何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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もって来た書類の半分も片付かないうちに、勢いよく扉が開いた。
入ってきた人物はその勢いのまま部屋の中ほどまで走ってくると、きょろきょろと周りを見回した。
「……扉は静かに開けろといっているだろう。グラディウス」
「おう、フォリィア。誰か見なかった?」
「聞けよ。誰かって誰だ」
「かくれんぼしてんのにこの城広くって見付け難い」
「そもそもかくれんぼように作られた城じゃないからな」
「うーあっさり言うなよ」
きょろきょろしながら、ディリクのいる棚の前を素通りする。
「……」
なんともいえない表情をして、また書類に視線を落す。
視線の先に赤い髪がちらつき、そういえば居たな、と思ったとたんにグラディウスの声が響いた。
「あーいたー!」
「!」
「大声を出すな」
「だってやっと見付けたんだもん」
「……見つかっちゃった」
椅子に座るフォリィアの足に手をかけ、残念そうに呟く。
「……というか、ルシェイドが捕まえる側じゃないのか?」
「さっき交代した。あいつ見付けんの早いよ」
「……そうか」
「あとはディリクだけなんだけどなー。何処にいるか知らない?」
「それを私に聞いてどうする」
「まぁそれもそうか」
ため息をついて仕事に戻る。
何処だーと叫び声を上げながら、グラディウスは部屋を出て行った。
入れ違いでルシェイドが入ってくる。
「やっぱり動きづらいね。すぐに見つかっちゃったよ」
「……だからそれで何でこの部屋に集まるんだ」
「集まるって……あぁ、エディウスも見つかったの?」
机の端から見えている赤い髪に気づいたのか、ルシェイドが声をかける。
彼はちょっと顔を上げて目線だけで答えると、また少し沈んだ。
「うーん。てことはあとディリクだけなんだよね。何処に居るのか知らない?」
「あー……」
知ってはいるが言って良いものか。
思わず視線をさまよわせる。
「……その反応は、知ってるね?」
「……ルシェイド。隠れてるんだから聞くなよ」
不意にディリクが声を出した。
ルシェイドが声のした方向に振り返る。
壁に溶け込んだようなディリクの姿は相変わらず酷く見難い。
「……あぁ。そこに居たのか」
目を眇めてじっと見ていたルシェイドが、納得したように頷く。
「何だ。見えるのか?」
「うーん。実はあんまり」
「お前もあーいうので隠れれば見つかり難いだろうに」
「やりたいけど僕そこまで体術使えないもの」
「体術の問題なのか」
「うん。あれは魔力関係ないよ。よく気配を消すっていうでしょ。あれの、もうちょっと上級なやつだよ」
「へぇ」
入ってきた人物はその勢いのまま部屋の中ほどまで走ってくると、きょろきょろと周りを見回した。
「……扉は静かに開けろといっているだろう。グラディウス」
「おう、フォリィア。誰か見なかった?」
「聞けよ。誰かって誰だ」
「かくれんぼしてんのにこの城広くって見付け難い」
「そもそもかくれんぼように作られた城じゃないからな」
「うーあっさり言うなよ」
きょろきょろしながら、ディリクのいる棚の前を素通りする。
「……」
なんともいえない表情をして、また書類に視線を落す。
視線の先に赤い髪がちらつき、そういえば居たな、と思ったとたんにグラディウスの声が響いた。
「あーいたー!」
「!」
「大声を出すな」
「だってやっと見付けたんだもん」
「……見つかっちゃった」
椅子に座るフォリィアの足に手をかけ、残念そうに呟く。
「……というか、ルシェイドが捕まえる側じゃないのか?」
「さっき交代した。あいつ見付けんの早いよ」
「……そうか」
「あとはディリクだけなんだけどなー。何処にいるか知らない?」
「それを私に聞いてどうする」
