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何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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「あー、暇だー」

 ごろりと机に突っ伏す青緑の頭を見て、深々とため息をつく。
「そんなに暇なら棚の整理でもしてくれ」
「やだ。つまんない」
「私より年上の癖に子供じみたことを言うな」
「生まれたのはディリクのほうが先だよ」
「この世界では、だろう」
「まぁそうだけど」
 否定せずにぼんやりと壁を見る。
 目的があったわけではなく、ただその方向に壁しかなかっただけだ。
 何の変哲も無い壁を見ていてもさらに面白くないので、視線を反対側に向ける。

 蝋燭の炎の下で、めったにかけない眼鏡姿のディリクが何かをいじっていた。
「何それ」
 問うと、彼は作業の手を止めて怪訝そうにこちらを見た。
「……何って、お前が持ち込んだんだろう」
「あー、そういえばそうだっけ」
「お前な……」
 脱力したようにディリクがつぶやく。
「ごめんごめん。直りそう?」
「あぁ」
 ぱちりと音を立てて蓋を閉じる。
 そのまま、軽く投げてきた。
「ほら」
「わぁ。すごい動いてる」

 それは、懐中時計だった。
 カチカチ、と一定のリズムで秒針が動く。
「よく直せたね」
 素人ではむしろ壊しやすいものだったはずだ。
 それ以前に、彼は時計を見たこともなかっただろうに。
「何かが外れているような音がしたからな。そこをいじっただけだ」
 使用した道具を仕舞い、片手に眼鏡を持ったまま目頭を押さえている。
「大事なものなのか」
 しばらくして、ルシェイドの方を見ないまま、彼が口を開いた。

 ルシェイドは時計を弄びながら、静かに頷いた。
「……形見みたいなものだね」
「そうか」
 ディリクはそれだけ言って、後は黙って眼鏡を仕舞った。

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プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
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