何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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肺に溜め込んだ息を一気に吐き出す。
走り通しだった所為か体中が熱く、重い。
息を乱しながら、近くの木にもたれかかった。
見上げると、葉の隙間から夕暮れの空がちらりと見える。
荒い呼吸が少し収まる。
がさり、と背後で音がして、体中を硬直させた。
心臓がうるさいのは、走っていたというだけではない。
「……くそっ」
小さく悪態をついて、音が出るのもかまわずそのまま全力で疾走を開始する。
背後の音はまたも葉を揺らし、けれど姿は出てこなかった。
前方に視線を戻して走る。
できる限り早く。
届かない距離まで。
背後の音が遠ざかり、迫るものがないのを確かめて視線を前に戻す。
黒い影が、揺れた。
ぎくりとして足を止め、瞬く間に広がったそれが赤い光を放っていたのを最後に、意識は闇にとけた。
-----------------------
「捕まえた?」
荷物を抱えながら、銀の髪を夕暮れで赤く染めて、レインが近づいてきた。
「あぁ。割と簡単だったな」
人相が分からないようにと被っていた黒いマントのフードを下ろし、ルベアはつまらなさそうに呟いた。
その足元に、茶色の獣が近づく。
「まぁいいんじゃないか? これなら夜になる前に町に戻れるよ」
オルカーンの言葉にため息で応え、ルベアは脱力した男の体を肩に担いだ。
今日の依頼は脱獄犯の確保。
脱走してすぐだったことと、オルカーンがいたのでかなり楽だった。
「じゃあ早く戻ろう!」
疲れた、という表情のレインに、オルカーンが尻尾で応えた。
走り通しだった所為か体中が熱く、重い。
息を乱しながら、近くの木にもたれかかった。
見上げると、葉の隙間から夕暮れの空がちらりと見える。
荒い呼吸が少し収まる。
がさり、と背後で音がして、体中を硬直させた。
心臓がうるさいのは、走っていたというだけではない。
「……くそっ」
小さく悪態をついて、音が出るのもかまわずそのまま全力で疾走を開始する。
背後の音はまたも葉を揺らし、けれど姿は出てこなかった。
前方に視線を戻して走る。
できる限り早く。
届かない距離まで。
背後の音が遠ざかり、迫るものがないのを確かめて視線を前に戻す。
黒い影が、揺れた。
ぎくりとして足を止め、瞬く間に広がったそれが赤い光を放っていたのを最後に、意識は闇にとけた。
-----------------------
「捕まえた?」
荷物を抱えながら、銀の髪を夕暮れで赤く染めて、レインが近づいてきた。
「あぁ。割と簡単だったな」
人相が分からないようにと被っていた黒いマントのフードを下ろし、ルベアはつまらなさそうに呟いた。
その足元に、茶色の獣が近づく。
「まぁいいんじゃないか? これなら夜になる前に町に戻れるよ」
オルカーンの言葉にため息で応え、ルベアは脱力した男の体を肩に担いだ。
今日の依頼は脱獄犯の確保。
脱走してすぐだったことと、オルカーンがいたのでかなり楽だった。
「じゃあ早く戻ろう!」
疲れた、という表情のレインに、オルカーンが尻尾で応えた。
意識が、不意に遠ざかる。
「寝るな」
途端、見透かしていたかのように叱責が飛んだ。
苦痛はもはや慣れてしまった。
痛みはもう遠い。
此処で意識を失えば、きっともう二度と目を覚まさないだろうという予感はあった。
震えるまぶたを押し開ける。
決して明るくは無い室内の、見慣れた天井がぼんやりと見えた。
何度か瞬きをして、視界をはっきりさせる。
傍らに、一人座っていた。
憮然とした表情。
けれどその表情が、自分を心配しているのだと分かるほどには、長く過ごしていた。
呼吸が苦しい。
息をするのさえ酷くつらい。
「……ちゃんと、呼吸をしろ」
眉間にしわを寄せて言われ、微かに笑う。
笑うと少し胸が痛かったが、かまわなかった。
ゆっくりと呼吸を繰り返しながら、視線で部屋を見回す。
「……ルシェイドなら、今は席を外している」
それだけで見当をつけたのか、問う前に答えが返ってきた。
それに瞬きで応え、目を閉じた。
酷く、静かだった。
全身の感覚が鈍くなっている所為か、先ほどよりも痛みが少ないのがありがたかった。
「リーヴァセウス」
何処か切迫したような声に、目を開ける。
「……ライナート……」
吐息に乗せて、囁く。
声は酷くかすれて、聞き取りにくかった。
手を伸ばせば、すぐに握り締められる。
温かいそれに、全身に入っていた力が抜けた。
「……ありがとう」
ちゃんと、聞こえただろうか。
返事を聞く前に、視界が暗くなった。
誰かが叫んでいる声がする。
けれどもう、遠い。
ゆっくりと浸るように、意識は闇に飲み込まれていった。
「寝るな」
途端、見透かしていたかのように叱責が飛んだ。
苦痛はもはや慣れてしまった。
痛みはもう遠い。
此処で意識を失えば、きっともう二度と目を覚まさないだろうという予感はあった。
震えるまぶたを押し開ける。
決して明るくは無い室内の、見慣れた天井がぼんやりと見えた。
何度か瞬きをして、視界をはっきりさせる。
