何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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ゆっくりと力が抜けていく感覚。
根幹をなす力はすでに次に渡してあったから、それに引きずられる形で残った力も抜けていっているのだと分かっていた。
力がなくなれば死ぬ。
それは、決まっていること。
けれど。
「……シェセルディ」
小さく呟く。
呼びかけられた人物は身動きもせず背を向けたままだ。
ぎり、と歯を食いしばって、力任せに抱き寄せる。
「どうして……! どうしてお前は俺を見ない!!」
折れそうなほど華奢な身体に力を込めても、反応は返らない。
今までにどれほど触れても、何を送っても、反応はなかった。
絶望的な思いで項垂れる。
わずかに力が抜けた腕から、するりとシェセルディが抜けだした。
思わず顔をあげたアルジェンテウスの瞳をひたと見据え、シェセルディが右手を伸ばした。
視線が絡んだことに、アルジェンテウスの胸が歓喜に震える。
けれど、すぐに愕然として目を見開いた。
額に触れたひやりとした指先の感触とともに、急激に力が抜けていく。
「……シェセルディ……!」
名を、呼ぶ。
何の感情も伺えない金の目に見つめられたまま、アルジェンテウスの意識は永遠に閉ざされた。
根幹をなす力はすでに次に渡してあったから、それに引きずられる形で残った力も抜けていっているのだと分かっていた。
力がなくなれば死ぬ。
それは、決まっていること。
けれど。
「……シェセルディ」
小さく呟く。
呼びかけられた人物は身動きもせず背を向けたままだ。
ぎり、と歯を食いしばって、力任せに抱き寄せる。
「どうして……! どうしてお前は俺を見ない!!」
折れそうなほど華奢な身体に力を込めても、反応は返らない。
今までにどれほど触れても、何を送っても、反応はなかった。
絶望的な思いで項垂れる。
わずかに力が抜けた腕から、するりとシェセルディが抜けだした。
思わず顔をあげたアルジェンテウスの瞳をひたと見据え、シェセルディが右手を伸ばした。
視線が絡んだことに、アルジェンテウスの胸が歓喜に震える。
けれど、すぐに愕然として目を見開いた。
額に触れたひやりとした指先の感触とともに、急激に力が抜けていく。
「……シェセルディ……!」
名を、呼ぶ。
何の感情も伺えない金の目に見つめられたまま、アルジェンテウスの意識は永遠に閉ざされた。
「了」
不意に呼びかけられて、そちらに視線を向けた。
「何用だ」
声に含まれる棘を隠そうともせずに吐き捨てる。
だが、その声にわずかも色を変えずに、呼びかけた人物が言った。
「日が決まった」
かすかに眉間に皺を寄せて、顔を見返す。
影に紛れそうなほどの黒髪の隙間から、感情の押さえられた目が覗いている。
「穿」
静かに呼びかけると、ちらりと目に動揺がよぎった。
それを見て、了が自嘲気味に笑う。
「そんな顔をせずとも、逃げたりはしない」
けれど、穿は痛みを堪えるような表情で了を見つめた。
「……了」
「日が決まったのだろう? これで、日々を煩わされずに過ごせるというものだ」
肩を竦めて言うと、突然抱きしめられた。
「穿?」
「……どうして、了が」
苦渋に満ちた、絞り出すような声に、了が微笑う。
「もう決まったことだ」
「了……!」
抱きしめられた体を無理やり離す。
この腕の中は心地よいけれど、甘んじるわけにはいかない。
「もう行け。あまり長くいると、他の者がうるさいぞ」
視線を伏せたまま、穿に告げた。
手を放した状態で動かない穿に背を向ける。
すべてを拒絶するかのように。
もう振り向かないと分かったのか、かすかな軋み音を残して穿が立ち去る。
拳を握りしめて俯く。
一緒に行けたら。
この場所から逃げ出せたら。
その思いを閉じ込めるように、牢の扉が閉まる、硬質な音が部屋に響いた。
不意に呼びかけられて、そちらに視線を向けた。
「何用だ」
声に含まれる棘を隠そうともせずに吐き捨てる。
だが、その声にわずかも色を変えずに、呼びかけた人物が言った。
「日が決まった」
かすかに眉間に皺を寄せて、顔を見返す。
