何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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さくさくと、手に持った穀物の皮を剥いていく。
のんびりやっているようにしか見えないのに、皮は瞬く間に剥かれていった。
手馴れた動作で、次の穀物を手に取る。
今日は珍しく外が明るかったから、皮むきを外でやることに決めて作業を始めてから大分経つ。
穀物はすでに粗方剥き終わっていた。
ふと物音が聞こえた気がして顔を上げると、近くにある扉が開いた。
「此処にいたか」
「ん? 俺に用?」
毛先だけが緑、という変わった髪色の彼は、背後を指差しながら言った。
「いや、少し厨房を借りようと思ってな」
「……誰も居なかった?」
首を傾げて問うと、彼は表情を険しくした。
「誰か居るはずなのか?」
「そりゃぁ当番のやつが……。いや、多分ちょっと席を外してるだけだと思う。俺もこれ終わったらそっち行くから、好きに使って良いよ」
「……わかった」
いかにも不承不承といった様子で頷くと、彼は扉を閉めた。
仕方ないな、とため息をついて、残りを急いで処理し始める。
彼が厨房のものを荒らすようなことは無いけれど、他のやつらが戻ってこなかった時に厄介なことになる。
(まぁいつものことか)
苦笑して、最後の一個を籠に放り込んだ。
のんびりやっているようにしか見えないのに、皮は瞬く間に剥かれていった。
手馴れた動作で、次の穀物を手に取る。
今日は珍しく外が明るかったから、皮むきを外でやることに決めて作業を始めてから大分経つ。
穀物はすでに粗方剥き終わっていた。
ふと物音が聞こえた気がして顔を上げると、近くにある扉が開いた。
「此処にいたか」
「ん? 俺に用?」
毛先だけが緑、という変わった髪色の彼は、背後を指差しながら言った。
「いや、少し厨房を借りようと思ってな」
「……誰も居なかった?」
首を傾げて問うと、彼は表情を険しくした。
「誰か居るはずなのか?」
「そりゃぁ当番のやつが……。いや、多分ちょっと席を外してるだけだと思う。俺もこれ終わったらそっち行くから、好きに使って良いよ」
「……わかった」
いかにも不承不承といった様子で頷くと、彼は扉を閉めた。
仕方ないな、とため息をついて、残りを急いで処理し始める。
彼が厨房のものを荒らすようなことは無いけれど、他のやつらが戻ってこなかった時に厄介なことになる。
(まぁいつものことか)
苦笑して、最後の一個を籠に放り込んだ。
いつもと同じように背を向けたルシェイドに、半ば呆然とした声でライナートが問う。
「お前、……知っていたのか?」
「何を?」
振り向かずに淡々と言葉を紡ぐ。
「あの子がもう長くないことを? 病でもないのに短すぎた寿命のことかい?」
意地が悪い、と思いながら、やりきれない感情を押し殺す。
「知っていたよ。――それが、どうかしたの?」
「知っていたなら!」
「何が出来た? 彼の死は律に反した代償なんだ。それとも彼が死んだほうが良かったとでも?」
悲痛な、怒りを伴った声をさえぎって、殊更平坦な声で言いながら振り返る。
「……ッ、そうは言ってねぇだろ!」
泣きそうな顔で、彼が声を絞り出す。
泣きそう、ではない。
彼は泣いていたのだ。
「そういうことだよ。他に方法なんて、なかった……」
「お前の力をもってしてもか」
「これ以上歪ませるわけにはいかない」
「それでも……!」
「彼の死を覆すなら、……この界を滅ぼすほどの歪みが必要だ。そしてこの界が滅びれば、他の界も連鎖して滅びる。バランスを欠いた天秤は、倒れるしかないからね」
愕然と向けられた視線を冷徹に跳ね返しながら、さらに言葉を重ねた。
憎んでくれて良い。
助けなかったのは事実だ。
泣いてやることもできない。
だから、一緒に、嘆くこともできないんだ。
「お前、……知っていたのか?」
「何を?」
振り向かずに淡々と言葉を紡ぐ。
「あの子がもう長くないことを? 病でもないのに短すぎた寿命のことかい?」
意地が悪い、と思いながら、やりきれない感情を押し殺す。
「知っていたよ。――それが、どうかしたの?」
「知っていたなら!」
「何が出来た? 彼の死は律に反した代償なんだ。それとも彼が死んだほうが良かったとでも?」
悲痛な、怒りを伴った声をさえぎって、殊更平坦な声で言いながら振り返る。
「……ッ、そうは言ってねぇだろ!」
泣きそうな顔で、彼が声を絞り出す。
泣きそう、ではない。
彼は泣いていたのだ。