「まぁそれもそうか」
ため息をついて仕事に戻る。
何処だーと叫び声を上げながら、グラディウスは部屋を出て行った。
入れ違いでルシェイドが入ってくる。
「やっぱり動きづらいね。すぐに見つかっちゃったよ」
「……だからそれで何でこの部屋に集まるんだ」
「集まるって……あぁ、エディウスも見つかったの?」
机の端から見えている赤い髪に気づいたのか、ルシェイドが声をかける。
彼はちょっと顔を上げて目線だけで答えると、また少し沈んだ。
「うーん。てことはあとディリクだけなんだよね。何処に居るのか知らない?」
「あー……」
知ってはいるが言って良いものか。
思わず視線をさまよわせる。
「……その反応は、知ってるね?」
「……ルシェイド。隠れてるんだから聞くなよ」
不意にディリクが声を出した。
ルシェイドが声のした方向に振り返る。
壁に溶け込んだようなディリクの姿は相変わらず酷く見難い。
「……あぁ。そこに居たのか」
目を眇めてじっと見ていたルシェイドが、納得したように頷く。
「何だ。見えるのか?」
「うーん。実はあんまり」
「お前もあーいうので隠れれば見つかり難いだろうに」
「やりたいけど僕そこまで体術使えないもの」
「体術の問題なのか」
「うん。あれは魔力関係ないよ。よく気配を消すっていうでしょ。あれの、もうちょっと上級なやつだよ」
「へぇ」
今日新しく渡された書類の束を抱えながら、自室に戻る。
執務机に向かう途中で、今入ってきた扉が開いた。
「あ、フォリィア発見ー」
現れた人物を見て軽く目を見張る。
いつもはアクセサリーの類など耳飾しかつけないのに、今日は指輪やら腕輪やらを華美なほどつけ、さらに複雑な模様を描いた布をまとっている。
「……ルシェイド。何だその格好」
「あぁ、これ? 今かくれんぼしてるから」
「城は遊び場じゃないぞ」
「邪魔にならなきゃいいって、サファが言ってたよ」
あっさりという彼に、ため息で応える。
「……まぁ、邪魔をしないなら良いか……。しかしその格好、どちらかというと不利じゃないか?」
じゃらじゃらとしているから、動きにくそうだ。
「えぇと、これ封魔具なんだ。これがなかったら皆の居場所すぐわかっちゃう」
「……逆にお前が見つかりやすそうだがな」
「あはは。そんなことないよ。まぁ僕今鬼役から、説得力ないかもだけど」
「それはそうだ」
「ま、そんなことより、この部屋他に誰かいる?」
「それは人に聞いていいものなのか?」
「ルール違反じゃないよ」
「あいにく、私は今帰ってきたばかりだ。誰にも会ってはいないが、いないとはいえない」
「うーん。そっか。……まぁいいや。また後で来るね!」
首をかしげてから、彼は笑顔で部屋を出て行った。
軽い足音が遠ざかる。
軽くため息をついて、改めて執務机に向かう。
机の向こうに回ったところで足が止まった。
「……何やってるんだ、エディウス」
呆れたような口調で見下ろす先には、赤い髪。
ゆるくひとつに結んだそれが、川のように床に流れている。
彼はいつもと同じような表情としぐさでゆっくり振り向くと、人差し指を唇に当てた。
「……?」
「……隠れてるから……」
「……」
此処を遊び場にするな、と怒ろうとしたところで、扉が開いた。
入ってきたのはディリクだ。
扉の向こうを伺いながら足音も立てずに入ってくると、棚の影に隠れる。
「……お前もか」
げんなりして呟く。
彼はエディウスと同じように人差し指を唇に当て、静かに、と合図して、視線を扉に戻した。
すぐに、気配ごと、姿が見えなくなった。
「!?」
驚いて目を見張る。
もう一度よく見てみると、確かにそこにはディリクがいた。
「……」
驚いて凝視していると、ディリクが視線を向けた。
「あまり見るな。見つかるだろう」
「あ、あぁ、すまない」
何で謝ってるんだろうと思いつつ、書類を机の上に置く。
気配を察したのか、エディウスは座るのに邪魔じゃない場所まで移動していた。
