何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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「うぇ」
眼の前の魔獣を見て、思わずといったようにオルカーンが呻く。
「どうした?」
その声を聞きつけたルベアが、視線を向けずに問う。
「俺、あの種類苦手」
ルベアが訝しげに眉根を寄せる。
見た目は猫のような、しなやかな毛皮をまとった獣だ。
大きさはオルカーンよりも小さい。
動きが早いという以外は大したことのない敵のはずだが、何かあるのだろうか。
「何故?」
「だって、爪が鋭いだろ」
一瞬剣を取り落としそうになった。
「……お前だって鋭いだろうが」
「いや、何て言うかな、あの大きさであの爪とか結構尖ってない?」
「大差ない」
「そうかなぁ」
「良いから片付けるぞ」
「はーい」
ため息と共に返事をして、ルベアが飛び出すタイミングに合わせて、猫型の魔獣に飛びかかった。
眼の前の魔獣を見て、思わずといったようにオルカーンが呻く。
「どうした?」
その声を聞きつけたルベアが、視線を向けずに問う。
「俺、あの種類苦手」
ルベアが訝しげに眉根を寄せる。
見た目は猫のような、しなやかな毛皮をまとった獣だ。
大きさはオルカーンよりも小さい。
動きが早いという以外は大したことのない敵のはずだが、何かあるのだろうか。
「何故?」
「だって、爪が鋭いだろ」
一瞬剣を取り落としそうになった。
「……お前だって鋭いだろうが」
「いや、何て言うかな、あの大きさであの爪とか結構尖ってない?」
「大差ない」
「そうかなぁ」
「良いから片付けるぞ」
「はーい」
ため息と共に返事をして、ルベアが飛び出すタイミングに合わせて、猫型の魔獣に飛びかかった。
「よい、しょっと……」
束ねた本を持ち上げ、階下へと運ぶ。
溜まってしまった本の整理。
読まなくなった本は村の蔵書庫に入れてもらおうと、仕分けをしている最中だ。
「これも持って行って良いの?」
「あぁ、はい。お願いします」
背後から言われた言葉に、指さされた物を確認して頷く。
同居人である彼女は、彼が持っている本の倍以上の本を苦もなく抱えて、さっさと持って行ってしまった。
「……」
抱えていた本を下ろし、じっと手を見る。
「次行くよー?」
「あ、はい」
アリアの声に、慌ててそちらへと走った。
「……非力ですかね」
ふらりとお茶を飲みにやってきたルシェイドに、ぽつりと漏らす。
「は? 君が?」
お茶を飲む手を止めて、怪訝そうに問う。
「……アリアより歳上なんですけどね」
さらに言えば性別も違う。
しょんぼりする彼に、ルシェイドが苦笑する。
「あの子の膂力が強いのは魔力にならなかったからだよ。魔法関係からきしでしょ?」
「そうですけど……」
「君の膂力が強いとは思わないけど、アリアがいるんだし、足りないものを補うって意味で良い組み合わせじゃないの?」
強いと言うより弱い、とは言わないでおく。
「まぁ……頑張りますよ」
そう言って、彼は弱く微笑んだ。
束ねた本を持ち上げ、階下へと運ぶ。
溜まってしまった本の整理。
読まなくなった本は村の蔵書庫に入れてもらおうと、仕分けをしている最中だ。
「これも持って行って良いの?」
「あぁ、はい。お願いします」
背後から言われた言葉に、指さされた物を確認して頷く。
同居人である彼女は、彼が持っている本の倍以上の本を苦もなく抱えて、さっさと持って行ってしまった。
「……」
抱えていた本を下ろし、じっと手を見る。
「次行くよー?」
「あ、はい」
アリアの声に、慌ててそちらへと走った。
「……非力ですかね」
ふらりとお茶を飲みにやってきたルシェイドに、ぽつりと漏らす。
「は? 君が?」
お茶を飲む手を止めて、怪訝そうに問う。
「……アリアより歳上なんですけどね」
