何かいろいろ創作物を入れていこうと思います。広告変更してみた。
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頬を風が撫でていく。
目の前に広がる空は青く、視界の淵にすら大地の姿は見えなかった。
けれど少し視線をずらせば風にそよぐ草が見える。
体の下の柔らかな草の感触を楽しみながら、肺から息を吐き出した。
「……こんなところに居たのか」
何処か疲れた声が、頭の上の方から聞こえた。
起き上がらずに、視線だけ向ける。
全身が薄汚れた男が立っていた。
自分も似たようなものだろうな、と目を細める。
「どうしたの、イーゼ」
寝転がった姿勢のまま動きもせずに呟く。
イーゼは彼の隣に腰を下ろすと、大きくため息を吐いた。
「……お前は、行かなくていいのか」
視線を前に向けて、イーゼが問う。
それには答えず、目を閉じた。
視界を遮れば、風が流れていくのがわかる。
しばらくのあと、ぽつりと言った。
「俺が行っても仕方ないでしょ」
「お前が、率いてきた隊だろう。ルース」
イーゼが来た方角からは、歓声が聞こえている。
生き残った、村人の。
「……やっぱり、性に合わないなぁ。あーいうのは、俺は嫌だよ」
呟く声は静かで、平坦だった。
けれどそういう話し方をする時の彼が落ち込んでいるのだと分かるほどには、イーゼもルースとの付き合いは長かった。
鎧にも服にも靴にも、赤黒い汚れがついている。
眠っているかのように目を閉じて動かないルースに一瞥を投げて、イーゼは立ち上がった。
「……落ち着いたら戻って来いよ」
言い置いて、彼はもと来た道を引き返した。
また一人になった。
ルースは半身を起こすと、視線を地面に落とした。
体を支える為についた手には、赤い汚れがついている。
爪の間にも入り込んでいるので、洗うのが大変だろう。
むせ返るようだった臭いは、風があらかた流してくれていた。
立ち上がって眼下を見下ろす。
イーゼが去ったのと反対方向には、凄惨な死体が山となっていた。
目の前に広がる空は青く、視界の淵にすら大地の姿は見えなかった。
けれど少し視線をずらせば風にそよぐ草が見える。
体の下の柔らかな草の感触を楽しみながら、肺から息を吐き出した。
「……こんなところに居たのか」
何処か疲れた声が、頭の上の方から聞こえた。
起き上がらずに、視線だけ向ける。
全身が薄汚れた男が立っていた。
自分も似たようなものだろうな、と目を細める。
「どうしたの、イーゼ」
寝転がった姿勢のまま動きもせずに呟く。
イーゼは彼の隣に腰を下ろすと、大きくため息を吐いた。
「……お前は、行かなくていいのか」
視線を前に向けて、イーゼが問う。
それには答えず、目を閉じた。
視界を遮れば、風が流れていくのがわかる。
しばらくのあと、ぽつりと言った。
「俺が行っても仕方ないでしょ」
「お前が、率いてきた隊だろう。ルース」
イーゼが来た方角からは、歓声が聞こえている。
生き残った、村人の。
「……やっぱり、性に合わないなぁ。あーいうのは、俺は嫌だよ」
呟く声は静かで、平坦だった。
けれどそういう話し方をする時の彼が落ち込んでいるのだと分かるほどには、イーゼもルースとの付き合いは長かった。
鎧にも服にも靴にも、赤黒い汚れがついている。
眠っているかのように目を閉じて動かないルースに一瞥を投げて、イーゼは立ち上がった。
「……落ち着いたら戻って来いよ」
言い置いて、彼はもと来た道を引き返した。
また一人になった。
ルースは半身を起こすと、視線を地面に落とした。
体を支える為についた手には、赤い汚れがついている。
爪の間にも入り込んでいるので、洗うのが大変だろう。
