何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ぱたぱた、と軽い足音が響く。
人気の無い早朝に、短剣だけ腰帯につけて廊下を走っている。
急いでいる様子は見受けられない。
やがて目的地に到達すると、彼は首をかしげながら目の前の扉を叩いた。
返事を待たずに扉を開ける。
部屋に一歩踏み込んだ途端、飛んできたものを片手で受け取った。
手に取ったそれを見ると、腕の長さほどの定規だった。
「危ないなぁ」
ポツリと呟いて奥へ進む。
「勝手に入ってきて偉そうなこと言うな」
部屋の主は憮然とした表情で片手を差し出す。
その上に定規を置きながら、彼は机の上を覗き込んだ。
「また徹夜?」
「おう。誰かさんが出掛けたきり戻ってこないから仕方なくな」
「出掛けるって言っておいたじゃないか」
「日にちをまたぐならそれも言っておけ」
むぅ、とむくれて手近な椅子に腰を下ろす。
「あ、これお土産」
思い出したように言って、何かを投げてよこした。
「……何だこれ。羽?」
「うん。今、それいっぱい手に入るから」
と言いかけたところで、虚空から声が響いた。
「……それ、何処から持ってきたの」
声のする方に顔を向けると、青緑の髪の青年が立っていた。
笑顔のはずなのに、空気が重い。
「ルシェイド。……ってことは、お前……まさか」
羽を片手に持ったまま胡乱な視線を向けると、彼は笑顔で視線をそらした。
「ルース……勝手に持ってくるなって何度も言ってるよね? いい加減覚えてくれないかなぁ」
にこりと笑いながら、彼に詰め寄る。
呆れたようにため息を吐いて、羽をルシェイドに渡す。
それを見てルースが残念そうな声を上げた。
「折角持ってきたのにー」
「もらってどうしろっていうんだ」
「そもそも持ってくるなって言ったはずだよ」
二人から責められて、はーい、と拗ねたように返事をする。
「……分かってなさそうだな」
「……何回言っても無駄な気がしてきたよ」
二人がげんなりと視線を交わす。
「まぁでも土産と称して渡すのは主に君だけみたいだし、僕としては楽なんだけど」
「それもどうよ」
人気の無い早朝に、短剣だけ腰帯につけて廊下を走っている。
急いでいる様子は見受けられない。
やがて目的地に到達すると、彼は首をかしげながら目の前の扉を叩いた。
返事を待たずに扉を開ける。
部屋に一歩踏み込んだ途端、飛んできたものを片手で受け取った。
手に取ったそれを見ると、腕の長さほどの定規だった。
「危ないなぁ」
ポツリと呟いて奥へ進む。
「勝手に入ってきて偉そうなこと言うな」
部屋の主は憮然とした表情で片手を差し出す。
その上に定規を置きながら、彼は机の上を覗き込んだ。
「また徹夜?」
「おう。誰かさんが出掛けたきり戻ってこないから仕方なくな」
「出掛けるって言っておいたじゃないか」
「日にちをまたぐならそれも言っておけ」
むぅ、とむくれて手近な椅子に腰を下ろす。
「あ、これお土産」
思い出したように言って、何かを投げてよこした。
「……何だこれ。羽?」
「うん。今、それいっぱい手に入るから」
と言いかけたところで、虚空から声が響いた。
「……それ、何処から持ってきたの」
声のする方に顔を向けると、青緑の髪の青年が立っていた。
笑顔のはずなのに、空気が重い。
「ルシェイド。……ってことは、お前……まさか」
羽を片手に持ったまま胡乱な視線を向けると、彼は笑顔で視線をそらした。
「ルース……勝手に持ってくるなって何度も言ってるよね? いい加減覚えてくれないかなぁ」
にこりと笑いながら、彼に詰め寄る。
呆れたようにため息を吐いて、羽をルシェイドに渡す。
それを見てルースが残念そうな声を上げた。
「折角持ってきたのにー」
「もらってどうしろっていうんだ」
「そもそも持ってくるなって言ったはずだよ」
二人から責められて、はーい、と拗ねたように返事をする。
「……分かってなさそうだな」
「……何回言っても無駄な気がしてきたよ」
二人がげんなりと視線を交わす。
「まぁでも土産と称して渡すのは主に君だけみたいだし、僕としては楽なんだけど」
「それもどうよ」
髪形を変えてみたり。
…色塗り楽しい。
でも構図考えるのめんどい(コラ
「アタシと結婚してくれませんか」
特に何の変哲も無い、いつもの日常はそんな一言で破られた。
踏青も薄氷も島を出て数ヶ月、ようやく残った者も落ち着いてきたところだった。
「私らが居るのを忘れてないか?」
いつものように厳しい声で、けれど少し呆れた色も混ぜて、冬杣が声を掛ける。
「忘れちゃいませんヨ。でも、言うなら今がいいかと思いまして」
