何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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土を踏むかすかな音に顔をあげる。
この洞窟に近づく者は滅多にいない。
その、珍しい音。
迷い込んだにしては足音は一定だ。
そしてかすかに鼻に付く臭い。
音も立てずに立ち上がると、足音の方へと進む。
足音が近づいたところで、小さな石をひとつ、放り投げた。
からん、と乾いた音が洞内に木霊する。
足音はぴたりと止まり、次いで声が聞こえた。
「白雨」
自身に呼びかけるその声に、肩の力を抜いて姿を現す。
わずかに気配が動き、足音がはっきりとこちらへ向かってきた。
「足音を立てるなんて珍しいね。氷雨」
すぐ近くで、足音が止まる。
ツンと鼻に付く臭いが、彼から漂ってきているのは確実だ。
錆を含んだ、鉄の臭い。
けれど、怪我をしている様子はない。
彼は一言も発さず、頬に手を伸ばして触れた。
輪郭を確かめるようなその動きに、怪訝そうに眉を寄せる。
触れていた手が目蓋に達したとき、自らの意思に反して肩がぴくりと震えた。
氷雨が今触れている目蓋の下に、眼球はない。
「白雨」
再度の呼びかけに、吐息で応える。
「お前の、目ェ盗ったって吹聴してた輩がいたから、同じ目にあわせて来たんだ……」
触れている手が、かすかに震えている。
氷雨にこの暗がりは見通せない。
それを承知で、白雨は微笑んだ。
「……馬鹿だな。お前が、傷を負うことはないのに」
「傷じゃァ、ねェよ」
目蓋に触れていた手を頬に移し、氷雨が呟く。
自分にはもう光が見えない。
けれど。
微笑んだまま、白雨は頬の手に自分の手を添えた。
この洞窟に近づく者は滅多にいない。
その、珍しい音。
迷い込んだにしては足音は一定だ。
そしてかすかに鼻に付く臭い。
音も立てずに立ち上がると、足音の方へと進む。
足音が近づいたところで、小さな石をひとつ、放り投げた。
からん、と乾いた音が洞内に木霊する。
足音はぴたりと止まり、次いで声が聞こえた。
「白雨」
自身に呼びかけるその声に、肩の力を抜いて姿を現す。
わずかに気配が動き、足音がはっきりとこちらへ向かってきた。
「足音を立てるなんて珍しいね。氷雨」
すぐ近くで、足音が止まる。
ツンと鼻に付く臭いが、彼から漂ってきているのは確実だ。
錆を含んだ、鉄の臭い。
けれど、怪我をしている様子はない。
彼は一言も発さず、頬に手を伸ばして触れた。
輪郭を確かめるようなその動きに、怪訝そうに眉を寄せる。
触れていた手が目蓋に達したとき、自らの意思に反して肩がぴくりと震えた。
氷雨が今触れている目蓋の下に、眼球はない。
「白雨」
再度の呼びかけに、吐息で応える。
「お前の、目ェ盗ったって吹聴してた輩がいたから、同じ目にあわせて来たんだ……」
触れている手が、かすかに震えている。
氷雨にこの暗がりは見通せない。
それを承知で、白雨は微笑んだ。
「……馬鹿だな。お前が、傷を負うことはないのに」
「傷じゃァ、ねェよ」
目蓋に触れていた手を頬に移し、氷雨が呟く。
自分にはもう光が見えない。
けれど。
微笑んだまま、白雨は頬の手に自分の手を添えた。
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