何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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扉に鍵をかけて、表通りへ向かう。
何日かに一度、食料や日用品を買いに表通りまで出向く。
表通りには行かなくとも、移動手段があるのでどんな遠い町でも行こうと思えば行くことができた。
けれど、なんとなく、この町が気に入っていたのでよく表通りを使用していたし、だからこそ住み着いても居た。
適当に買い物を済ませて、家に戻る。
喧騒はいつもどおり。
変わったところなど何もない。
買ってきたものを整理して、椅子に腰を下ろす。
薄暗い部屋内に視線をめぐらせ、細く息を吐いた。
平和だ。
それがつかの間に過ぎないとしても。
今、この時だけは。
何日かに一度、食料や日用品を買いに表通りまで出向く。
表通りには行かなくとも、移動手段があるのでどんな遠い町でも行こうと思えば行くことができた。
けれど、なんとなく、この町が気に入っていたのでよく表通りを使用していたし、だからこそ住み着いても居た。
適当に買い物を済ませて、家に戻る。
喧騒はいつもどおり。
変わったところなど何もない。
買ってきたものを整理して、椅子に腰を下ろす。
薄暗い部屋内に視線をめぐらせ、細く息を吐いた。
平和だ。
それがつかの間に過ぎないとしても。
今、この時だけは。
「アリア。あいつ見なかったか?」
「見てないわよ。どうかしたの?」
開いたままの扉を軽く叩いて声をかけると、模様替えをしていたのか身長よりも高い棚を抱えたアリアが首を傾げて応えた。
「あー、ちょっと出てくる、って言って帰ってこないんだが」
持っていた棚を、目的地であろう壁際に置くと、ちょっと待ってね、と言いおいて姿を消した。
見るとはなしに棚を見上げる。
大人二人がかりで持ち上げてもなお重そうな棚を、先ほどアリアは特に苦しそうでもなく運んでいた。
「相変わらず力持ちだな……」
ぽつりと呟いて、戻ってくるのを待つ。
程なくしてアリアが小走りに戻ってきた。
「レーウィスに聞いたんだけど、今は城に行ってるそうよ」
「あぁ、そうか。……迷子じゃないならいい」
「帰り道に迷わなければ、今日の夜には戻ると思うわ。急ぎの用事があるなら言付けるけど?」
軽く言われ、いや、と断る。
アリアは少し考えるように首をかしげて、部屋を見回した。
「うーん。アィルは今日忙しいの?」
「いや、そんなことはないよ」
きょとんとして答えると、アリアは笑って言った。
「じゃあ手伝っていって。途中で帰ってきてもいいように、こっちに居るって言っとくから」
「……良いけど、俺はお前ほど力ないぞ」
「そんなのわかってるわよ。あたし器用じゃないから、細かい作業をお願いしたいの」
「そういうことなら、手伝おう」
頷いて入ってきたアィルに、アリアは笑顔で迎えた。
「見てないわよ。どうかしたの?」
開いたままの扉を軽く叩いて声をかけると、模様替えをしていたのか身長よりも高い棚を抱えたアリアが首を傾げて応えた。
「あー、ちょっと出てくる、って言って帰ってこないんだが」
持っていた棚を、目的地であろう壁際に置くと、ちょっと待ってね、と言いおいて姿を消した。
見るとはなしに棚を見上げる。
大人二人がかりで持ち上げてもなお重そうな棚を、先ほどアリアは特に苦しそうでもなく運んでいた。
「相変わらず力持ちだな……」
ぽつりと呟いて、戻ってくるのを待つ。
程なくしてアリアが小走りに戻ってきた。
「レーウィスに聞いたんだけど、今は城に行ってるそうよ」
「あぁ、そうか。……迷子じゃないならいい」
「帰り道に迷わなければ、今日の夜には戻ると思うわ。急ぎの用事があるなら言付けるけど?」