「……」
諦めて、執務を始める。
執務机に向かう途中で、今入ってきた扉が開いた。
「あ、フォリィア発見ー」
現れた人物を見て軽く目を見張る。
いつもはアクセサリーの類など耳飾しかつけないのに、今日は指輪やら腕輪やらを華美なほどつけ、さらに複雑な模様を描いた布をまとっている。
「……ルシェイド。何だその格好」
「あぁ、これ? 今かくれんぼしてるから」
「城は遊び場じゃないぞ」
「邪魔にならなきゃいいって、サファが言ってたよ」
あっさりという彼に、ため息で応える。
「……まぁ、邪魔をしないなら良いか……。しかしその格好、どちらかというと不利じゃないか?」
じゃらじゃらとしているから、動きにくそうだ。
「えぇと、これ封魔具なんだ。これがなかったら皆の居場所すぐわかっちゃう」
「……逆にお前が見つかりやすそうだがな」
「あはは。そんなことないよ。まぁ僕今鬼役から、説得力ないかもだけど」
「それはそうだ」
「ま、そんなことより、この部屋他に誰かいる?」
「それは人に聞いていいものなのか?」
「ルール違反じゃないよ」
「あいにく、私は今帰ってきたばかりだ。誰にも会ってはいないが、いないとはいえない」
「うーん。そっか。……まぁいいや。また後で来るね!」
首をかしげてから、彼は笑顔で部屋を出て行った。
軽い足音が遠ざかる。
軽くため息をついて、改めて執務机に向かう。
机の向こうに回ったところで足が止まった。
「……何やってるんだ、エディウス」
呆れたような口調で見下ろす先には、赤い髪。
ゆるくひとつに結んだそれが、川のように床に流れている。
彼はいつもと同じような表情としぐさでゆっくり振り向くと、人差し指を唇に当てた。
「……?」
「……隠れてるから……」
「……」
此処を遊び場にするな、と怒ろうとしたところで、扉が開いた。
入ってきたのはディリクだ。
扉の向こうを伺いながら足音も立てずに入ってくると、棚の影に隠れる。
「……お前もか」
げんなりして呟く。
彼はエディウスと同じように人差し指を唇に当て、静かに、と合図して、視線を扉に戻した。
すぐに、気配ごと、姿が見えなくなった。
「!?」
驚いて目を見張る。
もう一度よく見てみると、確かにそこにはディリクがいた。
「……」
驚いて凝視していると、ディリクが視線を向けた。
「あまり見るな。見つかるだろう」
「あ、あぁ、すまない」
何で謝ってるんだろうと思いつつ、書類を机の上に置く。
気配を察したのか、エディウスは座るのに邪魔じゃない場所まで移動していた。
「……」
諦めて、執務を始める。
怖い、と思った。
首を絞められたあの時も。
狂人の白刃が迫ってきたあの時も。
怖い、なんて思わなかったのに。
戻るといった日に戻らなかった彼を心配して、物音には注意をしていた。
かすかな音に弾かれるように玄関先に出てみると、彼が倒れていた。
血に塗れ、息は浅い。
手当てはしてあったようだが、薄暗がりでもそれとはっきりわかるほどに顔色が悪かった。
今の自分の力では彼を家の中に運び入れることさえ大仕事だ。
それよりも誰かを呼んできた方が良い。
一瞬でそう判断をすると、彼をそのままにして村へと走った。
呼びに行ったのは、知識が豊富で信頼の置ける大人。
腕力は無いみたいだったので手伝って彼を家の中に運び入れた。
治療のためにと部屋から出され、聞こえる物音に耳を澄ませながら部屋の前でただ立ちすくんでいた。
このまま、死んでしまったら。
失われていく体温。
うつろな目。
両親の死を、自分はずっと見ていたのだ。
彼もいなくなる。
そう考えたら、指先から酷く冷えていくような気がした。
視界が暗い。
目が見えない。
今自分が踏みしめているものがわからない。
キィ、と静かな音がして目の前の扉が開く。
青年は一瞬酷く驚いた顔をして、それから視線を合わせるために少しかがんだ。
「中に、入りますか?」
