忍者ブログ
何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 ばたり、と縁側で寝転ぶ。
 今日も外はいい天気だ。
「あー、なんもやる気しねー」
 日差しから手でかばいながらぼやく。
「あいつは出かけたまま戻らないし、今日はもうのんびりしよう」
 よしそうしよう、と目を閉じる。
 緩やかに、風が吹いた。
 そのまままどろむようにごろごろしていると、不意に日が翳った。
 まぶしさに薄く目を開けると、太陽を背にしてこちらを見下ろす影があった。
「……具合悪いの?」
「いや? 今日はごろごろするんだ」
 言い捨ててごろりと横を向く。
 けれど。
「なら良かった。ちょっと来て欲しいのよ」
「お前俺の話し聞いてた?」
「聞いてたわよ。具合は悪くないんでしょ?」
「そうだけど。……いやそうじゃなくて!」
「良いからほら行くわよ」
 有無を言わせず手をつかみ立ち上がらせようとするのに抵抗する。
「離せ!」
「もう、しょうがないなぁ」
 困ったようにため息をつくと、掴んだ腕をそのままぐいと引っ張って肩に担ぎ上げた。
「あれ、軽くなった?」
「ばっ……おろせ!」
「暴れたら振り回すわよ」
 アリアはさらりと笑顔で言ってアィルを黙らせた。

「それで、返事はしたの?」
「え」
 ぎく、として動きを止める。
 最近一番の悩み事だ。
 手に持っていた縄を意味もなく結びながら、視線をそらす。
 はぁ、とため息をついて近寄ると、その縄を没収する。
「東旭。受けるにしても断るにしても、ちゃんと考えな。あと返事は早くね」
「う……」
 困ったように俯き、足元を見た。
 何の変哲もない、砂地だ。
「うん……」
 小さく頷いて、顔を上げた。
「わかった。……なるべく早く、返事するよ。冬杣」

-------------

「有難うございます」
「何が?」
 にこにこと礼を言った男を一瞥して、簡潔に帰す。
「東旭サンに、後押しをしてくださったそうで」
「……あぁ、別に」
 冬杣は男の顔をじっと見てから、にやりと笑った。
「その様子じゃ良い返事をもらえたみたいじゃないか。良かったな」
「ハイ」

 ごと、と荷物を床に下ろす。
 重い音がするのは、中に瓶があるからだ。
 市場で売っているのを見かけて、つい買ってきてしまった。
 荷物を整理して、最後に瓶を手に取る。
 少し考えてから、棚の奥に仕舞った。
 不意に顔を上げる。
 視線をドアの方に向けると、少しの後ノックの音が響いた。
「開いている」
 声をかけると、それに応えるようにドアが開いた。
「……お前、そんな言い方して客だったらどうすんだよ」
 顔を見せたのは、最近よく来る黒髪の少年だ。
「誰が来たかはわかっていた。問題ない。それより何か用か」
 淡々と言うと、アィルは呆れたようにため息をついて中に入ってきた。
「前に言ってた薬と、薬草、香草。貯まったから持ってきた」
「……あぁ、すまないな」
 差し出された袋を、礼を言って受け取る。
「構わねえよ。俺も珍しい品融通してもらってるしな!」
 快活に笑う少年はこれで腕の立つ薬師だ。
「今回は何かあるか?」
「……使えそうなものはこれといってないな」
「そうか。そりゃ残念」
「あぁでも少し待てば彼が……」
 言い掛けたところで何もない空間から一人の青年が顔を出した。
「……っと、間に合った?」
 首を傾げて視線を向けてくるので、それに応えてアィルを示す。
「あぁ良かった。はいこれ。アィル探してたでしょう」
 そう言ってばさりと花束を渡す。
 赤い花の束。
 独特の甘い匂いがする。
「……え、これ……。緋月草じゃないか! この時期咲かないのに!」
 驚いて思わず声を上げると、青年は軽く笑った。
「ちょうどそれがある時期に移動したからね。君が探してたのを思い出したんだよ」
「良いのかこれ……ありがとう!」
「まぁ僕には使い道ないし、いつもご飯もらってるしね」
「持って帰るならこれに入れると良い。十日ほどなら保つ」
「ありがとな! 今度来た時は腕によりをかけるぜ!」
「楽しみにしてるよ」
 笑顔でアィルを見送っていた青年に、呆れの混ざった声で問いかける。
「……どこから持ってきたんだ」
「大丈夫。ちゃんとしたとこだよ」
 笑顔で振り向く青年を見て、ため息をつく。
「あまり危険なことはするなよ」
 青年は少し困ったように微笑んだ。