さらに言えば性別も違う。
しょんぼりする彼に、ルシェイドが苦笑する。
「あの子の膂力が強いのは魔力にならなかったからだよ。魔法関係からきしでしょ?」
「そうですけど……」
「君の膂力が強いとは思わないけど、アリアがいるんだし、足りないものを補うって意味で良い組み合わせじゃないの?」
強いと言うより弱い、とは言わないでおく。
「まぁ……頑張りますよ」
そう言って、彼は弱く微笑んだ。
「暇なんだよ」
「帰れ」
退屈そうに呟くルシェイドに、淡々とした口調で応える。
何度となく繰り返された遣り取りに、けれど彼はニヤリと笑った。
「いつも僕だけだと思ったら大間違いだよ!」
「やぁ久しぶり」
ルシェイドの影から姿を表したレヴィアールはにこやかに片手を上げた。
「……戻っていたのか」
彼が旅装のままだということに気づき、眉を寄せる。
「村にはまだ戻ってないのか?」
「あぁ、うん。さっきこっちに着いたばかりだからね。アィルは元気にしてる?」
何気なく聞いたのだろうその言葉に、ルシェイドと顔を見合わせた。
「アィルか……」
「……うん」
「まぁ……」
「もう……。……ねぇ?」
微妙に言葉を濁すと、レヴィアールは怪訝そうにしてからすぐに顔色を青くした。
「な……何が……」
神妙な顔でルシェイドと視線を交わす。
「早く行ったほうが良いと思うぞ」
「そ、そうだね、そうするよ……。それじゃまた!」
言うが早いか扉を壊す勢いで飛び出していくレヴィアールを見送って、ルシェイドが肩をすくめる。
「それで、実際はどうなの?」
「最近藥師として頑張ってるようだ。アリアとよく薬草を探しに行くらしい」
「へぇ。あの辺獣とかもいるのに」
「アリアがついてるなら問題ないだろう」
「そうだね」
あは、と笑ったルシェイドは、ディリクの視線に気づいて首をかしげる。
「お前はあの村に行かないのか?」
「あぁ、うん。僕はまだ行かないよ」
言外の含みにディリクが顔をしかめた。
「まぁ僕が行ったって行かなくったって、大丈夫だよ」
からりと笑うと、ルシェイドはカウンターから飛び降りた。
「帰れ」
退屈そうに呟くルシェイドに、淡々とした口調で応える。
何度となく繰り返された遣り取りに、けれど彼はニヤリと笑った。
「いつも僕だけだと思ったら大間違いだよ!」
「やぁ久しぶり」
ルシェイドの影から姿を表したレヴィアールはにこやかに片手を上げた。
「……戻っていたのか」
彼が旅装のままだということに気づき、眉を寄せる。
「村にはまだ戻ってないのか?」
「あぁ、うん。さっきこっちに着いたばかりだからね。アィルは元気にしてる?」
何気なく聞いたのだろうその言葉に、ルシェイドと顔を見合わせた。
「アィルか……」
「……うん」
「まぁ……」
「もう……。……ねぇ?」
微妙に言葉を濁すと、レヴィアールは怪訝そうにしてからすぐに顔色を青くした。
「な……何が……」
神妙な顔でルシェイドと視線を交わす。
「早く行ったほうが良いと思うぞ」
「そ、そうだね、そうするよ……。それじゃまた!」
言うが早いか扉を壊す勢いで飛び出していくレヴィアールを見送って、ルシェイドが肩をすくめる。
「それで、実際はどうなの?」
「最近藥師として頑張ってるようだ。アリアとよく薬草を探しに行くらしい」
「へぇ。あの辺獣とかもいるのに」
「アリアがついてるなら問題ないだろう」
「そうだね」
あは、と笑ったルシェイドは、ディリクの視線に気づいて首をかしげる。
「お前はあの村に行かないのか?」
「あぁ、うん。僕はまだ行かないよ」
言外の含みにディリクが顔をしかめた。
「まぁ僕が行ったって行かなくったって、大丈夫だよ」
からりと笑うと、ルシェイドはカウンターから飛び降りた。
息が切れる。
手足はもう棒のようで、感覚がほとんどなくなってしまった。
逃げ出してからずっと走っている。
