何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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それは、酷く哀しげに鳴いた。
緑の深い地にありながら、森の木々など見たこともなかった。
目に映るそれは全て石造りの壁で、他の者からは恐れをこめて「南の施設」と呼ばれていた。
当時はそんな風に呼ばれていることも知らなかったし、何より会話は無かった。
ただ冷たい無機質な檻の中、時折運ばれて来るモノ達の泣き声と、意味を持たない呻き声しかその中には無かったからだ。
同じような姿をしたモノが日増しに増え、そして減っていくのを眺めながら、ぼんやりと自分に疑問を持ったのはその時からだった。
俺は何をしているんだろう。
何故此処にいるんだろう。
疑問はぶつける相手もいないまま、自分の中でくすぶっていた。
自分たちを減らしていくのは、黒々とした不定形のモノだった。
意思すら持たないようなもやに捕まって、何処かへ引きずられていく。
引きずられていく者達は僅かな抵抗を見せるが、何故かすぐに大人しくなってしまう。
知識は、何故かあった。
アレが、自分達を作り変えていくモノだと。
自分と同じ形のモノ達と一つの檻で、彼は端に寄って格子にもたれかかった。
「なぁ」
不意に、声が響いたのはそのときだ。
言葉、なんてこの檻で聞いたことなんてなかったから、実際酷く驚いた。
目を開けて見回すと、皆が頭を垂れて伏せている中、こちらを見据える目にぶつかった。
黒い毛並み、鮮やかな緑の目。
見た目は、普通の犬と変わらない。
少し大きいだけだ。
それが、目に意思の光を宿して自分を見ている。
僅かに首を傾げると、そいつは近くによって来て小声で囁いた。
「あんたは、此処に長いのか?」
艶やかな毛並みは見覚えが無かったので、最近来たばかりなのだと思われた。
「……そうだよ」
少し億劫そうに答えると、けれど彼は嬉しそうに尻尾を振った。
「良かった。此処の奴らみんな話通じないからさ。どうしようかと思ってたんだ」
ほんの少し呆れた視線を向け、嬉しそうに振られる尻尾をはたく。
「それは、本来意思が無いはずの獣だからだろ?」
「それじゃ、何で俺達はこうやって話せるんだ?」
「知らないよ。不良品なんじゃない?」
めんどくさそうに答えるが、彼は気を悪くすることもなくそうか、と言った。
「なぁ、俺はアレンって言うんだ。お前は?」
「俺は――」
言いかけて、とまる。
名前、なんてあっただろうか。
「わからないな」
首を傾げて答える。
黒い獣、アレンは驚いたようにぽかんとしてこちらを見ていた。
「……なんだよ」
視線に居た堪れなくなって言うと、アレンはぱっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。
「じゃあ俺がつけてやる!」
「は?」
予想外の返答に、思わず間の抜けた声を上げてしまう。
アレンはうーんと唸って、視線をあちこちにやったり尻尾を振ったりしている。
じっとこっちの顔を凝視していたかと思うと、唐突に声を上げた。
「オルカーンにしよう!」
「……え」
「気に入らない? うーん」
「……いや。……良いよ、それで……」
構わずにマイペースに進めるアレンに根負けして、彼はがくりと肩を落としながら呟いた。
「よし、じゃあオルカーン。……よろしくな」
改めて彼に笑むアレンに、自然と苦笑が漏れる。
「……あぁ」
緑の深い地にありながら、森の木々など見たこともなかった。
目に映るそれは全て石造りの壁で、他の者からは恐れをこめて「南の施設」と呼ばれていた。
当時はそんな風に呼ばれていることも知らなかったし、何より会話は無かった。
ただ冷たい無機質な檻の中、時折運ばれて来るモノ達の泣き声と、意味を持たない呻き声しかその中には無かったからだ。
同じような姿をしたモノが日増しに増え、そして減っていくのを眺めながら、ぼんやりと自分に疑問を持ったのはその時からだった。
俺は何をしているんだろう。
何故此処にいるんだろう。
疑問はぶつける相手もいないまま、自分の中でくすぶっていた。
自分たちを減らしていくのは、黒々とした不定形のモノだった。
意思すら持たないようなもやに捕まって、何処かへ引きずられていく。
引きずられていく者達は僅かな抵抗を見せるが、何故かすぐに大人しくなってしまう。
知識は、何故かあった。
アレが、自分達を作り変えていくモノだと。
自分と同じ形のモノ達と一つの檻で、彼は端に寄って格子にもたれかかった。
「なぁ」
不意に、声が響いたのはそのときだ。
言葉、なんてこの檻で聞いたことなんてなかったから、実際酷く驚いた。
目を開けて見回すと、皆が頭を垂れて伏せている中、こちらを見据える目にぶつかった。
黒い毛並み、鮮やかな緑の目。
見た目は、普通の犬と変わらない。
少し大きいだけだ。
それが、目に意思の光を宿して自分を見ている。
僅かに首を傾げると、そいつは近くによって来て小声で囁いた。
「あんたは、此処に長いのか?」
艶やかな毛並みは見覚えが無かったので、最近来たばかりなのだと思われた。
「……そうだよ」
少し億劫そうに答えると、けれど彼は嬉しそうに尻尾を振った。
「良かった。此処の奴らみんな話通じないからさ。どうしようかと思ってたんだ」
ほんの少し呆れた視線を向け、嬉しそうに振られる尻尾をはたく。
「それは、本来意思が無いはずの獣だからだろ?」
「それじゃ、何で俺達はこうやって話せるんだ?」
「知らないよ。不良品なんじゃない?」
めんどくさそうに答えるが、彼は気を悪くすることもなくそうか、と言った。
「なぁ、俺はアレンって言うんだ。お前は?」
「俺は――」
言いかけて、とまる。
名前、なんてあっただろうか。
「わからないな」
首を傾げて答える。
黒い獣、アレンは驚いたようにぽかんとしてこちらを見ていた。
「……なんだよ」
視線に居た堪れなくなって言うと、アレンはぱっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。
「じゃあ俺がつけてやる!」
「は?」
予想外の返答に、思わず間の抜けた声を上げてしまう。
アレンはうーんと唸って、視線をあちこちにやったり尻尾を振ったりしている。
じっとこっちの顔を凝視していたかと思うと、唐突に声を上げた。
「オルカーンにしよう!」
「……え」
「気に入らない? うーん」
「……いや。……良いよ、それで……」
構わずにマイペースに進めるアレンに根負けして、彼はがくりと肩を落としながら呟いた。
「よし、じゃあオルカーン。……よろしくな」
改めて彼に笑むアレンに、自然と苦笑が漏れる。
「……あぁ」
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