忍者ブログ
何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「やっぱり、俺が先か」

 寝起きの第一声がそれだった。
 熟睡しているとばかり思っていたので、火にくべようとした薪を持ったまま彼を見つめる。
 彼は徐に起き上がると、毛布を膝に落としてあぐらをかいた。
「先、とは?」
 好奇心を抑えられずに問いを放つ。
 彼はそれに答えず、周りを見回すとぼんやりと聞いた。
「ファルは?」
「見回りに行く、と先程」
「ふぅん」
 くぁ、とあくびをして、彼はほんの少し俯いて火を見つめた。 
先程の問いを繰り返そうと口を開くと、彼が唐突に言った。

「多分……3年以内なんだ」
 きょとん、と首を傾げて彼を見る。
 彼は視線を上げた。
 火の光を浴びて、金の目がちらりと光る。

「俺が死ぬのが」

 彼を見つめ、シェセルはそう呟いた。
 


---
 
「知って、いたんですか?」
 問うと、彼はいつものように淡々と答えた。
「えぇ。おそらくは、彼よりも前に」
 彼と居るとき以外、目の前に立つ人物はめったに表情を変えない。
 けれどこんな時ですら。
 そう思うと頭に血が上るようだった。
「知って、居ながら……!」

「何が、できるんですか……! 貴方に、――私に!」

 無表情をかなぐり捨てて、彼は抑えた声で怒鳴る。
「彼は存在自体が歪みです。覆すなら、相応の覚悟を追わねばならない。それは、貴方も知ったはずでしょう」
 激情を抑え、けれど瞳に力を込めて、彼がにらみつける。
 言われた事に、込められた想いに、歯噛みをして視線を落とす。
 そんな事は分かっている。
 けれど。

「……どうした?」
 がさり、と音を立てて戻ってきた彼へ、二人して視線を合わせる。
「何かあったのか、ファル。……マルヴェーリ?」
 怪訝そうに問うシェセルに、何でもないと返す。
 彼は特に問いただすでもなく一言、そうか、とだけ言った。
「もうしばらく行けば街道に出る。そこから半日もすれば町が見えるだろう」
 指差しながら言われ、マルヴェーリは手早く荷物を片付ける。
 通り過ぎざま、シェセルはアルファルの頭を二度、軽く叩いた。

[1] [2] [3] [4] [5] [6
«  Back :   HOME  
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
最新記事
創作絵  (01/05)
創作文_異界  (05/04)
創作文  (04/20)
創作絵  (05/24)
創作文_神界  (02/23)
広告
PR

Copyright(C)2009-2012 Mitsu Okishima.All right reserved.
忍者ブログ [PR]