青年の目を見上げ、頷く。
それを受けて青年は軽く頷くと、扉を大きく開け、通れる隙間を空けてくれた。
踏み出す足は萎えてしまっていて酷く歩きにくかったが、支えるように背中に添えられた青年の手が暖かくて、何とかベッドの脇まで進んだ。
血はぬぐわれていたが、顔色の悪さは変わらない。
否。
明かりがある分、余計に青白く見える。
土気色に近い。
縋るように青年を見上げると、青年は薄く微笑んだ。
「大丈夫ですよ。彼は丈夫ですから、意識が戻ればその分回復も早いでしょう」
安心させるように肩を叩いて、青年は部屋から出て行った。
ぽつん、と残される。
目の前に彼が居るのに、世界に自分ひとりしか居ないような、そんな頼りなさに動けなくなる。
目を離したら居なくなってしまいそうで、ずっと彼を見ていた。
途中何度か青年が治療をしにやってきたが、自分はその場を動かなかった。
ただじっと、彼の顔を見ていた。
どれだけそうしていたのか。
見付けたときのような浅い呼吸ではない、穏やかな息遣いがわずかに乱れた。
「……!」
ぎくりとして近くに行く。
しばらくじっと見ていると、かすかに眉を寄せて、彼が目を開いた。
ゆっくりと現れる、彼の目。
緑と黄色を混ぜた、けれど黄緑ではない不思議な色合いの目だ。
自分の、好きな色。
わずかに視線をさまよわせて、自分へと焦点が合う。
彼の唇が動き、けれど音が出る前に咳き込んだ。
その音にはっとして、身を翻した。
彼が起きた。
青年を呼びに行かなければ。
じっとしてばかりいたから、足が上手く言うことを利かない。
呼びに行って戻ってくると、まだ声が出ないようだったので急いで水を汲みに行く。
コップを差し出した自分に、いつもと同じ柔らかい笑顔で礼を言う彼に、落ち着かない気持ちになる。
彼の顔色はまだ悪い。
本当に、もう大丈夫なのだろうか。
「……もう、大丈夫ですよ」
うつむいた頭の先から落された言葉に、胸が苦しくなる。
目の前がゆがむ。
こみ上げてくる思いに耐え切れず、縋るように彼の胸に飛び込んだ。
怖い、と思った。
あの時も。
――あの時も。
覚えなかった感情。
失うことへの恐怖。
あんな思いは。
二度と。
首を絞められたあの時も。
狂人の白刃が迫ってきたあの時も。
怖い、なんて思わなかったのに。
戻るといった日に戻らなかった彼を心配して、物音には注意をしていた。
かすかな音に弾かれるように玄関先に出てみると、彼が倒れていた。
血に塗れ、息は浅い。
手当てはしてあったようだが、薄暗がりでもそれとはっきりわかるほどに顔色が悪かった。
今の自分の力では彼を家の中に運び入れることさえ大仕事だ。
それよりも誰かを呼んできた方が良い。
一瞬でそう判断をすると、彼をそのままにして村へと走った。
呼びに行ったのは、知識が豊富で信頼の置ける大人。
腕力は無いみたいだったので手伝って彼を家の中に運び入れた。
治療のためにと部屋から出され、聞こえる物音に耳を澄ませながら部屋の前でただ立ちすくんでいた。
このまま、死んでしまったら。
失われていく体温。
うつろな目。
両親の死を、自分はずっと見ていたのだ。
彼もいなくなる。
そう考えたら、指先から酷く冷えていくような気がした。
視界が暗い。
目が見えない。
今自分が踏みしめているものがわからない。
キィ、と静かな音がして目の前の扉が開く。
青年は一瞬酷く驚いた顔をして、それから視線を合わせるために少しかがんだ。
「中に、入りますか?」
青年の目を見上げ、頷く。
それを受けて青年は軽く頷くと、扉を大きく開け、通れる隙間を空けてくれた。
踏み出す足は萎えてしまっていて酷く歩きにくかったが、支えるように背中に添えられた青年の手が暖かくて、何とかベッドの脇まで進んだ。
血はぬぐわれていたが、顔色の悪さは変わらない。
否。
明かりがある分、余計に青白く見える。
土気色に近い。
