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「あっはは! 彼が何て言ったと思う?」

 笑い声が響く。
 足元の小石を蹴りつけて、少年は肩を震わせて笑っていた。
「化け物、だってさ! 言うに事欠いて!」
 くすくす、と耐え切れないというように笑い転げる少年は、顔に笑顔を貼り付けたままその場でくるりと一回転した。
「僕が、化け物に見えるのかねぇ? 見た目で言うなら普通の人だろうに。あァ、それとも、僕が今此処に立っているからかな?」
 言って、少年は両手を広げる。
 まるで舞台に立っているように、その動作はどこか大げさだ。

 示された場所は、何も無い荒野だった。
 家の一軒も無い。
 枯れ掛けた木が、わずかに立っているばかりの荒野。

 く、と少年が再び口の端をあげる。
 一歩を、踏み出す。

「まぁでも、きっと彼の言葉は間違いじゃないよね」

 目の前には。
 かつて町があった。
 それなりに栄えた場所だった。
 いろんな建物が建っていた。
 いろんな人がいた。

 それも。
 今は跡形も無い。
 たった一週間で、そこは更地になってしまった。

 かつて世界の何処よりも高いとされる建物が建っていた場所に立って、少年が立ち止まった。
 いつの間にか少年の顔からは笑みが消えていた。
 立ち尽くしたまま、自分の両手を見下ろす。

「……僕はもう、僕が人間なんて思ってない。彼の言うとおりの、ただの化け物なんだよ……」

 ぽつりと呟いた声に、笑みの響きは何処にも無い。
 ただ虚ろに、それは響いた。

 誰もいないこの場所に。
 何も無い此処に。

「……それでも、僕は人間だと、君は言うのかな。……ディリク」
 ぐ、と拳を握り締め、少年が呟く。
 此処に居ない、青年の姿を思い浮かべながら。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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