むせ返るようだった臭いは、風があらかた流してくれていた。
立ち上がって眼下を見下ろす。
イーゼが去ったのと反対方向には、凄惨な死体が山となっていた。
ぱたぱた、と軽い足音が響く。
人気の無い早朝に、短剣だけ腰帯につけて廊下を走っている。
急いでいる様子は見受けられない。
やがて目的地に到達すると、彼は首をかしげながら目の前の扉を叩いた。
返事を待たずに扉を開ける。
部屋に一歩踏み込んだ途端、飛んできたものを片手で受け取った。
手に取ったそれを見ると、腕の長さほどの定規だった。
「危ないなぁ」
ポツリと呟いて奥へ進む。
「勝手に入ってきて偉そうなこと言うな」
部屋の主は憮然とした表情で片手を差し出す。
その上に定規を置きながら、彼は机の上を覗き込んだ。
「また徹夜?」
「おう。誰かさんが出掛けたきり戻ってこないから仕方なくな」
「出掛けるって言っておいたじゃないか」
「日にちをまたぐならそれも言っておけ」
むぅ、とむくれて手近な椅子に腰を下ろす。
「あ、これお土産」
思い出したように言って、何かを投げてよこした。
「……何だこれ。羽?」
「うん。今、それいっぱい手に入るから」
と言いかけたところで、虚空から声が響いた。
「……それ、何処から持ってきたの」
声のする方に顔を向けると、青緑の髪の青年が立っていた。
笑顔のはずなのに、空気が重い。
「ルシェイド。……ってことは、お前……まさか」
羽を片手に持ったまま胡乱な視線を向けると、彼は笑顔で視線をそらした。
「ルース……勝手に持ってくるなって何度も言ってるよね? いい加減覚えてくれないかなぁ」
にこりと笑いながら、彼に詰め寄る。
呆れたようにため息を吐いて、羽をルシェイドに渡す。
それを見てルースが残念そうな声を上げた。
「折角持ってきたのにー」
「もらってどうしろっていうんだ」
「そもそも持ってくるなって言ったはずだよ」
二人から責められて、はーい、と拗ねたように返事をする。
「……分かってなさそうだな」
「……何回言っても無駄な気がしてきたよ」
二人がげんなりと視線を交わす。
「まぁでも土産と称して渡すのは主に君だけみたいだし、僕としては楽なんだけど」
「それもどうよ」
人気の無い早朝に、短剣だけ腰帯につけて廊下を走っている。
急いでいる様子は見受けられない。
やがて目的地に到達すると、彼は首をかしげながら目の前の扉を叩いた。
返事を待たずに扉を開ける。
部屋に一歩踏み込んだ途端、飛んできたものを片手で受け取った。
手に取ったそれを見ると、腕の長さほどの定規だった。
「危ないなぁ」
ポツリと呟いて奥へ進む。
「勝手に入ってきて偉そうなこと言うな」
部屋の主は憮然とした表情で片手を差し出す。
その上に定規を置きながら、彼は机の上を覗き込んだ。
「また徹夜?」
「おう。誰かさんが出掛けたきり戻ってこないから仕方なくな」
「出掛けるって言っておいたじゃないか」
「日にちをまたぐならそれも言っておけ」
むぅ、とむくれて手近な椅子に腰を下ろす。
「あ、これお土産」
思い出したように言って、何かを投げてよこした。
「……何だこれ。羽?」
「うん。今、それいっぱい手に入るから」
と言いかけたところで、虚空から声が響いた。
「……それ、何処から持ってきたの」
声のする方に顔を向けると、青緑の髪の青年が立っていた。
笑顔のはずなのに、空気が重い。
「ルシェイド。……ってことは、お前……まさか」
羽を片手に持ったまま胡乱な視線を向けると、彼は笑顔で視線をそらした。
「ルース……勝手に持ってくるなって何度も言ってるよね? いい加減覚えてくれないかなぁ」
にこりと笑いながら、彼に詰め寄る。