にこりと、糸目の彼が笑う。
肩をすくめて冬杣がこちらを振り返る。
「……東旭、固まってないで何とかしな」
「うぇっ!?」
あまりにも驚きすぎて変な声が出てしまった。
いつもいつも頭領なのに子ども扱いされて怒ったりはしたけど、こんなのは初めてだ。
何かするにもどう反応して良いかわからない。
困ったように目じりを下げて、事の元凶である酒星が東旭の頭を撫でた。
「まァ、返事は急ぎませんヨ。のんびり待ちますから、考えて置いてください」
笑顔のまま、それじゃあ、と片手を上げて酒星はくるりと背を向けて浜の方に歩いて行ってしまった。
残された彼らは作業の手を止め、歩み去る酒星と東旭を交互に見ている。
「ど」
固まっていた東旭は勢い良く冬杣へと振り返った。
「どうしよう!?」
「知らん」
半眼で一蹴された。
「そんなこと言わずに!」
食い下がると、嫌そうな顔をして顎をしゃくった。
「そういうのは当事者の問題だ。私が口を出すのは筋違いってもんだよ」
「だってあたしあんなこと言われたことないよー!」
パニックになって頭を抱える東旭を、周りの者は温かい目で見守っていた。
特に何の変哲も無い、いつもの日常はそんな一言で破られた。
踏青も薄氷も島を出て数ヶ月、ようやく残った者も落ち着いてきたところだった。
「私らが居るのを忘れてないか?」
いつものように厳しい声で、けれど少し呆れた色も混ぜて、冬杣が声を掛ける。
「忘れちゃいませんヨ。でも、言うなら今がいいかと思いまして」
にこりと、糸目の彼が笑う。
肩をすくめて冬杣がこちらを振り返る。
「……東旭、固まってないで何とかしな」
「うぇっ!?」
あまりにも驚きすぎて変な声が出てしまった。
いつもいつも頭領なのに子ども扱いされて怒ったりはしたけど、こんなのは初めてだ。
何かするにもどう反応して良いかわからない。
困ったように目じりを下げて、事の元凶である酒星が東旭の頭を撫でた。
「まァ、返事は急ぎませんヨ。のんびり待ちますから、考えて置いてください」
笑顔のまま、それじゃあ、と片手を上げて酒星はくるりと背を向けて浜の方に歩いて行ってしまった。
残された彼らは作業の手を止め、歩み去る酒星と東旭を交互に見ている。
「ど」
固まっていた東旭は勢い良く冬杣へと振り返った。
「どうしよう!?」
「知らん」
半眼で一蹴された。
「そんなこと言わずに!」
食い下がると、嫌そうな顔をして顎をしゃくった。
「そういうのは当事者の問題だ。私が口を出すのは筋違いってもんだよ」
「だってあたしあんなこと言われたことないよー!」
パニックになって頭を抱える東旭を、周りの者は温かい目で見守っていた。
それは、酷く哀しげに鳴いた。
緑の深い地にありながら、森の木々など見たこともなかった。
目に映るそれは全て石造りの壁で、他の者からは恐れをこめて「南の施設」と呼ばれていた。
当時はそんな風に呼ばれていることも知らなかったし、何より会話は無かった。
ただ冷たい無機質な檻の中、時折運ばれて来るモノ達の泣き声と、意味を持たない呻き声しかその中には無かったからだ。
同じような姿をしたモノが日増しに増え、そして減っていくのを眺めながら、ぼんやりと自分に疑問を持ったのはその時からだった。
俺は何をしているんだろう。
何故此処にいるんだろう。
疑問はぶつける相手もいないまま、自分の中でくすぶっていた。
自分たちを減らしていくのは、黒々とした不定形のモノだった。
意思すら持たないようなもやに捕まって、何処かへ引きずられていく。
引きずられていく者達は僅かな抵抗を見せるが、何故かすぐに大人しくなってしまう。
知識は、何故かあった。
アレが、自分達を作り変えていくモノだと。
自分と同じ形のモノ達と一つの檻で、彼は端に寄って格子にもたれかかった。
「なぁ」
不意に、声が響いたのはそのときだ。
言葉、なんてこの檻で聞いたことなんてなかったから、実際酷く驚いた。
目を開けて見回すと、皆が頭を垂れて伏せている中、こちらを見据える目にぶつかった。
黒い毛並み、鮮やかな緑の目。
見た目は、普通の犬と変わらない。
少し大きいだけだ。
それが、目に意思の光を宿して自分を見ている。
僅かに首を傾げると、そいつは近くによって来て小声で囁いた。
「あんたは、此処に長いのか?」
艶やかな毛並みは見覚えが無かったので、最近来たばかりなのだと思われた。
「……そうだよ」
少し億劫そうに答えると、けれど彼は嬉しそうに尻尾を振った。
「良かった。此処の奴らみんな話通じないからさ。どうしようかと思ってたんだ」
