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何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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 視界が回る。
 否。
 回っているのは本当に俺か。
 自分の立っている場所さえ不確かで、俺はその場で踏鞴を踏んだ。

 思考がまとまらない。
 体が重い。
 何だろうこの吐き気は。

「ルベア」
 名前を呼ばれた。
 ここ何日かで随分聞きなれた声だ。
 重い目蓋を無理やりこじ開けると、目線より随分下に茶色い頭が見えた。

 獣の、顔。
「……オルカーン」
 確かめるように彼の名を呼び、背後の幹に背を預ける。
「やっぱり休んでいこう。顔色が酷く悪いよ」
 落ち着かなさげに尻尾を上下させ、オルカーンが言う。
「……問題ない」
「駄目だ。次に休めるところに行くまで体が保つかわかんないだろ?」
 きっぱりと言い、押し付けるように身体を摺り寄せる。
 その勢いに抗えず、ルベアはその場に腰を下ろした。

 立っているよりは少しマシになった視界で、オルカーンが警戒するように周囲を見回す。
「何かいるのか」
 一通り見た後で、オルカーンは首を傾げて尻尾を一度だけ振った。
「この近くには誰もいないようだよ。何かあったら起こすから、それまで寝てなよ」
 そう言って身体を押し付ける。
 ふかふかしたその手触りに、ルベアはゆっくりと意識を手放した。
 脱力した身体を視線だけで振り返って、オルカーンはこっそりとため息をつく。

 こんなになるまで無理しなくても良いだろうに。
 彼は、他人に頼ろうとはしない。
 それは知り合って程なく、気づいたことだった。

「まぁ、こういう時ぐらいは頼って欲しいけどね」
 ぽつりと呟き、背中の温かさを感じながらオルカーンも目を閉じた。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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