軽く言われ、いや、と断る。
アリアは少し考えるように首をかしげて、部屋を見回した。
「うーん。アィルは今日忙しいの?」
「いや、そんなことはないよ」
きょとんとして答えると、アリアは笑って言った。
「じゃあ手伝っていって。途中で帰ってきてもいいように、こっちに居るって言っとくから」
「……良いけど、俺はお前ほど力ないぞ」
「そんなのわかってるわよ。あたし器用じゃないから、細かい作業をお願いしたいの」
「そういうことなら、手伝おう」
頷いて入ってきたアィルに、アリアは笑顔で迎えた。
「暇なんだよ」
「帰れ」
開口一番そう言った彼に、容赦なく言い放つ。
客の来る予定もなかったので、店の中を整理していた時だった。
鍵をかけていたはずの扉を開けて入ってきた彼は、カウンターまでまっすぐに歩いてくるとそのままそこに腰を下ろした。
手元が暗いと棚に置いてある品物の状態が見にくいので、珍しく店内は明るい。
おかげで沈んだ様子の彼の表情も見て取れた。
だからと言って戯言に付き合う気はない。
彼は酷く恨みがましい表情で視線を向けてきた。
「酷い。久しぶりに会ったのに」
「久しぶりに会ったところで私は暇ではない」
「……暇だから整理してるんじゃないの?」
「暇つぶしでやってるわけではない」
「えー」
疑わしそうにため息をついて、手近にあった品物を手に取る。
丸い、卵形の何か。
「……何これ」
「不用意に触るな。壊れたらどうする」
ルシェイドは少し悲しそうに眉をひそめて、元の位置に戻す。
「昔はあんなにかわいかったのに、何でそんな無愛想になっちゃったんだろう」
はぁ、と大げさなため息に、こちらもため息をつきたくなる。
「……やることはいろいろあるんじゃないのかお前」
「うーん……。あるにはあるけど、放っておいても平気なものばかりだし、他の人は忙しそうだし」
こちらは暇ではないと言ったばかりなのに、聞き入れてもらえなかったのだろうか。
カウンターはそれほど高くはないが、ルシェイドの今の身長では少し高い。
届かない地面に視線を落し、足を揺らしている。
軽くため息をついて、別の棚に向かう。
視界に入り難い位置にある箱から、瓶をひとつ取り出す。
瓶に入っているのは、割と質のいい酒だ。
ディリクがそれをカウンターに置くと、ルシェイドはどこからともなくグラスを二つ取り出した。
「……あるのを知ってたな」
「偶然だよ」
にやり、と彼が笑う。
ため息をついて、瓶の栓を開けた。
「帰れ」
開口一番そう言った彼に、容赦なく言い放つ。
客の来る予定もなかったので、店の中を整理していた時だった。
鍵をかけていたはずの扉を開けて入ってきた彼は、カウンターまでまっすぐに歩いてくるとそのままそこに腰を下ろした。
手元が暗いと棚に置いてある品物の状態が見にくいので、珍しく店内は明るい。
おかげで沈んだ様子の彼の表情も見て取れた。
だからと言って戯言に付き合う気はない。
彼は酷く恨みがましい表情で視線を向けてきた。
「酷い。久しぶりに会ったのに」
「久しぶりに会ったところで私は暇ではない」
「……暇だから整理してるんじゃないの?」
「暇つぶしでやってるわけではない」
「えー」
疑わしそうにため息をついて、手近にあった品物を手に取る。
丸い、卵形の何か。
「……何これ」
「不用意に触るな。壊れたらどうする」
ルシェイドは少し悲しそうに眉をひそめて、元の位置に戻す。
「昔はあんなにかわいかったのに、何でそんな無愛想になっちゃったんだろう」
はぁ、と大げさなため息に、こちらもため息をつきたくなる。
「……やることはいろいろあるんじゃないのかお前」
「うーん……。あるにはあるけど、放っておいても平気なものばかりだし、他の人は忙しそうだし」