ほんの少し呆れた視線を向け、嬉しそうに振られる尻尾をはたく。
「それは、本来意思が無いはずの獣だからだろ?」
「それじゃ、何で俺達はこうやって話せるんだ?」
「知らないよ。不良品なんじゃない?」
めんどくさそうに答えるが、彼は気を悪くすることもなくそうか、と言った。
「なぁ、俺はアレンって言うんだ。お前は?」
「俺は――」
言いかけて、とまる。
名前、なんてあっただろうか。
「わからないな」
首を傾げて答える。
黒い獣、アレンは驚いたようにぽかんとしてこちらを見ていた。
「……なんだよ」
視線に居た堪れなくなって言うと、アレンはぱっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。
「じゃあ俺がつけてやる!」
「は?」
予想外の返答に、思わず間の抜けた声を上げてしまう。
アレンはうーんと唸って、視線をあちこちにやったり尻尾を振ったりしている。
じっとこっちの顔を凝視していたかと思うと、唐突に声を上げた。
「オルカーンにしよう!」
「……え」
「気に入らない? うーん」
「……いや。……良いよ、それで……」
構わずにマイペースに進めるアレンに根負けして、彼はがくりと肩を落としながら呟いた。
「よし、じゃあオルカーン。……よろしくな」
改めて彼に笑むアレンに、自然と苦笑が漏れる。
「……あぁ」
緑の深い地にありながら、森の木々など見たこともなかった。
目に映るそれは全て石造りの壁で、他の者からは恐れをこめて「南の施設」と呼ばれていた。
当時はそんな風に呼ばれていることも知らなかったし、何より会話は無かった。
ただ冷たい無機質な檻の中、時折運ばれて来るモノ達の泣き声と、意味を持たない呻き声しかその中には無かったからだ。
同じような姿をしたモノが日増しに増え、そして減っていくのを眺めながら、ぼんやりと自分に疑問を持ったのはその時からだった。
俺は何をしているんだろう。
何故此処にいるんだろう。
疑問はぶつける相手もいないまま、自分の中でくすぶっていた。
自分たちを減らしていくのは、黒々とした不定形のモノだった。
意思すら持たないようなもやに捕まって、何処かへ引きずられていく。
引きずられていく者達は僅かな抵抗を見せるが、何故かすぐに大人しくなってしまう。
知識は、何故かあった。
アレが、自分達を作り変えていくモノだと。
自分と同じ形のモノ達と一つの檻で、彼は端に寄って格子にもたれかかった。
「なぁ」
不意に、声が響いたのはそのときだ。
言葉、なんてこの檻で聞いたことなんてなかったから、実際酷く驚いた。
目を開けて見回すと、皆が頭を垂れて伏せている中、こちらを見据える目にぶつかった。
黒い毛並み、鮮やかな緑の目。
見た目は、普通の犬と変わらない。
少し大きいだけだ。
それが、目に意思の光を宿して自分を見ている。
僅かに首を傾げると、そいつは近くによって来て小声で囁いた。
「あんたは、此処に長いのか?」
艶やかな毛並みは見覚えが無かったので、最近来たばかりなのだと思われた。
「……そうだよ」
少し億劫そうに答えると、けれど彼は嬉しそうに尻尾を振った。
「良かった。此処の奴らみんな話通じないからさ。どうしようかと思ってたんだ」
ほんの少し呆れた視線を向け、嬉しそうに振られる尻尾をはたく。
「それは、本来意思が無いはずの獣だからだろ?」
「それじゃ、何で俺達はこうやって話せるんだ?」
「知らないよ。不良品なんじゃない?」
めんどくさそうに答えるが、彼は気を悪くすることもなくそうか、と言った。
「なぁ、俺はアレンって言うんだ。お前は?」
「俺は――」
言いかけて、とまる。
名前、なんてあっただろうか。
「わからないな」
首を傾げて答える。
黒い獣、アレンは驚いたようにぽかんとしてこちらを見ていた。
「……なんだよ」
視線に居た堪れなくなって言うと、アレンはぱっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。
「じゃあ俺がつけてやる!」
「は?」
予想外の返答に、思わず間の抜けた声を上げてしまう。
アレンはうーんと唸って、視線をあちこちにやったり尻尾を振ったりしている。
じっとこっちの顔を凝視していたかと思うと、唐突に声を上げた。
「オルカーンにしよう!」
「……え」
「気に入らない? うーん」
「……いや。……良いよ、それで……」
構わずにマイペースに進めるアレンに根負けして、彼はがくりと肩を落としながら呟いた。
「よし、じゃあオルカーン。……よろしくな」
改めて彼に笑むアレンに、自然と苦笑が漏れる。
「……あぁ」