傍らに、一人座っていた。
憮然とした表情。
けれどその表情が、自分を心配しているのだと分かるほどには、長く過ごしていた。
呼吸が苦しい。
息をするのさえ酷くつらい。
「……ちゃんと、呼吸をしろ」
眉間にしわを寄せて言われ、微かに笑う。
笑うと少し胸が痛かったが、かまわなかった。
ゆっくりと呼吸を繰り返しながら、視線で部屋を見回す。
「……ルシェイドなら、今は席を外している」
それだけで見当をつけたのか、問う前に答えが返ってきた。
それに瞬きで応え、目を閉じた。
酷く、静かだった。
全身の感覚が鈍くなっている所為か、先ほどよりも痛みが少ないのがありがたかった。
「リーヴァセウス」
何処か切迫したような声に、目を開ける。
「……ライナート……」
吐息に乗せて、囁く。
声は酷くかすれて、聞き取りにくかった。
手を伸ばせば、すぐに握り締められる。
温かいそれに、全身に入っていた力が抜けた。
「……ありがとう」
ちゃんと、聞こえただろうか。
返事を聞く前に、視界が暗くなった。
誰かが叫んでいる声がする。
けれどもう、遠い。
ゆっくりと浸るように、意識は闇に飲み込まれていった。
頬を風が撫でていく。
目の前に広がる空は青く、視界の淵にすら大地の姿は見えなかった。
けれど少し視線をずらせば風にそよぐ草が見える。
体の下の柔らかな草の感触を楽しみながら、肺から息を吐き出した。
「……こんなところに居たのか」
何処か疲れた声が、頭の上の方から聞こえた。
起き上がらずに、視線だけ向ける。
全身が薄汚れた男が立っていた。
自分も似たようなものだろうな、と目を細める。
「どうしたの、イーゼ」
寝転がった姿勢のまま動きもせずに呟く。
イーゼは彼の隣に腰を下ろすと、大きくため息を吐いた。
「……お前は、行かなくていいのか」
視線を前に向けて、イーゼが問う。
それには答えず、目を閉じた。
視界を遮れば、風が流れていくのがわかる。
しばらくのあと、ぽつりと言った。
「俺が行っても仕方ないでしょ」
「お前が、率いてきた隊だろう。ルース」
イーゼが来た方角からは、歓声が聞こえている。
生き残った、村人の。
「……やっぱり、性に合わないなぁ。あーいうのは、俺は嫌だよ」
呟く声は静かで、平坦だった。
けれどそういう話し方をする時の彼が落ち込んでいるのだと分かるほどには、イーゼもルースとの付き合いは長かった。
鎧にも服にも靴にも、赤黒い汚れがついている。
眠っているかのように目を閉じて動かないルースに一瞥を投げて、イーゼは立ち上がった。
「……落ち着いたら戻って来いよ」
言い置いて、彼はもと来た道を引き返した。
また一人になった。
ルースは半身を起こすと、視線を地面に落とした。
体を支える為についた手には、赤い汚れがついている。
爪の間にも入り込んでいるので、洗うのが大変だろう。
むせ返るようだった臭いは、風があらかた流してくれていた。
立ち上がって眼下を見下ろす。
イーゼが去ったのと反対方向には、凄惨な死体が山となっていた。
目の前に広がる空は青く、視界の淵にすら大地の姿は見えなかった。
けれど少し視線をずらせば風にそよぐ草が見える。
体の下の柔らかな草の感触を楽しみながら、肺から息を吐き出した。
「……こんなところに居たのか」
何処か疲れた声が、頭の上の方から聞こえた。
起き上がらずに、視線だけ向ける。
全身が薄汚れた男が立っていた。
自分も似たようなものだろうな、と目を細める。
「どうしたの、イーゼ」
寝転がった姿勢のまま動きもせずに呟く。
イーゼは彼の隣に腰を下ろすと、大きくため息を吐いた。
「……お前は、行かなくていいのか」
視線を前に向けて、イーゼが問う。
それには答えず、目を閉じた。
視界を遮れば、風が流れていくのがわかる。
しばらくのあと、ぽつりと言った。
「俺が行っても仕方ないでしょ」
「お前が、率いてきた隊だろう。ルース」
イーゼが来た方角からは、歓声が聞こえている。
生き残った、村人の。
「……やっぱり、性に合わないなぁ。あーいうのは、俺は嫌だよ」
呟く声は静かで、平坦だった。
けれどそういう話し方をする時の彼が落ち込んでいるのだと分かるほどには、イーゼもルースとの付き合いは長かった。
鎧にも服にも靴にも、赤黒い汚れがついている。
眠っているかのように目を閉じて動かないルースに一瞥を投げて、イーゼは立ち上がった。
「……落ち着いたら戻って来いよ」
言い置いて、彼はもと来た道を引き返した。
また一人になった。
ルースは半身を起こすと、視線を地面に落とした。
体を支える為についた手には、赤い汚れがついている。
爪の間にも入り込んでいるので、洗うのが大変だろう。
むせ返るようだった臭いは、風があらかた流してくれていた。
立ち上がって眼下を見下ろす。
イーゼが去ったのと反対方向には、凄惨な死体が山となっていた。
久しぶりに一番最初の頃のを読み返してみた。
…軽く10年くらい前、か?
いやもう少し前かな。
彼の方の昔書いた文章は赤黒い感じだったけど、最近のはほとんどなくなったので電車とかだと読みやすい感じ。
4年ぶりとかで医師の本出てて衝動買いしたくらいにはまだ好きですよこのシリーズ。