何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ゆっくりと歩を進める。
右手に炎を喚び出せば、辺りは真昼のように明るくなった。
「君達に君達のルールがあるように、僕には僕のルールがある。残念だけど、容赦はしないよ」
歯を食いしばり、武器を構える彼らに告げる。
返答をする余裕もないのか、荒い息を吐くばかりだ。
此処に辿り着くまでに随分消耗したのだろう、彼らの体のあちこちに傷が目立つ。
「ご苦労なことだね。この先にあるものは君が触れて良いものじゃない」
右手を緩やかに動かす。その動きに合わせて、炎はまるで生き物のように蠢いた。
彼らの背後、扉のある壁から、退路を断つように炎が吹き出る。
それは瞬く間に彼らを追い越し、蠢く炎と合わさって彼らを包み込んだ。
「……くそっ」
絶望に染まった顔を歪めた彼から、悪態が漏れた。
それを見て、にこりと微笑む。
「さよなら。此処にさえ来なければ、君達も少しは長く生きられただろうに」
言葉が終わるより早く、炎は彼らを飲み込んだ。
少し後、炎が消えた部屋には誰の姿もなかった。
右手に炎を喚び出せば、辺りは真昼のように明るくなった。
「君達に君達のルールがあるように、僕には僕のルールがある。残念だけど、容赦はしないよ」
歯を食いしばり、武器を構える彼らに告げる。
返答をする余裕もないのか、荒い息を吐くばかりだ。
此処に辿り着くまでに随分消耗したのだろう、彼らの体のあちこちに傷が目立つ。
「ご苦労なことだね。この先にあるものは君が触れて良いものじゃない」
右手を緩やかに動かす。その動きに合わせて、炎はまるで生き物のように蠢いた。
彼らの背後、扉のある壁から、退路を断つように炎が吹き出る。
それは瞬く間に彼らを追い越し、蠢く炎と合わさって彼らを包み込んだ。
「……くそっ」
絶望に染まった顔を歪めた彼から、悪態が漏れた。
それを見て、にこりと微笑む。
「さよなら。此処にさえ来なければ、君達も少しは長く生きられただろうに」
言葉が終わるより早く、炎は彼らを飲み込んだ。
少し後、炎が消えた部屋には誰の姿もなかった。
ぽつり、と浮かぶ泡のように、意識が灯る。
最初に感じたのは、浮遊感と、息苦しさ。
呼吸をしなければ、と、息を吸い込む。
同時に開いた目に映ったのは、暗闇の中、目の前に立つ人物の長い銀髪だった。
誰、と思った瞬間に、答えが返る。
この人物が、自分を創ったのだ、と。
慣れない空気が肺を焼き、咳き込む。
声が出ない。
喉、が。
陸に上がった魚のように口を開閉していると、ふとその人物の手が伸びた。
喉に触れる、ひやりとした温度。
途端に呼吸が楽になる。
「シェセルディ……」
初めて発音した音は、けれど目の前の人物の表情すら変えることが出来なかった。
最初に感じたのは、浮遊感と、息苦しさ。
呼吸をしなければ、と、息を吸い込む。
同時に開いた目に映ったのは、暗闇の中、目の前に立つ人物の長い銀髪だった。
誰、と思った瞬間に、答えが返る。
この人物が、自分を創ったのだ、と。
慣れない空気が肺を焼き、咳き込む。
声が出ない。
喉、が。
陸に上がった魚のように口を開閉していると、ふとその人物の手が伸びた。
喉に触れる、ひやりとした温度。
途端に呼吸が楽になる。
「シェセルディ……」
初めて発音した音は、けれど目の前の人物の表情すら変えることが出来なかった。
ずるり、と密度の濃い闇から這い出す。
闇から這い出しても、周りは暗く、足元さえ見えない。
けれど、そんな事は彼には関係がなかった。
光を感じるはずの眼球は元より無い。
随分昔に負傷してから、眼球はなくしてしまったからだ。
踏み出した足が硬い岩の感触を伝える。
彼に明かりは必要なかったが、ある程度の広さを持つこの洞窟の隅には、暗闇で光る鉱石が点在していた。
危なげなく歩を進めると、いつも座っている岩棚に腰を下ろす。
居心地の良い状態にくり抜かれたその場所は、他より一段高く、けれど座れば前に立つ者と同じ目線になった。
何の物音もしない静寂が満ちた洞窟内で、微睡むように身体を横に倒す。
どのくらいそうしていたのか、軽い足音が遠くから響き、彼は僅かに顔を上げた。
近寄ってくるその足音を暫く聞いて、不意に小さく笑う。
踊るようなその足音に、光る鉱石が役立っていることを告げていた。
明かりは、今から来る彼の為のものだから。
闇から這い出しても、周りは暗く、足元さえ見えない。
けれど、そんな事は彼には関係がなかった。
光を感じるはずの眼球は元より無い。
随分昔に負傷してから、眼球はなくしてしまったからだ。
踏み出した足が硬い岩の感触を伝える。
彼に明かりは必要なかったが、ある程度の広さを持つこの洞窟の隅には、暗闇で光る鉱石が点在していた。
危なげなく歩を進めると、いつも座っている岩棚に腰を下ろす。
居心地の良い状態にくり抜かれたその場所は、他より一段高く、けれど座れば前に立つ者と同じ目線になった。
何の物音もしない静寂が満ちた洞窟内で、微睡むように身体を横に倒す。
どのくらいそうしていたのか、軽い足音が遠くから響き、彼は僅かに顔を上げた。
近寄ってくるその足音を暫く聞いて、不意に小さく笑う。
踊るようなその足音に、光る鉱石が役立っていることを告げていた。
明かりは、今から来る彼の為のものだから。
いつもと同じように廊下を歩く。
食事をしてきたばかりなので、機嫌が良い。
突き当りの扉をおざなりに叩いて、押し開けながら声をかけた。
「ラウド、今日はー……」
居室に足を踏み入れて、愕然とする。
部屋の中はもぬけの殻だった。
気配すらない。
「どうして……!」
身を翻し、走り出す。
彼のいそうな場所、行きそうな場所を探し、それでも姿を見つけられずに茫然とその場に膝をついた。
いない。
何処にも。
まさか、逃げた?