呆れたようにため息を吐いて、羽をルシェイドに渡す。
それを見てルースが残念そうな声を上げた。
「折角持ってきたのにー」
「もらってどうしろっていうんだ」
「そもそも持ってくるなって言ったはずだよ」
二人から責められて、はーい、と拗ねたように返事をする。
「……分かってなさそうだな」
「……何回言っても無駄な気がしてきたよ」
二人がげんなりと視線を交わす。
「まぁでも土産と称して渡すのは主に君だけみたいだし、僕としては楽なんだけど」
「それもどうよ」
「アタシと結婚してくれませんか」
特に何の変哲も無い、いつもの日常はそんな一言で破られた。
踏青も薄氷も島を出て数ヶ月、ようやく残った者も落ち着いてきたところだった。
「私らが居るのを忘れてないか?」
いつものように厳しい声で、けれど少し呆れた色も混ぜて、冬杣が声を掛ける。
「忘れちゃいませんヨ。でも、言うなら今がいいかと思いまして」
にこりと、糸目の彼が笑う。
肩をすくめて冬杣がこちらを振り返る。
「……東旭、固まってないで何とかしな」
「うぇっ!?」
あまりにも驚きすぎて変な声が出てしまった。
いつもいつも頭領なのに子ども扱いされて怒ったりはしたけど、こんなのは初めてだ。
何かするにもどう反応して良いかわからない。
困ったように目じりを下げて、事の元凶である酒星が東旭の頭を撫でた。
「まァ、返事は急ぎませんヨ。のんびり待ちますから、考えて置いてください」
笑顔のまま、それじゃあ、と片手を上げて酒星はくるりと背を向けて浜の方に歩いて行ってしまった。
残された彼らは作業の手を止め、歩み去る酒星と東旭を交互に見ている。
「ど」
固まっていた東旭は勢い良く冬杣へと振り返った。
「どうしよう!?」
「知らん」
半眼で一蹴された。
「そんなこと言わずに!」
食い下がると、嫌そうな顔をして顎をしゃくった。
「そういうのは当事者の問題だ。私が口を出すのは筋違いってもんだよ」
「だってあたしあんなこと言われたことないよー!」
パニックになって頭を抱える東旭を、周りの者は温かい目で見守っていた。
特に何の変哲も無い、いつもの日常はそんな一言で破られた。
踏青も薄氷も島を出て数ヶ月、ようやく残った者も落ち着いてきたところだった。
「私らが居るのを忘れてないか?」
いつものように厳しい声で、けれど少し呆れた色も混ぜて、冬杣が声を掛ける。
「忘れちゃいませんヨ。でも、言うなら今がいいかと思いまして」
にこりと、糸目の彼が笑う。
肩をすくめて冬杣がこちらを振り返る。
「……東旭、固まってないで何とかしな」
「うぇっ!?」
あまりにも驚きすぎて変な声が出てしまった。
いつもいつも頭領なのに子ども扱いされて怒ったりはしたけど、こんなのは初めてだ。
何かするにもどう反応して良いかわからない。
困ったように目じりを下げて、事の元凶である酒星が東旭の頭を撫でた。
「まァ、返事は急ぎませんヨ。のんびり待ちますから、考えて置いてください」
笑顔のまま、それじゃあ、と片手を上げて酒星はくるりと背を向けて浜の方に歩いて行ってしまった。
残された彼らは作業の手を止め、歩み去る酒星と東旭を交互に見ている。
「ど」
固まっていた東旭は勢い良く冬杣へと振り返った。
「どうしよう!?」
「知らん」
半眼で一蹴された。
「そんなこと言わずに!」
食い下がると、嫌そうな顔をして顎をしゃくった。
「そういうのは当事者の問題だ。私が口を出すのは筋違いってもんだよ」
「だってあたしあんなこと言われたことないよー!」
パニックになって頭を抱える東旭を、周りの者は温かい目で見守っていた。
ごとん、と音を立てて荷物を降ろす。
中身は衝撃に弱いものではない。
多少粗雑に扱っても問題は無いものだ。