一緒に逃げた子供たちは、その大半が途中で脱落していった。
子供の体力では、ずっと走り続けることは難しい。
母親を、置いてきてしまった。
彼女は連れて行かれた時に足の腱を切られた。
子供の自分では、担いで逃げることはできない。
それに、彼女はもう誰のこともわからない。
逃げよう、と言ってもただ首をかしげて、微笑んでいるだけだった。
大声で泣きたい気持ちを堪える。
そんなことをしたら追っ手に居場所を伝えるようなものだ。
それでも、とうとう走っていられなくなって近くの木にもたれかかる。
走ってきた方を振り返った。
誰もいない。
全身から血の気が引いていく。
誰も、いないなんて。
一緒に走っていた子供たちがいたはずだ。
この辺は深い森ではない。
なのに、人影は一つも見当たらなかった。
自分の迂闊さにどうしようか迷っていると、背後で物音がした。
「!」
驚いて振り返る。
そこに立っていたのは、壮年の男だった。
「これは驚いた。こんなところでどうしたね?」
柔らかな笑顔で尋ねられる。
その声に含まれた労りの感情に、膝が崩れた。
慌てる声を聞きながら、意識は遠ざかっていった。
手足はもう棒のようで、感覚がほとんどなくなってしまった。
逃げ出してからずっと走っている。
一緒に逃げた子供たちは、その大半が途中で脱落していった。
子供の体力では、ずっと走り続けることは難しい。
母親を、置いてきてしまった。
彼女は連れて行かれた時に足の腱を切られた。
子供の自分では、担いで逃げることはできない。
それに、彼女はもう誰のこともわからない。
逃げよう、と言ってもただ首をかしげて、微笑んでいるだけだった。
大声で泣きたい気持ちを堪える。
そんなことをしたら追っ手に居場所を伝えるようなものだ。
それでも、とうとう走っていられなくなって近くの木にもたれかかる。
走ってきた方を振り返った。
誰もいない。
全身から血の気が引いていく。
誰も、いないなんて。
一緒に走っていた子供たちがいたはずだ。
この辺は深い森ではない。
なのに、人影は一つも見当たらなかった。
自分の迂闊さにどうしようか迷っていると、背後で物音がした。
「!」
驚いて振り返る。
そこに立っていたのは、壮年の男だった。
「これは驚いた。こんなところでどうしたね?」
柔らかな笑顔で尋ねられる。
その声に含まれた労りの感情に、膝が崩れた。
慌てる声を聞きながら、意識は遠ざかっていった。
ちらり、と傍らの赤い髪に目をやる。
彼はフォリィアにもたれたまま、どうやら寝ているらしかった。
「……エディウスはできなさそうだな」
「……気配消すぐらいならできるみたいだけどね」
苦笑気味にルシェイドが答える。
確証のない言い方が気になって、問おうと口を開いたところで扉が勢い良く開かれた。
「見つかんないー!!」
「お帰り」
「あ、ルシェイドー。本当にディリクこの城にいるの?」
前提であるルールを確認されて、ルシェイドが苦笑する。
「ちゃんと居るよ。それとも降参するかい?」
問い返され、グラディウスが唸る。
「うー……でも見付けられる自信がない……。降参するよ」
「それは残念だ」
するりと背後に立ったディリクが声を出す。
酷く淡々と言われたのにも関わらず、グラディウスは飛び上がるほどに驚いた。
「何処にいたの!?」
「この部屋に居た」
いつもと同じような無表情だったが、良く見ると笑いをこらえているのがわかった。
「マジで……! ぜんぜん気づかなかった……」
がっくりと肩を落す。
「まぁまぁ。エディウスも眠いみたいだし、今日はここまでにしようよ」
「途中で寝るとか子供みたいだよね」
「あー……、まぁ、睡眠がちょっと足りないだけだよ」
何とも言えない表情のルシェイドに片眉を上げて首をかしげながら、エディウスを抱え上げる。
同じくらいの身長のはずなのに、持ち上げた体は酷く軽い。
ソファに横たえると、小さくため息をついた。