何から?
僕から!?
目に怒りが宿る。
「僕と同じものは君だけなのに……逃げるなんて許さない」
ゆっくりと立ち上がると、すぐに歩き出した。
彼を見つけるために。
彼を、連れ戻すために。
食事をしてきたばかりなので、機嫌が良い。
突き当りの扉をおざなりに叩いて、押し開けながら声をかけた。
「ラウド、今日はー……」
居室に足を踏み入れて、愕然とする。
部屋の中はもぬけの殻だった。
気配すらない。
「どうして……!」
身を翻し、走り出す。
彼のいそうな場所、行きそうな場所を探し、それでも姿を見つけられずに茫然とその場に膝をついた。
いない。
何処にも。
まさか、逃げた?
何から?
僕から!?
目に怒りが宿る。
「僕と同じものは君だけなのに……逃げるなんて許さない」
ゆっくりと立ち上がると、すぐに歩き出した。
彼を見つけるために。
彼を、連れ戻すために。
伸ばした手は届くはずだった。
力があれば守ってやれると思ってた。
だからずっと傍に居たし、これからも居るつもりでいた。
それがこんな形で失われるとは思ってもいなかった。
もっと長くいられると、思っていたのに。
足元に転がった彼はもうピクリとも動かない。
虚ろに開いたままだった目を閉じさせたら、まるで眠ってるかのようだった。
(よくも)
胸にどす黒い感情が膨れ上がる。
(よくも、彼を)
けれど、それをぶつけるべき敵はすでに全滅させてしまった。
自分にもう少し力があったら。
次代が見つかっていなかったら。
とめどなく思考が空転する。
ぎり、と歯を食いしばる。
(彼がいないなら)
(世界ごと滅ぼそうか)
それはとても良い考えに思えた。
だってもう、世界は自分にとって意味がない。
滅ぼしたところで、反動があるわけでもないのだ。
「アルファル!」
まさに力を集めようとしていた瞬間に名を呼ばれ、瞬きをする。
心配そうな顔をして、青年が駆け寄ってきた。
(次代……。彼が、いなければ――)
暗い、ぼんやりとした思考は腕を掴まれる感触で払われた。
「行こう。此処はもう落ちる」
気遣わしげな声に、ため息を吐いた。
「……そうですね。行きましょう」
くるりと踵を返す。
暫く歩いて、足音が付いてこないことに気づいて振り返る。
「……何を、してるんです?」
「連れて、行こうと思って。残していきたくはない」
もう動かない死体を抱えて、彼が答える。
「何処へ」
息が詰まって上手く発音できない。
けれど彼にはわかったようで、顔をあげるとさみしそうに微笑んだ。
「家に」
あの日の当たる場所に。
「あぁ……そうですね」
ゆっくりと息を吐き、運ぶのを手伝おうと手を伸ばした。
力があれば守ってやれると思ってた。
だからずっと傍に居たし、これからも居るつもりでいた。
それがこんな形で失われるとは思ってもいなかった。
もっと長くいられると、思っていたのに。
足元に転がった彼はもうピクリとも動かない。
虚ろに開いたままだった目を閉じさせたら、まるで眠ってるかのようだった。
(よくも)
胸にどす黒い感情が膨れ上がる。
(よくも、彼を)
けれど、それをぶつけるべき敵はすでに全滅させてしまった。
自分にもう少し力があったら。
次代が見つかっていなかったら。
とめどなく思考が空転する。
ぎり、と歯を食いしばる。
(彼がいないなら)
(世界ごと滅ぼそうか)
それはとても良い考えに思えた。
だってもう、世界は自分にとって意味がない。
滅ぼしたところで、反動があるわけでもないのだ。
「アルファル!」
まさに力を集めようとしていた瞬間に名を呼ばれ、瞬きをする。
心配そうな顔をして、青年が駆け寄ってきた。
(次代……。彼が、いなければ――)
暗い、ぼんやりとした思考は腕を掴まれる感触で払われた。
「行こう。此処はもう落ちる」
気遣わしげな声に、ため息を吐いた。
「……そうですね。行きましょう」
くるりと踵を返す。
暫く歩いて、足音が付いてこないことに気づいて振り返る。
「……何を、してるんです?」
「連れて、行こうと思って。残していきたくはない」
もう動かない死体を抱えて、彼が答える。
「何処へ」
息が詰まって上手く発音できない。
けれど彼にはわかったようで、顔をあげるとさみしそうに微笑んだ。
「家に」
あの日の当たる場所に。
「あぁ……そうですね」
ゆっくりと息を吐き、運ぶのを手伝おうと手を伸ばした。