「そういうことだよ。他に方法なんて、なかった……」
「お前の力をもってしてもか」
「これ以上歪ませるわけにはいかない」
「それでも……!」
「彼の死を覆すなら、……この界を滅ぼすほどの歪みが必要だ。そしてこの界が滅びれば、他の界も連鎖して滅びる。バランスを欠いた天秤は、倒れるしかないからね」
愕然と向けられた視線を冷徹に跳ね返しながら、さらに言葉を重ねた。
憎んでくれて良い。
助けなかったのは事実だ。
泣いてやることもできない。
だから、一緒に、嘆くこともできないんだ。
ごほ、と胃の中のものが逆流する。
胃液に塗れた大量の血を吐きながら、せっかく新しく変えてもらったシーツなのに、とぼんやり考えていた。
ばたばたばた、と盛大な足音が響く。
部屋に入ってきたライナートは中を一目見るなり顔色を変えて駆け寄った。
力の入らない体を横たえたまま、リーヴァセウスがほんの少し唇の端をあげる。
かすかなその変化に気づいたのか、彼は表情を一気に険しくさせて空中に怒鳴った。
「ルシェイドッ!!」
すぐに青緑色の髪をなびかせて少年が現れる。
ルシェイドは状況を見て取ると無駄口は一切叩かずに両手を広げ、魔法を紡いだ。
ベッドを中心に淡い光の線が構築される。
「任せた」
ライナートはそう言って部屋から出て行った。
淡い、暖かい光に包まれながら、リーヴァセウスは意識を手放した。
胃液に塗れた大量の血を吐きながら、せっかく新しく変えてもらったシーツなのに、とぼんやり考えていた。
ばたばたばた、と盛大な足音が響く。
部屋に入ってきたライナートは中を一目見るなり顔色を変えて駆け寄った。
力の入らない体を横たえたまま、リーヴァセウスがほんの少し唇の端をあげる。
かすかなその変化に気づいたのか、彼は表情を一気に険しくさせて空中に怒鳴った。
「ルシェイドッ!!」
すぐに青緑色の髪をなびかせて少年が現れる。
ルシェイドは状況を見て取ると無駄口は一切叩かずに両手を広げ、魔法を紡いだ。
ベッドを中心に淡い光の線が構築される。
「任せた」
ライナートはそう言って部屋から出て行った。
淡い、暖かい光に包まれながら、リーヴァセウスは意識を手放した。
「眠れないの」
淡い月光を浴びた後ろ姿に声をかける。
リーヴァセウスは視線を窓の外から戻すと、ルシェイドの姿を認めて微笑した。
「君こそどうしたの。こんな夜更けに」
「こっちの台詞だよ。そんな風に出歩いてると、またライナートに怒られるよ」
リーヴァセウスは困ったように眉根を寄せる。
「うん……。そうなんだけどね」
眠れなくて。
そう小さく囁いて、彼は視線を落した。
床には月光でできた淡い影が伸びている。
細いその影がゆらりと揺れたかと思うと、彼は音を立ててその場に倒れた。
「リーヴァセウス!」
慌てて駆け寄り、抱き起こす。
月光の下にあってなお青白いその顔を見て、ルシェイドが表情を変える。
瞬く間に青年の姿へと変化すると、リーヴァセウスを抱えあげて廊下を走った。
「ライナート!」
途中で声を張る。
すぐに足音がして、上着を半分羽織ったままの青年が現れた。
「!」
抱えられているリーヴァセウスを見て表情を変える。
「こっちだ」
だが取り乱すでもなく立ち直ると、すぐにきびすを返してルシェイドを先導した。
廊下を更に進んだところにある扉を開け、ベッドを整える。
「入用のものはあるか?」
「ん……水貰っていい?」
「わかった。すぐに持ってこよう」
ライナートが飛び出していく。
その足音を聞きながら抱えた彼をベッドに横たえ、傍らにひざを付く。
手を握り、目を閉じる。
まるで、祈っているように。
戻ってくる足音に目を開ける。
そのころには、リーヴァセウスの顔色はだいぶ良くなっていた。
代わりにルシェイドの顔色が悪くなっている。
「おい、もって来たぞ」
す、と水の入ったコップを差し出され、礼を言って受け取る。
どうするのかと見ていると、ルシェイドはそれをそのまま飲み干した。
「お前が飲むのかよ」
「他に誰が居るのさ」
ひとつ息をついてルシェイドが言う。
「大丈夫そうか?」
二人は横たわる彼に視線を向ける。
「……まぁ、今のところはね」
その場に何ともいえない沈黙が落ちる。
視線の先で、リーヴァセウスは穏やかな寝息を立てていた。
淡い月光を浴びた後ろ姿に声をかける。
リーヴァセウスは視線を窓の外から戻すと、ルシェイドの姿を認めて微笑した。
「君こそどうしたの。こんな夜更けに」
「こっちの台詞だよ。そんな風に出歩いてると、またライナートに怒られるよ」