「まったく。何だって城でかくれんぼをしようなどと思ったんだ」
「そりゃあ……」
「集まりやすいってのもあったし」
「エディウスは走り回らないし」
「特に何が必要というわけでもなし」
「まぁ僕は別だけど」
「そんな理由だよ」
それぞれが言う言葉に、がくりと肩を落す。
「まぁいいじゃん楽しければ」
「私は仕事なんだが」
「気にしない」
「ていうか君らは自分とこの仕事いいの?」
「……この間みたいに連れ戻されるんじゃないか?」
「うー……だってつまんない」
「言ってろボケが」
突然響いた第三者の声に、皆が驚く。
「やぁライナート。君も大変だね」
「おうよ。……ていうか大変だっつのがわかってんなら一緒に遊ぶんじゃなくて注意してくれ」
「たまにはいいじゃない」
「たまに、ならな」
固まったままのグラディウスの襟首をがしりとつかむと、それじゃあな、と言いおいて彼らは部屋を出て行った。
「そこまでして遊びに来なくても」
「まぁまぁ」
呆れたように言うと、ルシェイドが苦笑して宥めた。
フォリィアが視線を向ける。
皆、思い思いに寛ぎ始めていて、どうやらかくれんぼは終了のようだった。
小さくため息をつくと、また書類に視線を戻した。
彼はフォリィアにもたれたまま、どうやら寝ているらしかった。
「……エディウスはできなさそうだな」
「……気配消すぐらいならできるみたいだけどね」
苦笑気味にルシェイドが答える。
確証のない言い方が気になって、問おうと口を開いたところで扉が勢い良く開かれた。
「見つかんないー!!」
「お帰り」
「あ、ルシェイドー。本当にディリクこの城にいるの?」
前提であるルールを確認されて、ルシェイドが苦笑する。
「ちゃんと居るよ。それとも降参するかい?」
問い返され、グラディウスが唸る。
「うー……でも見付けられる自信がない……。降参するよ」
「それは残念だ」
するりと背後に立ったディリクが声を出す。
酷く淡々と言われたのにも関わらず、グラディウスは飛び上がるほどに驚いた。
「何処にいたの!?」
「この部屋に居た」
いつもと同じような無表情だったが、良く見ると笑いをこらえているのがわかった。
「マジで……! ぜんぜん気づかなかった……」
がっくりと肩を落す。
「まぁまぁ。エディウスも眠いみたいだし、今日はここまでにしようよ」
「途中で寝るとか子供みたいだよね」
「あー……、まぁ、睡眠がちょっと足りないだけだよ」
何とも言えない表情のルシェイドに片眉を上げて首をかしげながら、エディウスを抱え上げる。
同じくらいの身長のはずなのに、持ち上げた体は酷く軽い。
ソファに横たえると、小さくため息をついた。
「まったく。何だって城でかくれんぼをしようなどと思ったんだ」
「そりゃあ……」
「集まりやすいってのもあったし」
「エディウスは走り回らないし」
「特に何が必要というわけでもなし」
「まぁ僕は別だけど」
「そんな理由だよ」
それぞれが言う言葉に、がくりと肩を落す。
「まぁいいじゃん楽しければ」
「私は仕事なんだが」
「気にしない」
「ていうか君らは自分とこの仕事いいの?」
「……この間みたいに連れ戻されるんじゃないか?」
「うー……だってつまんない」
「言ってろボケが」
突然響いた第三者の声に、皆が驚く。
「やぁライナート。君も大変だね」
「おうよ。……ていうか大変だっつのがわかってんなら一緒に遊ぶんじゃなくて注意してくれ」
「たまにはいいじゃない」
「たまに、ならな」
固まったままのグラディウスの襟首をがしりとつかむと、それじゃあな、と言いおいて彼らは部屋を出て行った。
「そこまでして遊びに来なくても」
「まぁまぁ」
呆れたように言うと、ルシェイドが苦笑して宥めた。
フォリィアが視線を向ける。
皆、思い思いに寛ぎ始めていて、どうやらかくれんぼは終了のようだった。
小さくため息をつくと、また書類に視線を戻した。