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 彼女は花のように笑った。
 目を閉じたその寝顔を眺めながら、彼は手を取る。
 小さな、白い手。
 少しやつれた頬も白い。

 するりとした感触のその手をゆっくりと撫でていると、彼女は僅かに身じろぎをして目を開いた。
「起きた?」
 いつもと同じように、と微笑むと、彼女は僅かに目を細めて細く息を吐いた。
「……夢を、見てた……」
「楽しい夢?」

 儚い声に、囁くような声で問うと、彼女は一旦目を閉じて言った。
「……そう、ね……。楽しかったわ。皆で、草原へ遊びに行くの。空は晴れてて、皆笑顔で……」
「お弁当持って?」
 彼女は嬉しそうに微笑んで、視線を彼に向けた。
「ええ。張り切って作っちゃうもの」
「それは楽しみだな」
 くすくすと二人で笑いあう。

 ふ、と彼女の視線が遠くなる。
「行きたいわね……」
「行けるさ。……行こう、皆で」
 握った手に少し力を入れて、彼が言う。

 込められたのは切実な願い。

 きょとんと目を開いた後、彼女は彼の顔を見て笑った。
 彼の一番好きな笑顔で。

-------------

 一つの墓の前で彼は、項垂れたまま立ち尽くしていた。
 小さな子供が、不思議そうに彼を見上げる。

「かあさまは?」
 問いかける子供に答えられず、彼は膝を突くと子供を抱きしめた。
 強く抱きしめる身体が、微かに震えている。
「とうさま、ないてるの?」
 抱きしめられた子供は首を傾げて、自分を抱きしめる彼に小さな腕を回した。

「なかないで、とうさま」
 子供は彼の服を握り締め、肩口に顔を埋めた。

 ごめん、と彼が囁く。
 約束を守れなかった。
 一緒に行こうといったのに。
 行けると言ったのに。
 彼女はもう二度と、彼らに会うことはできないのだ。

 抑えきれない嗚咽を宥めるように、子供が背を撫でた。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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