リーヴァセウスは困ったように眉根を寄せる。
「うん……。そうなんだけどね」
眠れなくて。
そう小さく囁いて、彼は視線を落した。
床には月光でできた淡い影が伸びている。
細いその影がゆらりと揺れたかと思うと、彼は音を立ててその場に倒れた。
「リーヴァセウス!」
慌てて駆け寄り、抱き起こす。
月光の下にあってなお青白いその顔を見て、ルシェイドが表情を変える。
瞬く間に青年の姿へと変化すると、リーヴァセウスを抱えあげて廊下を走った。
「ライナート!」
途中で声を張る。
すぐに足音がして、上着を半分羽織ったままの青年が現れた。
「!」
抱えられているリーヴァセウスを見て表情を変える。
「こっちだ」
だが取り乱すでもなく立ち直ると、すぐにきびすを返してルシェイドを先導した。
廊下を更に進んだところにある扉を開け、ベッドを整える。
「入用のものはあるか?」
「ん……水貰っていい?」
「わかった。すぐに持ってこよう」
ライナートが飛び出していく。
その足音を聞きながら抱えた彼をベッドに横たえ、傍らにひざを付く。
手を握り、目を閉じる。
まるで、祈っているように。
戻ってくる足音に目を開ける。
そのころには、リーヴァセウスの顔色はだいぶ良くなっていた。
代わりにルシェイドの顔色が悪くなっている。
「おい、もって来たぞ」
す、と水の入ったコップを差し出され、礼を言って受け取る。
どうするのかと見ていると、ルシェイドはそれをそのまま飲み干した。
「お前が飲むのかよ」
「他に誰が居るのさ」
ひとつ息をついてルシェイドが言う。
「大丈夫そうか?」
二人は横たわる彼に視線を向ける。
「……まぁ、今のところはね」
その場に何ともいえない沈黙が落ちる。
視線の先で、リーヴァセウスは穏やかな寝息を立てていた。
いつもと同じ灰色の空を窓から眺めていると、少し遠くから声が聞こえた。
苛立つようなその声は聞き覚えのあるものだったので、なんとなく行ってみた。
「……だから違うって言ってんだろうが! さっきから何度同じこと言わせる! もう良い。後は俺がやるから、てめぇは中央塔見回って来い。――さっさと行け!」
盛大な足音が遠ざかっていく。
小さくののしり言葉を吐き捨てて振り返った彼と、目が合った。
表情はしかめ面のまま、彼が寄ってくる。
「何見てやがる。居るなら声ぐらいかけろ」
「あー、……何かあったの?」
視線をわずかに泳がせて問う。
「あのやろうが、書類ひとつ満足に届けられねぇんだよ。此処は何であんな役立たず使ってやがんだ。ったく腹立たしいにも程がある」
「……君は本当に口が悪いね……」
「あぁ? 上品な育てられ方してねぇからな。それに、口が悪かろうが良かろうが、仕事に影響ねぇだろ?」
「まぁそうだけど」
「むしろ上品なやつは仕事ができねぇくせに矜持だけはやたらと高ぇからめんどくせぇ」
はき捨てるように言う彼に、苦笑を漏らす。
「それでも君が面倒見良いって知ってるから、皆君のことが好きなんだよ」
言うと、何か変なものを飲み込んだような表情をして、ふいと視線をそらしてしまった。
「……知るか」
小声ではき捨てて廊下の向こうに早足で行ってしまう。
いつもと違う足運びと、赤く染まった耳に、声を殺して笑った。
苛立つようなその声は聞き覚えのあるものだったので、なんとなく行ってみた。
「……だから違うって言ってんだろうが! さっきから何度同じこと言わせる! もう良い。後は俺がやるから、てめぇは中央塔見回って来い。――さっさと行け!」
盛大な足音が遠ざかっていく。
小さくののしり言葉を吐き捨てて振り返った彼と、目が合った。
表情はしかめ面のまま、彼が寄ってくる。
「何見てやがる。居るなら声ぐらいかけろ」
「あー、……何かあったの?」
視線をわずかに泳がせて問う。
「あのやろうが、書類ひとつ満足に届けられねぇんだよ。此処は何であんな役立たず使ってやがんだ。ったく腹立たしいにも程がある」
「……君は本当に口が悪いね……」
「あぁ? 上品な育てられ方してねぇからな。それに、口が悪かろうが良かろうが、仕事に影響ねぇだろ?」
「まぁそうだけど」
「むしろ上品なやつは仕事ができねぇくせに矜持だけはやたらと高ぇからめんどくせぇ」
はき捨てるように言う彼に、苦笑を漏らす。
「それでも君が面倒見良いって知ってるから、皆君のことが好きなんだよ」
言うと、何か変なものを飲み込んだような表情をして、ふいと視線をそらしてしまった。
「……知るか」
小声ではき捨てて廊下の向こうに早足で行ってしまう。
いつもと違う足運びと、赤く染まった耳に、声を殺して笑った。