一息ついて、部屋を見回す。
薄汚れた部屋には、棚が林立していて、ところどころに開けていない箱が置いてあった。
明り取り用の窓も無いその部屋は、四隅に置いたランプで何とか見えるくらいにはなっている。
表に置いてあった箱を全て部屋の中に移すと、一番手近にある箱から開けていく。
中に何が入っているかは大体把握しているが、外からでは同じ箱ばかりでよく分からない。
仕方なしに、空けた中身を取り出しては棚に移していく。
最初の一つは壜だった。
中には様々な色の液体や葉や石が入っている。
道理で重たかったわけだ。
ため息をつきながらそれらを全て棚に出すと、次の箱に向かう。
こちらの箱は布だった。
各種生地と、彩りは全て違う。
布だから一枚は軽いが、箱いっぱいに入っているとそれなりに重い。
同じように棚に移す。
そうやって半分ほどの箱を空き箱にしたところで、外に通じる扉と反対側にある扉が開いた。
ランプの明かりに照らされた顔を見て、怪訝そうな表情を向ける。
「手伝おうか?」
そう言った訪問者は空いていない箱を指差して首を傾げる。
「……いや、良い。何か用か、ルシェイド」
自分のものに比べて遥かに細い少年の腕を見て断ると、ルシェイドは眉をしかめて大きな机に座った。
「折角親切で言ってるのに。下心なんて無いよ」
「……そうじゃない」
言いかけたが、上手い言葉が出てこなくてまた黙々と作業を開始した。
「君が店を始めるって聞いたときは素直に驚いたけど、……内装を見てさらに驚きだね。何の店?」
呆れたような声で、箱の一つから小さな箱を取り出す。
何だこれ、と呟きながら箱を開けようとする。
けれど。
「……これどうやって空けんの?」
空け口が見つからなかったのか、ルシェイドは困惑して作業をする彼の元へきた。
差し出された箱を見て、彼はおもむろに箱の一面をスライドさせた。
それに連動していくつかを移動し、引き出しのように中を開ける。
中からは小さなちりめん袋が転がり出てきた。
ほのかな良い香りがする。
「へぇ、良い香り。これはセットなんだ?」
「いや別に。箱は細工箱だ。中の袋は、西の大陸で買った」
淡々と説明をして、箱をルシェイドに戻す。
返してもらった箱を繁々と眺めて、元通りの箱に戻すと、それを棚に置いた。
また机に座りなおす。
「ディリク……何故、店をやろうと思ったの?」
不意に、沈んだような平坦な声で問われ、ディリクが動きを止める。
暫くの思案のあと、彼は口を開いた。
「言ったはずだ。理由など無いと。私には先見の力は無い。――ルシェイド、お前が何を視たのかは知らないが、やらない方が良い理由があるのか?」
逆に問うと、ルシェイドは一瞬目を伏せるといつものように笑った。
「そんなこと無いよ。いっぱいお客さん来ると良いね」
「繁盛させるのが目的なら裏道に店など構えない」
表情に出ないようにと殊更憮然とした表情をして、ディリクが皮肉を返す。
ルシェイドは、そうだね、と言って笑った。
出会った時から、見た目は殆ど変わらない。
少年から青年の姿を行ったり来たりするのは見ているが、それだけだ。
貼りついたような笑顔は、正直好きではない。
何もかも閉じ込めてしまっているような気がするからだ。
そんな思いもきっと分かっているのだろう。
ルシェイドは少し困ったように笑うと、勢いをつけて机から飛び降りた。
「それじゃあね。次は開店してから来るよ」
言って手を振ると、ディリクの返事を待たずにその場から姿を消した。
そういえば、最初に会った頃はディリクの方が背が低く、あんな笑顔もしなかったのに、と、ルシェイドが消えた場所をぼんやり見ながら思った。
中身は衝撃に弱いものではない。
