだ。
「三人とも、出ておいで」
一拍おいて、子供たちがひょこりと顔を見せる。
「あんな大規模な魔法を使うなんて、何かあったらどうする気だね」
言葉は叱っているが、表情は柔らかく、声にも怒気は無い。
子供たちは僅かに身を乗り出して抗議した。
「だって、長に見せたかったんだもの!」
「そうだよ! だって今日は」
「長の……」
老人は困ったように微笑んで、両手を広げた。
それを見て、子供たちが駆け寄っていく。
「……そうか。優しい子だね。君たちは」
駆け寄った子供たちが老人にしがみつく。
「けれど。年寄りに心配かけるもんじゃないよ」
子供の一人が、そうっと顔を上げる。
「……うれしくなかった?」
不安そうな彼の顔を見て、老人はきょとんとした後に破顔した。
「そんな事はない。とても、嬉しくて誇らしかったよ」
その言葉に、不安そうだった子供たちは一斉に老人を見上げ、笑顔をこぼした。
「あっはは! 彼が何て言ったと思う?」
笑い声が響く。
足元の小石を蹴りつけて、少年は肩を震わせて笑っていた。
「化け物、だってさ! 言うに事欠いて!」
くすくす、と耐え切れないというように笑い転げる少年は、顔に笑顔を貼り付けたままその場でくるりと一回転した。
「僕が、化け物に見えるのかねぇ? 見た目で言うなら普通の人だろうに。あァ、それとも、僕が今此処に立っているからかな?」
言って、少年は両手を広げる。
まるで舞台に立っているように、その動作はどこか大げさだ。
示された場所は、何も無い荒野だった。
家の一軒も無い。
枯れ掛けた木が、わずかに立っているばかりの荒野。
く、と少年が再び口の端をあげる。
一歩を、踏み出す。
「まぁでも、きっと彼の言葉は間違いじゃないよね」
目の前には。
かつて町があった。
それなりに栄えた場所だった。
いろんな建物が建っていた。
いろんな人がいた。
それも。
今は跡形も無い。
たった一週間で、そこは更地になってしまった。
かつて世界の何処よりも高いとされる建物が建っていた場所に立って、少年が立ち止まった。
いつの間にか少年の顔からは笑みが消えていた。
立ち尽くしたまま、自分の両手を見下ろす。
「……僕はもう、僕が人間なんて思ってない。彼の言うとおりの、ただの化け物なんだよ……」
ぽつりと呟いた声に、笑みの響きは何処にも無い。
ただ虚ろに、それは響いた。
誰もいないこの場所に。
何も無い此処に。
「……それでも、僕は人間だと、君は言うのかな。……ディリク」
ぐ、と拳を握り締め、少年が呟く。
此処に居ない、青年の姿を思い浮かべながら。
笑い声が響く。
足元の小石を蹴りつけて、少年は肩を震わせて笑っていた。
「化け物、だってさ! 言うに事欠いて!」
くすくす、と耐え切れないというように笑い転げる少年は、顔に笑顔を貼り付けたままその場でくるりと一回転した。
「僕が、化け物に見えるのかねぇ? 見た目で言うなら普通の人だろうに。あァ、それとも、僕が今此処に立っているからかな?」
言って、少年は両手を広げる。
まるで舞台に立っているように、その動作はどこか大げさだ。
示された場所は、何も無い荒野だった。
家の一軒も無い。
枯れ掛けた木が、わずかに立っているばかりの荒野。
く、と少年が再び口の端をあげる。
一歩を、踏み出す。
「まぁでも、きっと彼の言葉は間違いじゃないよね」
目の前には。
かつて町があった。
それなりに栄えた場所だった。
いろんな建物が建っていた。
いろんな人がいた。
それも。
今は跡形も無い。
たった一週間で、そこは更地になってしまった。
かつて世界の何処よりも高いとされる建物が建っていた場所に立って、少年が立ち止まった。
いつの間にか少年の顔からは笑みが消えていた。
立ち尽くしたまま、自分の両手を見下ろす。
「……僕はもう、僕が人間なんて思ってない。彼の言うとおりの、ただの化け物なんだよ……」
ぽつりと呟いた声に、笑みの響きは何処にも無い。
ただ虚ろに、それは響いた。
誰もいないこの場所に。
何も無い此処に。
「……それでも、僕は人間だと、君は言うのかな。……ディリク」
ぐ、と拳を握り締め、少年が呟く。
此処に居ない、青年の姿を思い浮かべながら。