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ずるり、と皮膚が爛れ落ちる。
腕から、足から、身体から。
皮膚が溶け落ちていく。
留めようとした腕が肩から外れ、自らの溶けた肉の上に落ちた。
痛いのか、辛いのか。
感情が現実に追いつかない。
悲鳴は喉を震わせ、けれど耳には聞こえなかった。
確かめる腕は動かない。
塞がれてなければ、聞こえるはずなのに。
霞み始めた視界の端に何かが見えて、顔を上げる。
がくりと膝が折れた。
揺れる視界に、それを写す。
見慣れすぎた姿が、其処に倒れていた。
原型が崩れたそれを彼が判ったのは直感だ。
それは彼の半身。
三人のうちの一人。
例え血に塗れていたとしても、見間違うことなどできるわけが無い。
一目で、息が無いと知れた。
微動だにせず、彼は人形のように転がっている。
「嘘だ……」
愕然と声が漏れる。
声が聞こえていることも、身体が朽ちていくことも、もはやどうでも良かった。
ただ目の前の光景を否定したかった。
信じられるわけが無い。
どうして、こんな。
「嘘だ……!」
激しい呼吸の音が聞こえる。
自分の、呼吸の音だ。
酷く耳障りなそれを聞きながら、ゆっくりと身体を起こす。
震える腕で身体をかき抱き、そこではじめて腕が無事なことに気づく。
「……ウェル」
囁きは掠れて、自分でも殆ど聞き取れない。
震える腕でシーツを掴む。
届かない。
こんな、声では。
「ウェル! ラナッ!!」
まだ掠れてはいたが、思い切り声を出した。
部屋の外に聞こえるほどの大声ではなかったけれど。
「どうした!?」
ばたんと大きな音を立てて、それぞれが扉から顔を出した。
彼らは不安そうな、心配そうな面持ちで傍らまで急いでやってくる。
同じ顔の二人が手を伸ばす。
縋るようにその手を掴み、彼は俯く。
宥めるように背を撫でられる。
その感触に気分が落ち着いていくのを感じながら、彼は深く息を吐いて目を閉じた。
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二人が傍らで眠っている。
無理を言って一緒に寝てもらったのは自分だ。
深く息をする。
いつか来る未来。
あんなものは、見たくない。
それが夢であろうと。
二人の寝顔を見ながら、全力で阻止をしようと彼は心に固く誓った。