影に紛れそうなほどの黒髪の隙間から、感情の押さえられた目が覗いている。
「穿」
静かに呼びかけると、ちらりと目に動揺がよぎった。
それを見て、了が自嘲気味に笑う。
「そんな顔をせずとも、逃げたりはしない」
けれど、穿は痛みを堪えるような表情で了を見つめた。
「……了」
「日が決まったのだろう? これで、日々を煩わされずに過ごせるというものだ」
肩を竦めて言うと、突然抱きしめられた。
「穿?」
「……どうして、了が」
苦渋に満ちた、絞り出すような声に、了が微笑う。
「もう決まったことだ」
「了……!」
抱きしめられた体を無理やり離す。
この腕の中は心地よいけれど、甘んじるわけにはいかない。
「もう行け。あまり長くいると、他の者がうるさいぞ」
視線を伏せたまま、穿に告げた。
手を放した状態で動かない穿に背を向ける。
すべてを拒絶するかのように。
もう振り向かないと分かったのか、かすかな軋み音を残して穿が立ち去る。
拳を握りしめて俯く。
一緒に行けたら。
この場所から逃げ出せたら。
その思いを閉じ込めるように、牢の扉が閉まる、硬質な音が部屋に響いた。
眼鏡の日ということで眼鏡。
微妙に間に合ってないとか言わない。
日付指定って便利だよね!(こら
しばらく普通の描いてなかったから描きにくかった…
ふと気が付くと、塔の前に立っていた。
西の塔。
あの日以来ここに来ることはなかった。
来たくなかった。
塔自体もなくしてしまいたかったけれど、それはなぜか適わなかった。
ぼんやりと塔を見上げる。
「……壊れてしまえばよかったのに……」
呟いて、踵を返す。
ここに用はない。
もう誰もいないのだから。
あの惨劇はまだ覚えてる。
俯いた拍子に目に入った赤色を見て、忌々しげに顔を歪めた。
あの血の海に似た、自分の髪を見るたびに思い出してしまう。
早く忘れてしまいたい。
のに。
西の塔。
あの日以来ここに来ることはなかった。
来たくなかった。
塔自体もなくしてしまいたかったけれど、それはなぜか適わなかった。
ぼんやりと塔を見上げる。
「……壊れてしまえばよかったのに……」
呟いて、踵を返す。
ここに用はない。
もう誰もいないのだから。
あの惨劇はまだ覚えてる。
俯いた拍子に目に入った赤色を見て、忌々しげに顔を歪めた。
あの血の海に似た、自分の髪を見るたびに思い出してしまう。
早く忘れてしまいたい。
のに。
伸ばした手に銀の髪が触れる。
さらりとしたその感触を楽しみながら、目の前にいる人物に話しかける。
「シェセルディ」
確かに名前を呼んだはずなのに、反応はない。
頬に手を添えてこちらを向かせ、もう一度名前を呼ぶ。
わかっているのか、シェセルディはぼんやりとした視線をこちらに向けただけで、何も言わなかった。
頬に添えていた手を滑らせ、ゆるく抱きしめる。
シェセルディは意に介さず、ゆらりと右手を上げた。
周囲から霧のようなものが漂い、右手の先に集まっていく。
けれど、形になる前にその右手を掴んだ。
集まっていた霧はすぐに散っていった。
邪魔をされたシェセルディが、わずかに顔を顰める。
「新しい世界なんてもういらないだろう?」
不快げに顔を歪めたシェセルディに、触れるほど近くで笑う。
「俺はお前さえいれば、他には何もいらないんだ」
子供のように無邪気に微笑みながら、アルジェンテウスは囁いた。
さらりとしたその感触を楽しみながら、目の前にいる人物に話しかける。
「シェセルディ」
確かに名前を呼んだはずなのに、反応はない。
頬に手を添えてこちらを向かせ、もう一度名前を呼ぶ。
わかっているのか、シェセルディはぼんやりとした視線をこちらに向けただけで、何も言わなかった。
頬に添えていた手を滑らせ、ゆるく抱きしめる。
シェセルディは意に介さず、ゆらりと右手を上げた。
周囲から霧のようなものが漂い、右手の先に集まっていく。
けれど、形になる前にその右手を掴んだ。
集まっていた霧はすぐに散っていった。
邪魔をされたシェセルディが、わずかに顔を顰める。
「新しい世界なんてもういらないだろう?」
不快げに顔を歪めたシェセルディに、触れるほど近くで笑う。
「俺はお前さえいれば、他には何もいらないんだ」
子供のように無邪気に微笑みながら、アルジェンテウスは囁いた。