多少粗雑に扱っても問題は無いものだ。
一息ついて、部屋を見回す。
薄汚れた部屋には、棚が林立していて、ところどころに開けていない箱が置いてあった。
明り取り用の窓も無いその部屋は、四隅に置いたランプで何とか見えるくらいにはなっている。
表に置いてあった箱を全て部屋の中に移すと、一番手近にある箱から開けていく。
中に何が入っているかは大体把握しているが、外からでは同じ箱ばかりでよく分からない。
仕方なしに、空けた中身を取り出しては棚に移していく。
最初の一つは壜だった。
中には様々な色の液体や葉や石が入っている。
道理で重たかったわけだ。
ため息をつきながらそれらを全て棚に出すと、次の箱に向かう。
こちらの箱は布だった。
各種生地と、彩りは全て違う。
布だから一枚は軽いが、箱いっぱいに入っているとそれなりに重い。
同じように棚に移す。
そうやって半分ほどの箱を空き箱にしたところで、外に通じる扉と反対側にある扉が開いた。
ランプの明かりに照らされた顔を見て、怪訝そうな表情を向ける。
「手伝おうか?」
そう言った訪問者は空いていない箱を指差して首を傾げる。
「……いや、良い。何か用か、ルシェイド」
自分のものに比べて遥かに細い少年の腕を見て断ると、ルシェイドは眉をしかめて大きな机に座った。
「折角親切で言ってるのに。下心なんて無いよ」
「……そうじゃない」
言いかけたが、上手い言葉が出てこなくてまた黙々と作業を開始した。
「君が店を始めるって聞いたときは素直に驚いたけど、……内装を見てさらに驚きだね。何の店?」
呆れたような声で、箱の一つから小さな箱を取り出す。
何だこれ、と呟きながら箱を開けようとする。
けれど。
「……これどうやって空けんの?」
空け口が見つからなかったのか、ルシェイドは困惑して作業をする彼の元へきた。
差し出された箱を見て、彼はおもむろに箱の一面をスライドさせた。
それに連動していくつかを移動し、引き出しのように中を開ける。
中からは小さなちりめん袋が転がり出てきた。
ほのかな良い香りがする。
「へぇ、良い香り。これはセットなんだ?」
「いや別に。箱は細工箱だ。中の袋は、西の大陸で買った」
淡々と説明をして、箱をルシェイドに戻す。
返してもらった箱を繁々と眺めて、元通りの箱に戻すと、それを棚に置いた。
また机に座りなおす。
「ディリク……何故、店をやろうと思ったの?」
不意に、沈んだような平坦な声で問われ、ディリクが動きを止める。
暫くの思案のあと、彼は口を開いた。
「言ったはずだ。理由など無いと。私には先見の力は無い。――ルシェイド、お前が何を視たのかは知らないが、やらない方が良い理由があるのか?」
逆に問うと、ルシェイドは一瞬目を伏せるといつものように笑った。
「そんなこと無いよ。いっぱいお客さん来ると良いね」
「繁盛させるのが目的なら裏道に店など構えない」
表情に出ないようにと殊更憮然とした表情をして、ディリクが皮肉を返す。
ルシェイドは、そうだね、と言って笑った。
出会った時から、見た目は殆ど変わらない。
少年から青年の姿を行ったり来たりするのは見ているが、それだけだ。
貼りついたような笑顔は、正直好きではない。
何もかも閉じ込めてしまっているような気がするからだ。
そんな思いもきっと分かっているのだろう。
ルシェイドは少し困ったように笑うと、勢いをつけて机から飛び降りた。
「それじゃあね。次は開店してから来るよ」
言って手を振ると、ディリクの返事を待たずにその場から姿を消した。
そういえば、最初に会った頃はディリクの方が背が低く、あんな笑顔もしなかったのに、と、ルシェイドが消えた場所をぼんやり見ながら思った。