こちらは暇ではないと言ったばかりなのに、聞き入れてもらえなかったのだろうか。
カウンターはそれほど高くはないが、ルシェイドの今の身長では少し高い。
届かない地面に視線を落し、足を揺らしている。
軽くため息をついて、別の棚に向かう。
視界に入り難い位置にある箱から、瓶をひとつ取り出す。
瓶に入っているのは、割と質のいい酒だ。
ディリクがそれをカウンターに置くと、ルシェイドはどこからともなくグラスを二つ取り出した。
「……あるのを知ってたな」
「偶然だよ」
にやり、と彼が笑う。
ため息をついて、瓶の栓を開けた。
カップに入った暖かいお茶を飲みながら、一息つく。
日差しはとても柔らかく、暖かい。
けれど風が少し冷たいので、暖かいお茶は確かにありがたかった。
「あぁ、やっぱりアィルの入れるお茶って美味しいわ」
「お褒めに預かりどうも」
向かいに座って自身の入れた茶をすすりながら、アィルが応える。
「アリア、頼んでいた荷は?」
庭に続く扉が開き、道具屋の店主が顔を出した。
「あぁ、あれ届いたの?」
「表通りにあるわよ。レーウィスが別の交渉してるから、私だけ先にこっちへ来たの」
横から口を出すルシェイドに頷きながら、アリアが言う。
「できれば今使いたい。持ってきてくれないか」
「か弱い女性に力仕事をさせるの?」
「女性であることは見ればわかるが、か弱いということには同意できない」
「あら、随分な言いようね」
「ここにいる誰よりも腕力があるくせに何を言う」
「あなたたちが軟弱なのよ」
さらりと言い切ったアリアに、まわりが絶句する。
笑いを漏らしたのはルシェイドだ。
「軟弱ときたか」
「アリアからしたらほとんどの人間は軟弱じゃねぇ?」
呆れたようにアィルが言う。
アリアは少し考えた後、苦笑して肩をすくめた。
そのまま中庭を出て行く。
おそらく荷を取りに行ったのだろう。
「……言い過ぎた、かな」
アィルが眉をひそめる。
「自分でもわかってるけど、改めて他人に言われると反発したくなるものだよ」
「荷のところにはレーウィスがいるんだろう。なら問題ない」
さらりと言って、ディリクは店内に消えた。
日差しはとても柔らかく、暖かい。
けれど風が少し冷たいので、暖かいお茶は確かにありがたかった。
「あぁ、やっぱりアィルの入れるお茶って美味しいわ」
「お褒めに預かりどうも」
向かいに座って自身の入れた茶をすすりながら、アィルが応える。
「アリア、頼んでいた荷は?」
庭に続く扉が開き、道具屋の店主が顔を出した。
「あぁ、あれ届いたの?」
「表通りにあるわよ。レーウィスが別の交渉してるから、私だけ先にこっちへ来たの」
横から口を出すルシェイドに頷きながら、アリアが言う。
「できれば今使いたい。持ってきてくれないか」
「か弱い女性に力仕事をさせるの?」
「女性であることは見ればわかるが、か弱いということには同意できない」
「あら、随分な言いようね」
「ここにいる誰よりも腕力があるくせに何を言う」
「あなたたちが軟弱なのよ」
さらりと言い切ったアリアに、まわりが絶句する。
笑いを漏らしたのはルシェイドだ。
「軟弱ときたか」
「アリアからしたらほとんどの人間は軟弱じゃねぇ?」
呆れたようにアィルが言う。
アリアは少し考えた後、苦笑して肩をすくめた。
そのまま中庭を出て行く。
おそらく荷を取りに行ったのだろう。
「……言い過ぎた、かな」
アィルが眉をひそめる。
「自分でもわかってるけど、改めて他人に言われると反発したくなるものだよ」
「荷のところにはレーウィスがいるんだろう。なら問題ない」
さらりと言って、ディリクは店内に消えた。
薄暗い、というよりほぼ真っ暗な部屋の中で、彼はふと顔をあげた。
路地裏に面した、外に通じる唯一の扉が、かすかに音を立てた。