 庭に向けて開け放たれた窓に腰掛け、空を見上げる。
 今日は晴天で、厚着をしなくてもすむほどに暖かい。
 微かに風が吹いて、後ろに流した髪を梳いていった。

「貴方が一人でいるとは珍しいですね」
 掛けられた声に顔を上げると、此処に来て見慣れた二人が立っていた。
「レーウィス、とアリア?」
「何、ぼんやりして。アィルは?」
「今は薬室にいるよ。調剤は手伝えないから、なんとなく此処で」
「ぼんやり日向ぼっこですか。老成した年寄りのようですよ」
 呆れ顔で言われた言葉に、アリアが笑う。
「そうよー。掃除でもしたら? この家無駄に広いんだから」
「掃除はアィルの方が上手なんだよ」
「上手になって見返してやればいいじゃない」
 腰に手を当てるアリアに、レーウィスはまだ呆れた顔をしている。
「貴方は未だに掃除をすると物を壊しますけどね」
「う……。こ、壊れやすいものを置いているのがいけないのよ」
「貴方にかかったらみんな壊れやすいものですよ」
 反論できずにアリアがレーウィスを上目遣いに睨む。

 と、家の奥から足音がして、アィルが顔を出した。
「……おう。何だ来てたのか」
「薬は?」
「あぁ、あとは少し寝かせておくだけだ」
「では、私たちはこれで」
「じゃーねー」
 手を振りながらその場を去っていった二人を見送りながら、アィルが首をかしげる。
「……? 何しに来たんだ?」
「さぁ。通りがかっただけみたいだよ」
「へぇ……」

「外に、行きたい?」

 半ば唐突にそう聞くと、彼は書類には知らせていた手を止め、顔を上げた。
「は?」
 怪訝そうに問い返す。
「いや、ずーっと城にこもりきりだから、どうかなぁと思って」
「どう、といわれても。仕事が多くてそんな暇無いんだが」
「目、悪くするよ?」
「今のところ大丈夫だ」
 言って、また書類に目を落とす。

「フォリィア様」
 扉を叩く音がして、男が顔を出した。
「どうした」
「来客です。どうしますか?」
「すぐ行く」
 手早く机の上を片付けると、上着を取って部屋を横切る。
 と、途中で足を止めて振り返る。
「休むなら隣に毛布があるから、そのまま横になるなよ」
「うん。いってらっしゃいー」
 笑顔で手を振る。
 彼は少し不思議そうな顔をして、けれどそのまま部屋を出て行った。
 扉が閉まり、気配が遠ざかってから、ソファに深く座りなおす。

「ごめんねぇ」
 ぽつり、と呟く。
「外には、出られないんだ」
 忙しいのも、あるけどね、と呟き、彼はソファの背に頭を預けて目を閉じた。

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9
«  Back :   HOME   : Next  »
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
沖縞 御津 または 逆凪。
趣味:
絵描き文書き睡眠。
自己紹介:
のんびり人生万歳。
1日20時間ほど寝れるんじゃないかと最近本気で思う。
でもこの頃睡眠時間が1~6時間と不規則気味。ていうか足りない。
最新記事
創作絵  (01/05)
創作文_異界  (05/04)
創作文  (04/20)
創作絵  (05/24)
創作文_神界  (02/23)
広告
PR

Copyright(C)2009-2012 Mitsu Okishima.All right reserved.
忍者ブログ [PR]