縋るように青年を見上げると、青年は薄く微笑んだ。
「大丈夫ですよ。彼は丈夫ですから、意識が戻ればその分回復も早いでしょう」
安心させるように肩を叩いて、青年は部屋から出て行った。
ぽつん、と残される。
目の前に彼が居るのに、世界に自分ひとりしか居ないような、そんな頼りなさに動けなくなる。
目を離したら居なくなってしまいそうで、ずっと彼を見ていた。
途中何度か青年が治療をしにやってきたが、自分はその場を動かなかった。
ただじっと、彼の顔を見ていた。
どれだけそうしていたのか。
見付けたときのような浅い呼吸ではない、穏やかな息遣いがわずかに乱れた。
「……!」
ぎくりとして近くに行く。
しばらくじっと見ていると、かすかに眉を寄せて、彼が目を開いた。
ゆっくりと現れる、彼の目。
緑と黄色を混ぜた、けれど黄緑ではない不思議な色合いの目だ。
自分の、好きな色。
わずかに視線をさまよわせて、自分へと焦点が合う。
彼の唇が動き、けれど音が出る前に咳き込んだ。
その音にはっとして、身を翻した。
彼が起きた。
青年を呼びに行かなければ。
じっとしてばかりいたから、足が上手く言うことを利かない。
呼びに行って戻ってくると、まだ声が出ないようだったので急いで水を汲みに行く。
コップを差し出した自分に、いつもと同じ柔らかい笑顔で礼を言う彼に、落ち着かない気持ちになる。
彼の顔色はまだ悪い。
本当に、もう大丈夫なのだろうか。
「……もう、大丈夫ですよ」
うつむいた頭の先から落された言葉に、胸が苦しくなる。
目の前がゆがむ。
こみ上げてくる思いに耐え切れず、縋るように彼の胸に飛び込んだ。
怖い、と思った。
あの時も。
――あの時も。
覚えなかった感情。
失うことへの恐怖。
あんな思いは。
二度と。
ふと窓の外を見ると、背の高い青年の周りを小さな子供達が囲んでいた。
暫くその光景を眺めてから、彼は隣に立っている少年に声をかけた。
「……ルシェイド。ディリクに群がってるのは城下の子供か」
「うん。無愛想の癖に子供には好かれるみたいなんだよねぇ」
「へぇ」
しみじみと言うルシェイドに吐息で返事をする。
そのままじっと窓の外を見ていると、首をかしげてルシェイドが言う。
「……混ざりたいなら行ってきて良いよ」
「……いや。私はあまり子供に好かれていないから、泣かれるよりはここで見ていたほうが良い」
淡々と言うフォリィアを気の毒そうな目で見てから、こっそりとため息をついた。
(不憫な…)
声に出さず、窓の外に視線を戻す。
「まぁディリクも見かけによらず子供をあしらうのが上手だからねぇ」
「客商売だしな」
「あの店子供なんてこないのにね」
「しかし好意的な噂しか聞こえてこないから、合ってるんじゃないか?」
「……なら良いけどね」
肩を竦めて苦笑する。
フォリィアはもう一度吐息を零すと、振り返って机の上に詰まれた書類に手を伸ばした。
書類の山が三分の一ほど減った時、唐突に扉が開いてディリクが顔を出した。
どこか憔悴した顔で、憮然と呟く。
「……見ていたなら助けてくれ」
その言葉に、ルシェイドがにこりと笑って答えた。
「いやー? 楽しそうだったから」
「邪魔をしたらいけないかと思って」
顔を上げずにフォリィアが言葉を付け足す。
「……」
ディリクは盛大にため息をつくと、ソファに沈み込んだ。
暫くその光景を眺めてから、彼は隣に立っている少年に声をかけた。
「……ルシェイド。ディリクに群がってるのは城下の子供か」
「うん。無愛想の癖に子供には好かれるみたいなんだよねぇ」
「へぇ」
しみじみと言うルシェイドに吐息で返事をする。
そのままじっと窓の外を見ていると、首をかしげてルシェイドが言う。
「……混ざりたいなら行ってきて良いよ」
「……いや。私はあまり子供に好かれていないから、泣かれるよりはここで見ていたほうが良い」
淡々と言うフォリィアを気の毒そうな目で見てから、こっそりとため息をついた。
