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 伸ばした手は届くはずだった。
 力があれば守ってやれると思ってた。
 だからずっと傍に居たし、これからも居るつもりでいた。
 それがこんな形で失われるとは思ってもいなかった。
 もっと長くいられると、思っていたのに。

 足元に転がった彼はもうピクリとも動かない。
 虚ろに開いたままだった目を閉じさせたら、まるで眠ってるかのようだった。
(よくも)
 胸にどす黒い感情が膨れ上がる。
(よくも、彼を)
 けれど、それをぶつけるべき敵はすでに全滅させてしまった。
 自分にもう少し力があったら。
 次代が見つかっていなかったら。
 とめどなく思考が空転する。
 ぎり、と歯を食いしばる。
(彼がいないなら)
(世界ごと滅ぼそうか)
 それはとても良い考えに思えた。
 だってもう、世界は自分にとって意味がない。
 滅ぼしたところで、反動があるわけでもないのだ。

「アルファル!」

 まさに力を集めようとしていた瞬間に名を呼ばれ、瞬きをする。
 心配そうな顔をして、青年が駆け寄ってきた。
(次代……。彼が、いなければ――)
 暗い、ぼんやりとした思考は腕を掴まれる感触で払われた。
「行こう。此処はもう落ちる」
 気遣わしげな声に、ため息を吐いた。
「……そうですね。行きましょう」
 くるりと踵を返す。
 暫く歩いて、足音が付いてこないことに気づいて振り返る。
「……何を、してるんです?」
「連れて、行こうと思って。残していきたくはない」
 もう動かない死体を抱えて、彼が答える。
「何処へ」
 息が詰まって上手く発音できない。
 けれど彼にはわかったようで、顔をあげるとさみしそうに微笑んだ。
「家に」
 あの日の当たる場所に。
「あぁ……そうですね」
 ゆっくりと息を吐き、運ぶのを手伝おうと手を伸ばした。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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