それはすぐに叩くような激しい音となり、彼は不愉快そうに眉を寄せた。
一瞬音が途切れた。
次の瞬間、ばたん、と盛大な音を立てて扉が開いた。
否、開いた、というよりも開かされた、が正しいだろうか。
扉は軋んだ音とともに、内側に倒れこんだ。
鍵がかかっていたはずの扉は、扉を開ける力に屈して蝶番の部分から壊れていた。
倒れた拍子に舞った埃が、あたりに散っている。
路地裏からの逆光の中に立つ人物は軽く咳き込みながら中に入ってきた。
ほっそりとした柔らかい輪郭は、女性のものだ。
「建て付け悪いわよこのドア」
両手を腰に当て、文句を言う彼女にため息で応える。
「あれは建て付けじゃなくて鍵がかかってたんだ」
立ち上がり、ドアを直す。
扉自体は無事だが、蝶番や、鍵の部分が変形してしまっている。
ため息をついて扉を元の位置にはめると、一言、「言葉」をつぶやく。
途端、淡く光る光の帯が扉に複雑な模様を描いた。
光が消えると、何事もなかったかのように扉が閉まっていた。
同時に、店内に暗闇が戻る。
「暗いわ。明かりないの?」
「今日は休みだからな」
「営業中だって暗いって聞いたわよ」
「暗い方が品物の保管状態が良いんだ」
彼女はふぅん、と言ってカウンターにあった角灯に明かりを灯した。
柔らかな淡い光に照らされ、彼女が振り返る。
「改めて、久しぶりね。ディリク」
「……アリア。来る時には前もって言うか、ノックをするようにしてくれ。毎回扉を壊されたのではこちらが困る」
「開けてなさいよ。お店なんだから」
「年中無休にできるわけがないだろう」
「あぁ、そうか、ひとりでやってるんだものね」
角灯を持ったままカウンターを回り、奥へと進む。
途中でくるりと振り返り、首をかしげた。
「皆もう来てるんでしょ? 何してるの」
さっさと来い、ということか。 彼はため息をついて後を追った。
路地裏に面した、外に通じる唯一の扉が、かすかに音を立てた。
それはすぐに叩くような激しい音となり、彼は不愉快そうに眉を寄せた。
一瞬音が途切れた。
次の瞬間、ばたん、と盛大な音を立てて扉が開いた。
否、開いた、というよりも開かされた、が正しいだろうか。
扉は軋んだ音とともに、内側に倒れこんだ。
鍵がかかっていたはずの扉は、扉を開ける力に屈して蝶番の部分から壊れていた。
倒れた拍子に舞った埃が、あたりに散っている。
路地裏からの逆光の中に立つ人物は軽く咳き込みながら中に入ってきた。
ほっそりとした柔らかい輪郭は、女性のものだ。
「建て付け悪いわよこのドア」
両手を腰に当て、文句を言う彼女にため息で応える。
「あれは建て付けじゃなくて鍵がかかってたんだ」
立ち上がり、ドアを直す。
扉自体は無事だが、蝶番や、鍵の部分が変形してしまっている。
ため息をついて扉を元の位置にはめると、一言、「言葉」をつぶやく。
途端、淡く光る光の帯が扉に複雑な模様を描いた。
光が消えると、何事もなかったかのように扉が閉まっていた。
同時に、店内に暗闇が戻る。
「暗いわ。明かりないの?」
「今日は休みだからな」
「営業中だって暗いって聞いたわよ」
「暗い方が品物の保管状態が良いんだ」
彼女はふぅん、と言ってカウンターにあった角灯に明かりを灯した。
柔らかな淡い光に照らされ、彼女が振り返る。
「改めて、久しぶりね。ディリク」
「……アリア。来る時には前もって言うか、ノックをするようにしてくれ。毎回扉を壊されたのではこちらが困る」
「開けてなさいよ。お店なんだから」
「年中無休にできるわけがないだろう」
「あぁ、そうか、ひとりでやってるんだものね」
角灯を持ったままカウンターを回り、奥へと進む。
途中でくるりと振り返り、首をかしげた。
「皆もう来てるんでしょ? 何してるの」
さっさと来い、ということか。 彼はため息をついて後を追った。