(不憫な…)
声に出さず、窓の外に視線を戻す。
「まぁディリクも見かけによらず子供をあしらうのが上手だからねぇ」
「客商売だしな」
「あの店子供なんてこないのにね」
「しかし好意的な噂しか聞こえてこないから、合ってるんじゃないか?」
「……なら良いけどね」
肩を竦めて苦笑する。
フォリィアはもう一度吐息を零すと、振り返って机の上に詰まれた書類に手を伸ばした。
書類の山が三分の一ほど減った時、唐突に扉が開いてディリクが顔を出した。
どこか憔悴した顔で、憮然と呟く。
「……見ていたなら助けてくれ」
その言葉に、ルシェイドがにこりと笑って答えた。
「いやー? 楽しそうだったから」
「邪魔をしたらいけないかと思って」
顔を上げずにフォリィアが言葉を付け足す。
「……」
ディリクは盛大にため息をつくと、ソファに沈み込んだ。
「な、何だこりゃ……!」
強制的につれてこられた家の中はひどい有様だった。
強盗でも入ったような様子だ。
「それがねぇ。青い表紙の本が見当たらなくて」
「お前探し物をしたいのか散らかしたいのかどっちだ」
「探してたらこうなったのよ」
「お前家中こんな有様なのか!?」
「うーん大体そうね」
思わず額を抑えて空を仰ぐ。
と、そこへもう一人現れた。
「あぁ、来てたんですか」
「今担がれてきたばかりだが」
「まぁゆっくりしていってください」
周りに視線も向けずに言う。
「この状況はスルーか? スルーなのか!?」
「あー……。まぁいつものことです」
「いつも!?」
「良いから手伝って」
「私は少し出かけてくる。後を頼みます」
「ねぇって」
「~~あぁもう! やりゃぁいいんだろうが!」
やけくそのように叫んで、床に散らばった本に手を伸ばした。
「お、終わった……」
ぜぇはぁと肩で息をしながら、その場に膝を着く。
「わぁきれい」
手を打って嬉しそうにするのを横目に見ながら、手に持ったそれを渡す。
「ほら、これだろ?」
差し出したのは水色の表紙の本。
それを見ると、礼を言って受け取りながら、もう一度差し出してきた。
「?」
「はい。これはあなたによ」
「え」
「探してたでしょ。町に行ったときに見かけたから、買っておいたの」
「あ、ありがとう」
受け取って礼を言うと、にこりと笑っていった。
「お礼は夕飯で良いわ」
「ま、まだ働かせる気か!?」
「だってご飯おいしいんだもの」
強制的につれてこられた家の中はひどい有様だった。
強盗でも入ったような様子だ。
「それがねぇ。青い表紙の本が見当たらなくて」
「お前探し物をしたいのか散らかしたいのかどっちだ」
「探してたらこうなったのよ」
「お前家中こんな有様なのか!?」
「うーん大体そうね」
思わず額を抑えて空を仰ぐ。
と、そこへもう一人現れた。
「あぁ、来てたんですか」
「今担がれてきたばかりだが」
「まぁゆっくりしていってください」
周りに視線も向けずに言う。
「この状況はスルーか? スルーなのか!?」
「あー……。まぁいつものことです」
「いつも!?」
「良いから手伝って」
「私は少し出かけてくる。後を頼みます」
「ねぇって」
「~~あぁもう! やりゃぁいいんだろうが!」
やけくそのように叫んで、床に散らばった本に手を伸ばした。
「お、終わった……」
ぜぇはぁと肩で息をしながら、その場に膝を着く。
「わぁきれい」
手を打って嬉しそうにするのを横目に見ながら、手に持ったそれを渡す。
「ほら、これだろ?」
差し出したのは水色の表紙の本。
それを見ると、礼を言って受け取りながら、もう一度差し出してきた。
「?」
「はい。これはあなたによ」
「え」
「探してたでしょ。町に行ったときに見かけたから、買っておいたの」
「あ、ありがとう」
受け取って礼を言うと、にこりと笑っていった。
「お礼は夕飯で良いわ」
「ま、まだ働かせる気か!?」
「だってご飯おいしいんだもの」